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板さんの「入管豆知識」

板垣義則

外国人が日本で事業をはじめるためには (07年4月号)

Q:私はベトナム人です。大学を卒業して母国で3年間働いた後、この2年間は「人文知識・国際業務」の在留資格で、日本の商社に勤めています。貿易実務を覚えたので,独立して自分で会社を設立したいと考えています。日本の法律をよく知らないので、どんなことに注意すればよいのか、そもそも私に会社を起こす資格があるのか、教えてください。。

A:あなたの在留資格を、現在の「人文知識・国際業務」から、「投資・経営」に変更することが必要です。その為には、まず、会社を設立しなければなりません。
 会社の設立には学歴や年齢は関係ありませんが、会社の経営者としての資質・キャリア、設立する会社の収益性・安定性・継続性などについて厳しくチェツクされます。そのためにもきちんとした事業計画書を作成し、提出しなければなりません。また、「投資・経営」ですからあなた自身が相当額を出資することが求められ、出資の内訳を書面等で提出しなければなりません。これらを含め、入国管理局を説得できる十分な裏付け資料を用意する必要があるのです。
 さらに、基準省令は、外国人が日本国内で貿易その他の事業の経営を開始する場合は、次のいずれにも該当していること、としています。
(イ)当該事業を営むための事業所として使用する施設がわが国にあること。
(ロ)当該事業が、その経営又は管理に従事する者以外に、2人以上の、わが国に居住する日本人又は「永住者」「日本人の配偶者」「永住者の配偶者」「定住者」の在留資格を持っている者が、常勤職員として従事していること。

 (イ)について。事業所等は住居とはまったく別のところへ確保しなければなりません。住居か事業所か判別できないような状況では認められません。
 (ロ)について。外国人ばかりの社員で経営されていると、取引先やお客等と何らかのトラブル等が発生した時、適切に対応できない不安があるということです。また、日本人等の雇用の場を確保するという政府の労働政策もこの省令には垣間見えます。
 会社設立には定款準備や登記手続きなど一定の時間がかかりますから、申請中に現在のビザの期間が切れてしまうということも予想されます。そうなると、最悪の場合には、母国に一旦帰国して再度入国手続きをするという面倒なことになってしまいます。十分な時間を確保して、入国管理局や行政書士等の専門家に相談することをお勧めします。

外国人研修制度 (07年1月号)

Q:私の会社では、仕事が忙しく、きつい、汚い、残業が多い等で若い労働者を集めるのにいつも苦労しています。そこで、友人から「外国人研修制度」を利用すれば安価に外国人を使えると聞いたのですが、どんな制度でしょうか。また、どんな企業でも受け入れが可能ですか。

A:外国人研修制度といっても厳密には二つの制度があります。一つは「外国人研修」制度で、企業等で座学研修や工場等で実際に実務実習を1年間受ける制度です。研修生は工場で実際に日本人同様に働くことになりますが、それは“労働者”としてではなく“研修生”という身分ですから、労働基準法や最低賃金法などの適用除外となっています。多くの研修生は企業等から支給されるわずかの研修手当で生活しています。二つは、研修を終了した研修生が、研修を受けた企業で2年間さらに継続して技能に磨きをかける制度で、これを「技能実習制度」と呼んでいます。研修と違い技能実習では、企業と雇用契約を結び、労働者としての諸権利が生じます。
 これらの制度を活用するには、最初に「研修」という在留資格を取得する必要があります。研修生は、いわば“企業内留学生”という存在ですから、「留学」や「就学」とは別の在留資格なのです。
 研修生は、外国の機関から派遣され、日本の@国、地方公共団体A独立行政法人B商工会議所C事業共同組合D職業訓練法人E農業共同組合F財団法人・社団法人で、外国人研修生の受け入れ事業を目的とするものなどが受け入れることになります。したがって、上記に該当しない企業等が勝手に「研修生」を採用することは認められません。
 日本の一部の経営者は、彼らに対して十分な研修を行なわず、劣悪な環境の下、安い賃金で働かせています。このような状況を反映して、一部に研修生は安価な労働者との誤解があります。厚労省もさすがに放置できず、法律の見直しを予定しています。くれぐれも企業の労働力不足と人件費圧縮のための制度でないことを理解してください。

日本人配偶者と離婚したら在留資格はどうなる?(06年11月号)

Q:私は韓国籍です。日本人の配偶者(夫)と8年間にわたって婚姻関係にありましたが、このたび事情があって夫と離婚しました。私は現在衣料品関係の会社に勤務し安定した収入があるので2人の子ども(日本国籍)を引き取り育てています。2人とも日本の公立小学校に通い、日本の子どもたちとすっかり溶け込んで暮らしています。このまま子どもたちと日本で生活したいと思っています。私の現在の在留資格は「日本人の配偶者等」ですが、今後どうなるのか不安でたまりません。 

A:たしかに日本人の配偶者と離婚や死別した場合は、「日本人の配偶者等」の在留資格は現在の有効期限までとなり、その後は新たな在留資格を得なければ日本で生活することができません。

新たな在留資格として「定住者」を得られる可能性があります。外国から直接日本に上陸する者はよほどの事情(日本人の実子で未成年の者、6歳未満の養子など)がなければ「定住者」の資格を与えられません。しかし、「日本人配偶者と離婚または死別した者等特別な事情を考慮する場合に限り(定住者の資格を)許可する」(入管法の運用基準)とされています。あなたの場合、日本国籍を有する未成年の子を「監護・養育」している事情がありますので、婚姻期間の長短にかかわりなく「定住者」の在留資格が認められると思われます。

 「定住者」の一番大きなメリットは、就労に関する制限がなく、日本人と同様、どんな仕事でもできるという点です。在留期間は一般に3年または1年が与えられますが、法務大臣が個々の外国人について「指定する期間(3年を超えない範囲内)」というケースもあります。また、将来的には「永住者」の在留資格を得られる可能性もあります。平成10年2月から「永住者」の許可要件の在留期間が、従来の20年から「10年以上日本に継続して在留していること」に変わりました。今回とりあえず「定住者」の資格を取り、その後「永住者」の資格を取られることをお勧めします。

 現在の在留資格があとどれぐらいの有効期間なのかわかりませんが、在留資格制度の趣旨からみれば、なるべくすみやかに在留資格変更の申請を行った方がいいでしょう。

入管法の改正とテロ対策(06年9月号)

この5月に「出入国管理および難民認定法」(通称・入管法)が改正されました。来年の秋に施行予定です。改正のポイントとその背景を見てみましょう。

【指紋の採取、顔写真の撮影が義務に】

 改正の最大のポイントは、16歳以上のすべての外国人が日本に入国する際、指紋や顔写真の撮影が義務となることです。来年11月までには入国審査時に指紋をスキャナーで読み取り、顔写真を撮影する仕組みが導入される予定です。採取した指紋や顔の情報はデータベース化して、一定期間保管し、警察の要請があれば犯罪捜査にもデータが提供されます。ただし、在日韓国・朝鮮人などの特別永住者や外交官,国が招待した賓客(例えば、外国の大統領や首相・国王)等は除外されます。

【自動化ゲートの導入、第三国への送還も可能に】

 また、出入国管理のいっそうの円滑化のための規定の整備を行います。具体的には、

 @上陸審査手続きを簡素化・迅速化するため、日本人および一定の要件に該当する特別永住者等が事前に指紋等の登録をしておけば、全国の34箇所の主要空港等に設置されたJRの自動改札機のようなゲートを通るだけで出入国管理の事務が完了する仕組みを導入します。平成8年以降約80万人が、密入国や査証の期限切れによる不法滞在や不法就労、犯罪などさまざまな理由で退去強制・帰国されているといいます。しかし、8人に1人はリピーターとして再入国しています。今後はこの自動化ゲート(当面300台設置予定)で未然に入国を防ぐとしています。すでに、ヨーロッパではEU諸国民などを対象にイギリス、ドイツ、オランダの国際空港で設置され、アジアではシンガポール、マレーシア、タイ、香港等で運用されています。

 A退去強制の迅速・円滑化を図るため、退去強制令書の発布を受けた者のうち、自費出国の許可を受けたものについて、本国送還の原則を緩和して本国以外の受入国(第三国)への送還を可能とするものです。

【テロ対策が改正の最大の目的】

 政府は、今回の入管法改正の最大の狙いはテロの未然防止であると説明しています。現在、外国人入国者に指紋などの個人識別情報の提供を義務付けている国は世界でただ一つアメリカだけです。アメリカはこれを世界中に導入するよう働きかけ、条約等でしばりをかけています。今後は他の国でもどんどん採用されていくことが予想されます。

 しかし、今回の改正について、国会の内外で批判もあります。それはテロリストの定義がしっかりしていない点です。アルカイダのオサマ・ビン・ラディンのような人物であれば誰でもわかりやすいのですが、「テロを行う“おそれ”のある者」を判断する基準はありません。下手をすると人権侵害を招く恐れ大です。


生まれてくる子は日本人?中国人?(06年8月号)

【中国と日本の二重国籍者?】

 中国人男性と結婚している日本人女性(東京23区在住)から次のような電話がかかってきました。「現在妊娠8ヶ月です。生まれてくる子どもの国籍はどうなるのでしょうか?外国籍だと日本の学校へ通うときいじめにあうのではないかと心配です。私は日本国籍にしたいのですが、区役所は認めてくれますか?」。
 
 日本の国籍法は、「出生による国籍の取得」について次のように規定しています。
「第二条:子は、次の場合には、日本国民とする。
  1 出生の時に父又は母が日本国民であるとき。
  2 出生前に死亡した父が死亡の時に日本国民であったとき。
  3 日本で生まれた場合において、父母がともに知れないとき、又は国籍を有しないとき。」

 
 本件の場合は上記の「1」に該当しますから、医師からの「出生届」を添えて区役所に届け出れば日本国籍を取得できます。
 
 しかし問題は単純ではありません。中国人の夫は、子が中国籍になることを望んでいるのです。中国の国籍法第5条は、「父母の双方又は一方が中国の公民で、本人が外国で生まれた場合は、中国の国籍を有する」としています。そうすると、生まれてきた子は、本人の意思に関係なく中国と日本の二重国籍者になる可能性があるのです。

【生地主義と血統主義の国がある】

 国籍取得の考え方は国によって違います。生地主義、つまり父母の国籍に関わりなく自国内で出生した者に国籍を取得できるようにする考え方をとっているのがアメリカ、イギリス、カナダなどです。
 
 他方、出生した地がどこであっても、血縁関係を基礎として、父または母が自国民であれば、その子も国籍を取得できるようにするのが血統主義です。父母両系主義をとるのがイタリア、韓国、中国、日本、フィリピン、ドイツ、オーストラリアなどで、夫系主義をとるのがイラン、インドネシアなどです。

 本件の場合、同じ父母両系の血統主義をとる中国と日本の配偶者間の問題なのです。
【重国籍者が日本国籍を選択する方法は?】

 子が一時的に二重国籍者となった場合でも、将来日本国籍(あるいは外国国籍)を選択する方法があります。「20歳に達する前に重国籍となった場合」には22歳に達するまで、「20歳に達した後に重国籍となった場合」にはその時から2年以内、に国籍の選択をできるのです。

 日本国籍を選択したいなら、上記の期限までに日本国籍の選択宣言をし、外国の法令に従って外国国籍を離脱します(外国国籍を選択する場合は、この逆の手続です)。15歳未満の者は法定代理人が届出し、15歳以上の者は本人が届出します。

 出生までに夫婦でよく話し合うこと、かりにそれまでに話し合いがまとまらなくても、将来的に上記のような選択が可能なのです。くれぐれも夫婦喧嘩の種としないことですね。


第1回 留学生・就学生が働くのは違法か? (06年7月号)

ある留学生からこんな相談をうけました。「東京での生活は物価が高くて大変なので、学校が終わったら少しがんばってアルバイトをしたいと思っています。友達からはアルバイトは違法なので入管に摘発されたら退去強制になると聞きましたが・・・」。

 「留学」「就学」という在留資格は、原則として就労が認められません。入国管理の行政官から見れば学生の本分は勉強こそが“仕事”という建前があるのです。ただし、現実には留学生の生活実態も理解できるので、「資格外活動許可」という申請をすると、最大週28時間以内の範囲で許可がもらえます。まあ、この範囲なら1日4時間であり、勉学に支障をきたさないだろうというのです。もちろん、アルバイトの内容も問われます。スナック、クラブ、風俗営業等での就労には許可が出ません。

 この許可を受けずに就労すると、いわゆる不法就労になります。この場合、外国人本人はもとより雇用主も処罰の対象となります。資格外の活動をしているとみなされると退去強制の処分を受けることになります。

 日本人経営者の一部に、外国人のビザの期限が切れていることを承知でその弱みに付け込み、雇用保険も年金、医療保険等も加入させず、安い賃金と劣悪な環境下で酷使する者がいます。このような悪質経営者がアジアその他の人々から非難を浴びているのです。


06年6月号

外国人の人権はどのように扱われているか?――ごあいさつに代えて

 この度、事務所の仲間にいれていただいた板垣義則です。私は、これまで四半世紀にわたり、日本人残留孤児問題や戦後補償裁判の署名集め、在留資格取得の援助、アルバイトの世話など日中友好のボランティア活動を行ってきました。「難民問題」のような政治的でデリケートな問題も含め、数え切れないほどいろいろなことに取り組んできました。

 私自身も中国には10回ほど訪問していますが、とても広い国(国土面積は日本の26倍)なので、1回1回は地域を限定し少しずつ歩いています。その昔、この国から漢字や文化、宗教が伝わってきたのかと思うといっそうの親密感が湧きます。奥行きもあり、とても変化のあるおもしろい国です。長男も中国の外国語大学に留学し、次男も東洋医学に興味を持ち、鍼灸師の資格を取り、中国に研修旅行を体験しました。

 そんな中、鎌田氏と縁があり「入国管理業務に経験・知識を貸してほしい」とお誘いを受けました。そして、ただちに名刺を作り今までのツテを頼り、日中友好団体や法人、外国語学校、知り合いの新聞社、雑誌社の友人知人等にごあいさつに回りました。

 これから「入管業務」についてニュースで連載をさせていただきますが、今回、さっそく相談に見えた二つの事例を紹介しましょう。

【妻が「不法滞在者」で強制退去処分に】

 1件目は、知人が偶然相談を受け、「よくわからないので板垣さん一緒に聞いてくれ」と電話がかかりました。その内容を聞くと中国人の女性と結婚したが、その女性のビザがオーバーステイで「不法滞在者」ということで強制退去処分を受け、中国・上海に帰国させられたという話です。

 正式に結婚し、子供もある人でした。もう4年近く日本に入国できず、時々、日本人である夫が上海に住む妻と子供に会いに行くというのです。なんと非人道的な扱いでしょう。相談に来た夫のTさんは「何とかならないでしょうか。・・・・」と真剣でした。私は、「お任せください。一緒にがんばりましょう。当事務所には二人の行政書士(鎌田・赤川)がいます」と元気付けました。

【わずかな書類記載ミスで2回の入国拒否】

 2件目は、中国の青年が日本への入国を2回も拒否され、日本にいる身元引受人が怒って相談にみえました。だめになったという書類を見せていただきました。ほとんど問題はないのです。強いていえば1枚だけちょっと間違いがあるのですが、それはたいしたことではないのです。多分、個人で申請したので入管局が親切に教えてくれなかったと思うのです。一番大事な留学許可証もあり、滞在先も決まっており、生活費や授業料等必要な預金をしっかり持ち、経済的裏づけもバッチリです。聞けばこの青年のお父さんは中国の鉄鋼関係の会社の社長でした。身元引受人のHさんは「これでは、せっかく日本を理解し、勉強しようという青年の意欲を押しつぶすことになる」と怒っています。

 こうした事例をみると、外国人の人権に対する冷たさを痛感します。最近入管法が改正され、指紋押捺制度が復活しました。次号から「板さんの入管豆知識」というコーナーを担当することになりますが、世界の中の日本の姿を考えてみる機会にこのコーナーがなれば望外の幸せです。乞うご期待。


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