鎌田勝典の論文
2005年1月
派遣労働者の権利
@ 雇用契約期間は派遣元が賃金を補償する責任があります
派遣労働者に対して雇用の責任を負うのは派遣元です。雇用に際しては必ず、労働契約の期間や労働時間、賃金についての労働条件を明示しなければなりません。そして、雇用期間を定めた以上、たとえ派遣契約が派遣先から解除されたとしても、派遣元に雇用主責任があり、残余期間は別の業務に派遣し、雇用継続のための措置をとる必要があります。それができないときは、使用者の責めに帰すべき休業として平均賃金の60%の休業手当を支給しなければなりません。また、雇用契約の途中解除は、実質的に解雇と同様に考えられ、労働基準法の解雇のルールが適用されるとともに、解雇に際して、30日前の解雇予告または解雇予告手当の支払い等が必要となるのです。
派遣元は雇用主として、賃金の支払い(割増賃金を含む)や時間外・休日労働、年次有給休暇などにかんして基本的な責任を持ち、派遣先は指揮監督者として、労働時間・休憩・休日など現実の労務提供に密接な関連を有する事項に責任を持つことになります。
| 派遣元の使用者の責任 | 派遣先の使用者の責任 | |
| *男女同一賃金 *労働契約 *賃金 *変形労働時間制、時間外休日労働などの書面 *協定(労使協定)の締結 *時間外、休日、深夜労働などの割増賃金 *年次有給休暇 *産前産後の休業 *災害補償 *就業規則 *賃金台帳 |
*公民権行使の保障 *労働時間、休憩、休日 *危険有害業務の就業制限 *妊産婦が請求した場合の時間外、休日、深夜業務の免除 *育児時間、生理日にかんする措置 |
A 一定期間がすぎれば、派遣労働者に雇用を申し込む義務が派遣先に生じます
派遣を受け入れることのできる事業は、大きく2種類に分類されています。一つは、以前から派遣が可能であった「専門26業務」(情報処理システム開発業務など専門的業務のこと)で、今回の派遣法改正で派遣受入れ可能期間の制限が撤廃された業務です。もう一つは、平成11年以降派遣が解禁となった「一般的派遣業務」で、今回の改正で3年まで派遣受入れが可能となりました。
派遣労働者は雇用関係がない派遣先から指揮命令を受けるという不安定な地位におかれます。このことから派遣法では、一定の場合に、派遣労働者に雇用を申し込む義務を派遣先に課しています。それは三つの場合です。
1)一般的派遣業務で1年以上派遣を受け入れて派遣期間が終了した場合に、誰か新しい人を雇って業務を継続しようとするときは、今まで派遣によってその仕事を行ってきた派遣スタッフを雇用するように努めなければなりません。もちろん本人が希望することが条件です。
2)一般的派遣業務で派遣期間の制限(3年)に抵触する日以降も派遣労働者を使用しているときは、当然違法となりますから、その派遣労働者に雇用の申込みをしなければなりません。もちろん本人が希望することが条件です。
3)専門26業務で3年継続して同じ派遣労働者の派遣サービスを受けたときに、派遣先がその業務に労働者を雇おうとする場合、その派遣労働者に対して雇用を申し込まなければなりません。これは派遣労働者が希望しているかどうかにかかわらず優先的に雇用申込みをしなければならないということで、派遣労働者が雇用を希望せず引き続き派遣労働者のままでいても良いことになります。
B 1日派遣でも、派遣元の労災保険が適用され、派遣先にも安全配慮義務が課されます
労災保険は労働時間の長さや契約期間の長さにかかわらずすべての労働者が対象となります。業務上の災害等による傷病や通勤災害に対しては、派遣元の労災保険によって補償されます。また、派遣先の安全衛生管理の不備、欠陥に基づく労働災害については、その防止義務を負う派遣先に損害賠償責任を求めることができます。
C 雇用保険・社会保険の加入資格のある人は派遣元が加入させてから派遣するのが原則
雇用保険や社会保険に加入していない派遣労働者を派遣するときは、派遣元は加入していない具体的な理由を派遣先に通知しなければならず、派遣先はその理由が適正でない場合は加入させてから派遣するよう求めるとなっています(派遣元指針及び派遣先指針)。かりに加入資格がない場合でも、「派遣労働者が加入を希望していないため」とか「適用基準を満たしていないため」と通知するのではだめで、適用基準を満たしていないことが具体的に分かるものでなければなりません。
D セクシャルハラに対しては、派遣元だけでなく派遣先にも配慮義務が課されています
派遣労働者に対しては、正社員に対する場合と比較しても、セクハラも生じやすいもの。一方派遣労働者の側も、派遣が終了されてしまうのでは、あるいは労働条件について不利益を受けるのではという不安から、職場において行われる女性労働者の意思に反する性的言動に対して拒否したり批判することは大変勇気のいることです。
そこで、平成11年の派遣法改正により派遣先に対してもセクハラ防止の配慮義務が課されることになりました。派遣労働者のおかれている実態から、“性的言動に対する対応により労働条件について不利益を受ける”、いわゆる「対価型」セクハラの認定がされやすくなりましたから、裁判で派遣先から損害賠償を得られる可能性が大きいといえます。
E 派遣先による事前面接等は禁止ですが、派遣労働者等が自ら事前面接等を行うことは可能です
派遣先は、紹介予定派遣の場合を除いて、労働者派遣に先立って事前面接を行ったり、履歴書を送付させなど派遣労働者を特定することを目的とする行為を行ってはならないこととされています。一方、派遣労働者または派遣労働者になろうとする者にとっては、これから派遣就業を行う派遣先が適当であるかどうか確認したいものです。派遣労働者等が自らの判断で派遣就業開始前に事業所訪問を行ったり、履歴書を送付することは可能です(派遣元指針・派遣先指針)。自らの判断で行う場合ですから、当然、派遣元がこれらの行為を営業PR活動などの名目で派遣労働者等に要求することはできません。
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