司法書士 覚張民人(がくはり・たみと)氏が「中小企業の会社再編」のテーマで4回にわたって連載しました。
| 合資会社からIT関連の株式会社へ (04年2月第10号) |
| 最近の当法人で受託する会社(中小企業)の登記で一番多いのは、M&A(会社の再編)です。M&Aといってももちろん、後ろ向きなものばかりではありません。最近では、社会の実需の変化に従って、今までの会社の事業目的を100%変えて、将来性のある業種へ方向転換する会社も増えてきています。今回は、連載の第1回目として、合資会社からIT関連の株式会社に組織再編を行った例をご紹介しましょう。 【インターネット販売による全国展開のために】 ある合資会社の社長が、今までの店頭販売では行き詰まり、販売方法をインターネット経由に切り替え、全国に販売できる方法にして、さらに販売商品も広げたいというご相談を受けました。なぜこのような相談を司法書士である私のところに持ち込んで来たかというと、ホームページに載せる名前を合資会社ではなく株式会社にしたいということでした。 【確認会社を使った迂回作戦】 しかし法的には、合資会社を株式会社に組織変更することはできません。そこで、昨年からみとめられた確認会社を使って、迂回作戦を取ることにしました。まず確認会社(資本金10万円)を設立して、その後合資会社を吸収合併して、いままでの合資会社の財産・契約関係・権利関係・労働関係をそのまま引き継ぐのです。税金・会計・許認可・労働関係等それぞれ専門家のアドバイスによって、円滑にかつ迅速に事業の方向転換を完了することができました。 このように、小資本で、かつ現在の経営を方向転換させたいという需要は沢山あると思われます。今回の例だけでなく、「休眠会社のリサイクル」「会社の譲受・譲渡」「会社の分割」などなど、当法人が取り扱ってきたM&A案件を順次ご紹介していきたいと思います。これらが少しでも、中小企業経営者のみなさんのお役に立てば幸いです。 |
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| “休眠会社”のリサイクル (04年3月第11号) |
最近の当法人の受託事件で受けるM&A(会社の再編)とともに多いご依頼が、休眠会社を異なる事業の目的のために再利用(リサイクル)したい、というものです。 これは、“生きている”会社を買収してその会社のノウハウを承継してその事業をそのまま行うというのではなく、ほとんど事業活動を行っていない休眠状態にある会社を自分達の事業目的に利用できる形に作り変えて、新たに自分たちのやり方で事業を始めるというものです。はじめから会社を立ち上げるのとは違い、事業の土台となる会社はあるので、自分たちのやり方ですばやく事業を開始することができます。 【工務店から金融業へ】 最近当法人で取り扱った案件では、工務店をリサイクルした事例があります。 長年有限会社で工務店を経営されていた社長で、もう会社をたたもうとしていた方が、あるコンサルタント会社から誘われてその会社で違う事業を始めたというものです。 やり方としては、まず有限会社の本店・商号を変更して、新事業の目的を追加します。それと同時に、コンサルタント会社の人材を役員に追加します。工務店の社長は、完全に役員を外れることなくそのまま平取となります。これは、これまでの建設業の許認可・ノウハウ等を維持するためです。この方法によると、この工務店の社長は、実質的な経営権をコンサルタント会社の方に譲ることになりますが、会社を継続して、役員としてその経験を生かしながらさらに報酬ももらえるというメリットを得ています。また、コンサルタント会社の主導により新たな事業も開始されることにもなります。 一般的な“生きている”会社の売買とは異なり、ほとんど動いていない“休眠状態”の会社を利用するので、債権債務関係も少なく、法律・税務・労務・許認可等につき各専門家の適切な関与があれば、新しい会社を起こすよりも、既存の会社のプラスの財産を引き継いでそれを生かしていけるというメリットがあります。 |
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| 起業の機運――SOHO (04年4月第12号) |
先日、東京ドームのプリズムホールで、独立起業に関する会社設立の相談会を行いました。そこでは、様々な起業の動きが感じられました。今回は、企業の様々なあり方やその業態の変化などを、私の感じたまま感想にしたいと思います。 【SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)】 一番多かった相談は、勤務しながらの副業、奥様の趣味や得意分野を活かしての副業の創業でした。副業の業種としては、若い方と主婦の方の服飾店、飲食店が人気でした。外資や大型店などの進出で、小さな個店が店を閉めてしまう一方で、このような動きがあるのは、世の中の需要や流行の変化に敏感に反応し、小回りのきく小規模店の必要性は、やはり存在するからだと感じました。 詳しく話を聞いてみると、やはり副業として起業するということもあって、とてもユニークで個性的なものが多くみられました。服飾については、「集めた古着を裁縫して、まったく独自のオリジナリティにあふれた洋服にして売る」、飲食店については、「“体に良い”を謳い文句にした健康料理店」などです。店舗形態についても、ごく小さな店舗を借りるか、自宅の一部を少し改造程度のものが多く、宣伝媒体も個人のホームページ等かメールでした。 【背景にはITの普及も】 裏返してみると、いま世の中で求められているものは、高級なブランド品ばかりではなく、店構えは小さくても「生活の中で得られる日常の楽しみや安らぎ」など、趣味や個性を活かしたり、「世の中に2つとないもの」など、手作り感を重視したものが支持されているのではないかと感じました。 そして、個人のホームページを通じて、外へ出なくても、様々な情報を収集し発信することができるようになり、時間やお金がなくてもある程度、業としての体裁を整えられるようになったことがこのようなお店を強力に後押ししているのだと思います。 休日に街を歩いていて、ユニークで小さなお店を見つけると、とても楽しくワクワクするのは、みな同じなのではないでしょうか。 |
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| 不採算部門整理のための「組織変更」 (04年5月第13号) |
最近、合併についで当法人で多い受託案件は、「組織変更」です。 組織変更とは言っても、単純に株式会社へ組織変更するものばかりではありません。 今回は、その一例を挙げてみたいと思います。 今回当法人が受託した案件は、いくつかの業種を営むA有限会社の経営者が、一部不採算部門があって全体としてうまくいかないので、それを何とかしようというものでした。 この問題を解消するために登場したのが、A有限会社と同じ不採算部門の業種を営み、業績を伸ばしているB社です。 B社が取り組んだのは、まずA有限会社の抱える負債の整理でした。B社は、A有限会社の出資持分を買収し、A有限会社を完全子会社としました。そして、役員をすべて入れ替え、経営権を取得しました。その後、A社の不採算部門をB社の管理下に置き、それと同時に、不採算部門で蓄積した多額の債務を整理するため、大口の債権者へ、採算部門の一部を債務の弁済として、営業譲渡を行ったのです。こうして貸借対照表を整えた後、A有限会社の商号を変更し、本店をB社のもとへ移転しました。 最後に、A社に1000万円の資本を入れて「組織変更」をし、株式会社化したわけです。 一方、A社の経営者は、従来の事業からまったく離れるのではなく、B社に雇用されるという形態でB社の指導を受けながら、(旧)A社の不採算部門だった事業に引き続き従事することになりました。 組織変更をするには、その前提に様々な事情があり、外から見える商号・本店・役員・目的の変更ばかりではありません。見えないところで大きな動きがあるのです。 そして、こうした複雑な過程をたどった今回の「組織変更」手続を通して、「引き続き今までと同じ仕事を続けたい」という熱い思いと、「それならひと肌脱ごう」という同業者の連帯感を強く感じました。 |
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