就業規則にかかわる問題


07年11月第55号

育児休業からの復帰は拒めない?

Q.病院を経営しています。現在育児休業中で、職場復帰する予定の常勤職員が「復帰後は育児のため夜勤ができないので日勤のみにして欲しい」と言ってきました。
 その職員には会社員の夫(同居)がいます。また、当院は夜勤ができることを常勤職員の条件として定めています。
 今までにも育児休業を取得した職員はいますが、復帰後は夫や両親の協力も得て勤務しており、今回のような請求は初めてなので、困っております。


A.育児・介護休業法第十九条では、小学校就学前の子を養育する者が深夜業の制限を請求した場合、それを認めなければならない。ただし、16歳以上の同居の家族が「深夜に就業していない」「負傷、疾病又は心身の障害がない」「産前産後でない」場合には、その請求を認める必要はないとしています。
 よって、今回の「日勤のみにして欲しい」という請求については、夫が同居中であり、深夜業に従事していないため、応じる義務はありません。
 とはいえ、いきなり退職勧奨やパートへの転換を行うのも、結果的に本人の気持ちを全く尊重していないことになり、後々しこりを残すことになりかねないので、夜勤の日だけでも夫あるいは両親の協力を得て、勤務を続けられるように話してみて下さい。
 その結果、どうしても折り合いがつかないということであれば、やむを得ず退職勧奨、もしくはパートへの転換を行うことになります。
 ちなみに、この場合は育児休業を取得したことが理由ではないので、退職勧奨をすることはできますが、本人に非があるとまでは言い切れませんので、その判断と勧奨を行うにあたっては、くれぐれも慎重を期して下さい。


06年5月第37号

「社会保険に入りたくない」という従業員がいるが

:弊社は社会保険適用事業所です。従業員の中に社会保険を拒む者がおり、困っています。

:一般的に社会保険と言えば、健康保険・介護保険・厚生年金保険のことを指します。現在の保険料率は、健康保険8・2%、介護保険1・23%、厚生年金保険14・288%です。これを労使折半で支払います。負担金額は決して安くないため、事業所側が加入を渋るケースもあれば、逆に従業員側も負担額の大きさや年金不信から入りたがらないケースが見られます。

 とは言え、社会保険適用事業所に勤めていて条件を満たす人は、必ず加入しなければなりません。これは従業員個人の事情や意見でどうなるものでもありません。(社会保険事務所が総合調査に入った際に、条件を満たしているのに加入していない人がいれば、職権で、最大2年間遡って資格取得手続を行います。)

 まずは社会保険加入のメリットを例示して説得をして、それでも拒むようであれば、有無を言わせず加入手続きを取るか、勤務時間を正社員の4分の3未満にしてもらうしかないでしょう。(4分の3未満であれば、社会保険加入義務はありません。)

 以下、加入した際のメリットをいくつか挙げておきますので、参考にして下さい。

健康保険:@傷病手当金が支給される。A扶養家族について保険料がかからない(要件あり)。

厚生年金:@25年以上加入していれば、将来、老齢年金を受給できる。もしくは受給可能額が増える(年齢等の条件により、25年未満でも可)。A障害・遺族年金の受給対象となる(保険料納付要件の特例=初診日もしくは死亡日の属する月の前々月迄の一年間に滞納していないこと。それ以前の納付実績は問わない。=が平成28年まで認められるようになった)。B妻の国民年金保険料がかからない(要件あり)。


06年3月第35号

基本給を下げたが残業増により総収入はアップに
        …社会保険の標準報酬月額の随時改定は必要か?

 今年度から残業時間が大幅に増加する見込みとなり、基本給を下げたのですが、月間総収入では残業割増金増加のために大幅なアップとなりました。この場合、社会保険の標準報酬月額の随時改定に該当するのでしようか?

 社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料は、毎年4月から6月までの3ヵ月間の報酬月額を基に、その年の9月から翌年8月までの標準報酬月額が決定され、これに保険料率を乗じた額が徴収されます。これが標準報酬月額の「定時決定」と呼ばれているものです。

 これとは別に、「定時決定」以外の時期に基本給等の「固定的賃金が変動」し、その変動した月以後引き続く3ヵ月間(※参照)に受けた報酬の平均月額が、従来の標準報酬等級に比べて2等級以上変動した場合にも「随時改定」としてその翌月から標準報酬月額が変更されます。しかし、この場合でも以下の場合は、例外的に随時改定は行われないこととなっています。

@固定的賃金が増加しても非固定的賃金(残業料等)が 減少したために結果として報酬月額(総収入)が2等 級以上減少した場合。

A固定的賃金が減少しても、非固定的賃金(残業料等) が増加したために結果として報酬月額(総収入)が2 等級以上上昇した場合

 つまり、固定的賃金が増加した場合は報酬月額でも増加していること、固定的賃金が減少している場合は報酬月額でも減少していることが「随時改定」の要件となります。

※3ヵ月間の各月に、報酬の支払いを受けた基礎日数が20日未満(18年4月より17日未満)の月が1月でもあると「随時改定」は行われませんのでご注意ください。

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06年2月第34号

4月施行 改正高年齢者雇用安定法にどう対応するか

【改正法の概要】

 4月1日から改正高年齢者雇用安定法が施行され、すべての事業主は65歳までの雇用延長措置として、@定年年齢の引上げ、A継続雇用制度の導入、B定年の定めの廃止のいずれかの措置をとらなければならなくなります(同法第9条)。これらの措置は、次のとおり厚生年金の男性の老齢年金(定額部分)の支給開始年齢の引き上げスケジュールに合わせて平成25年4月までに段階的に引き上げることとされています。●[平成18年4月1日から平成19年3月31日までは満62歳]●[19年4月1日から22年3月31日までは満63歳]●[22年4月1日から25年3月31日までは満64歳]●[25年4月1日以降は満65歳]。なお、これらの措置への違反については厚生労働大臣による指導・助言・勧告を受けることになります。

 このうち@の「定年年齢の引上げ」とBの「定年の定めの廃止」は、就業規則でその旨を規定さえすれば簡単に導入できます。しかし、人件費の増大を避けるため多くの会社はAの継続雇用制度の導入を検討しているといわれています。そこで継続雇用制度とその導入手続きについての正確な理解が必要です。

 そもそも継続雇用制度とはどういうものでしょうか。現在多くの会社の就業規則では、「会社がとくに認めたものに限り定年後も継続して雇用する」などと、使用者が一方的に継続雇用する者を誰にするかを決められる規定となっています。しかし、改正法の継続雇用制度は、原則として、現に雇用している高年齢者が希望するときは、定年後も引き続いて雇用する制度を指します。性格がまったく違うのです。
 「定年年齢引上げと違いがないのでは?」と思われるかもしれませんが、特例規定があります。労使協定で継続雇用の対象者を誰にするかの基準を決めることができるのです。また、中小企業(常時雇用する労働者数が300人未満)は平成23年3月31日までの間(大企業は平成21年3月31日までの間)は、事業主が労使協定を締結するため努力したにもかかわらず協議が整わなかった場合、この基準を就業規則等で定めることも認められています。

【継続雇用制度導入の手順】

 次に継続雇用制度をどのように導入するかという問題です。

(1)継続雇用制度には、再雇用制度(一度退職させて再び雇用し直す)と勤務延長制度(退職させずに引き続き雇用する)の2種類があります。まずどちらを選ぶかを決める必要があります。勤務延長の場合は、同一の労働契約が継続するということですから、労働条件の変更にはいわゆる不利益変更の問題が生じ、労使トラブルが起きる可能性があることに気をつけてください。

(2)継続雇用する対象者の基準を決定します。労使の協議で決めるわけですが、事業主が恣意的に継続雇用を排除できるような基準は認められません。「具体性」と「客観性」が求められます。「具体性」とは、「意欲、能力等をできる限り具体的に測るものであり、労働者自ら基準に適合するか否かを一定程度予見することができる」ということであり、「客観性」とは、「必要とされる能力等が客観的に示されており、該当可能性を予見できるもの」ということです。厚生労働省の作成した「継続雇用制度の対象者に係る事例集」をホームページからダウンロードできますので、参考にしてみてください。

(3)基準案が決まったら、労使協議を行い、労使協定を締結します。協議する相手は、過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数を代表する者です。その後就業規則変更手続(労働者からの意見聴取・届出を含む)を行います。注意してほしいのは、先述の“就業規則で定めることができる”という特例は、あくまでも「労使協議が整わなかったとき」に限られ、単に「労働者側に一方的に提案内容を通知しただけといった場合」は含まれないということです(平成16年11月4日通達)。

【基準の設定と雇用義務】

 「基準を設定した場合、基準を満たした者をすべて雇用する義務があるのか?」という疑問があります。基準の問題と雇用の問題は別のものです。そもそも基準を満たしても労働者が継続雇用を希望しなければ雇用の問題は生じませんし、基準を満たし継続雇用を希望する場合であっても、定年退職後の処遇(賃金、労働時間、部署等)によって継続雇用を受け入れない可能性もあります。つまり、基準というのは、あくまでもそれを満たした労働者が、定年退職後の雇用について、使用者との話し合いのテーブルにつく資格が得られるということなのです。

 定年退職後の処遇については、在職老齢年金(給与額に応じて年金額が調整される仕組み)、雇用保険の高年齢雇用継続給付(60歳から65歳までの間にもらう賃金が、60歳時の賃金の75%を下回ったときに支給される)も考慮し、会社の持ち出しを最大限に少なくしながら、労働者にもメリットを与えられるようシュミレーションし、労働者ごとに最適の賃金設計を行うことをお勧めします。

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05年3月第23号

育児・介護休業法の改正と就業規則の見直し


 4月1日から改正育児・休業法が施行されます。今号では改正のポイントを紹介します。これに伴う就業規則の見直しが必要となっています。

【ポイント1 育児休業制度の取得対象者の拡大】
 育児休業を取得できる労働者には、原則として「期間を定めて雇用されている者」は含まれません。ただし、形式上は「期間を定めて雇用されている者」であっても、実質的に「期間の定めのない契約」と異ならない状態となっている場合には対象となります。どういう場合に「期間の定めのない契約」といえるのか、いままで解釈上さまざまな議論がありました。今回の改正ではその基準を明確にしました。

期間を定めて雇用される者のうち、@同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であり、Aその養育する子が1歳に達する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者(1歳到達日から1年を経過するまでの間に、その労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く)は、申出ができます(法5条1項)。

【ポイント2 介護休業制度の取得対象者の拡大】
 同様に、介護休業制度についても有期雇用者の適用の拡大をはかる基準を明確にしました。

期間を定めて雇用される者のうち、@同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であり、A介護休業開始予定日から起算して93日を経過する日を超えて引き続き雇用されることが見込まれる者(93日経過日から1年を経過するまでの間に、その労働契約の期間が満了し、かつ、当該労働契約の更新がないことが明らかである者を除く)は、介護休業の申出ができます(法11条1項)。

【ポイント3 育児休業期間の延長】
 公立の保育所不足のため待機児童を持つ親が1年では職場復帰しにくいというような場合について、育児休業期間の延長を認めました。

労働者は、その養育する1歳から1歳6ヵ月に達するまでの子について、@当該労働者またはその配偶者が1歳到達日において育児休業をしており、A1歳到達日後の期間について休業することが雇用の継続のために特に必要と認められる場合、育児休業の申出ができます(法5条3項)。

【ポイント4 介護休業の取得回数制限の緩和】
 旧法では、介護休業期間は原則として1人の家族について1回(連続する3ヵ月を限度)だけでした。しかし、被介護者の状況はいったん回復してよくなってもその後再び介護を必要とすることもしばしばあります。そこで改正法は、通算93日の範囲内で介護を要する状態に至ったごとに休業を可能にしました。

【ポイント5 子の看護休暇の新設】
 子どもの病気や怪我などの看護のための休暇制度について、旧法では事業主の努力義務とされていました。改正法では、小学校就学前の子の看護休暇について、1年に5日を限度に申し出ることができ、事業主はそれを拒むことができないことになりました。この休暇は年次有給休暇とは別のものとして与えなければなりません(法16条の2)。

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04年6月第14号

65歳までの継続雇用を義務付け(高齢者雇用安定法が改正)


 6月5日参議院本会議で高齢者雇用安定法改正案が可決されました。平成18年度から、65歳未満の定年の定めをしている事業主に対して、@定年年齢の引き上げ、A継続雇用制度の導入、B定年の定めの廃止、のいずれかの措置を講ずることを義務付けるものです。

 ただし、平成18年度から直ちに義務付けるのではなく、特別支給の老齢厚生年金の支給開始年齢の段階的引き上げに合わせて、平成25年度までに段階的に引き上げていくことになります。また、Aの継続雇用制度の導入については、希望者全員を対象にすることが原則ですが、労使協定により(労使協議が調わなかったときは平成18年度から3年間〈中小企業は5年間〉については就業規則によっても可)対象となる労働者の基準を定めれば、希望者全員を対象としないことも認めています。

【平成16年4月から助成金に加算】
 一方、継続雇用定着促進助成金について、平成16年4月から「高齢短時間正社員制度」を設ければ企業規模と高年齢者雇用数に応じて10万円から100万円加算する(1回に限る)という措置がとられました。もともと継続雇用定着促進助成金とは、就業規則等で60歳以降の雇用継続制度を導入した事業主に支給されるものです(詳細はニュースbPで紹介)。新たに加算される要件は次のとおりです。

「定年が65歳以上であって、労働者が60歳以上の任意の時点において、その時点の労働時間より短い労働時間(1週間の所定労働時間が20時間以上であって、労働者が短縮を求めることができる労働時間の上限が、その時点の労働時間の4分の1を超えるもの)で働き、それ以外は同一の労働条件で働くことができる制度を導入し、実際に適用した事業主」

 悪くなる年金制度の矛盾を事業主に押し付ける法律だとの批判もありますが、対応が求められています。

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