社内トラブルへの対応


厚生年金保険料率の変更時期について

07年9月第53号

Q.弊社の賃金締切日は当月25日、支払日は翌月5日で、8月分賃金とは9月5日支給分を指します。社会保険は試用期間(入社日〜入社後2回目の賃金締切日まで)満了後に加入し、当月徴収しています。
(例)7月1日入社→7月1日〜8月25日:試用期間→8月26日本採用・社会保険加入→8月分賃金から社会保険料控除開始
 9月分から厚生年金保険料率が変更(+0・354%)になりますが、いつから変更すれば良いのでしょうか?




A.社会保険料は、法律上は翌月徴収(8月分保険料を9月に支払われる賃金から控除)することになっていて、多くの会社はこの方法を採っているため、10月に支払う賃金から厚生年金保険料率を変更すれば良いことになります。
 しかし、実際は賃金締切日と支払日の関係などで、必ずしも法律どおりの運用がなされているとは限らないようです。
 御社の場合、当月徴収しているとのことですが、8月分賃金の支払日が9月5日なので、実態は翌月徴収になっています。よって、厚生年金保険料率の変更は、9月分賃金(10月5日支払)から行って下さい。
 なお、賃金締切日と支払日が同一月内にあり、当月徴収としている場合(例えば7月1日に社会保険に加入した者の社会保険料を7月に支給する賃金から控除するような場合)は、9月に支給する賃金から厚生年金保険料率の変更を行って下さい。
 また、9月分の社会保険料から、標準報酬月額の定時決定(7月に算定基礎届を提出することによって行う)により、健康保険料・厚生年金保険料が変更になります。忘れないように処理しましょう。


休日と休暇の違いとは?

07年8月第52号

Q.外来のみの診療所を営んでいます。この度、1年単位の変形労働時間制を導入しようと思っています。そこで気になるのが、夏季休暇や年末年始休暇の取り扱いです。1年を平均して所定労働時間が週40時間以内でなければならないとのことですが、休暇は所定労働時間に含めなければならないのでしょうか?所定労働時間は、平日が9時〜19時(2時間休憩)、土曜日が9時〜13時、日祭日は休日です。


A.結論から言えば、休暇は所定労働時間に含めなければなりません。しかし、休日と休暇の定義があやふやになっていることが多いようですので、以下の定義にもとづいて運用することが大事です。
【休日】労働契約上、あらかじめ労働の義務がないとされている日
【休暇】休日以外の日について、一定の事由の発生等の根拠に基づき、一定の手続きを経ることにより労働の義務が免除される日
 例えば、夏季(お盆)を「休暇」と定めている会社もあるようですが、その日が当然に休める日なのか、休むためには所定の手続きが必要なのか、勤務した人には休日出勤手当が支給されたのか等の事情を判断し、実態として労働の義務がないと認められる場合は休日と判断されます。よって、夏季休暇や年末年始休暇が当然に取得できるような場合は、休日として取り扱い、所定労働時間に含めないことで、年平均の所定労働時間が週40時間以内になるのではないかと思われます。
 なお、1年単位の変形労働時間制を導入するにあたっては、年間総労働日数の上限が1年当たり280日であること、10人未満の小規模事業場の特例(一定業種において、1日8時間・週44時間労働が認められている)の適用は受けられませんので、注意して下さい。


慶弔休暇についての注意点

07年7月第51号

Q.弊社では、本人が結婚した場合は、一週間の特別休暇(有給)が就業規則で規定されています。
 先日、従業員同士の社内結婚があり、双方が挙式と新婚旅行のため一週間(祝日があったため、4労働日)の休暇を取得しました。
 ところが、旅行の休暇を取得した一ヶ月後に、再度本人の結婚を理由とした休暇(1労働日)を取得していることが判明しました。
 本人を説得して有給休暇に振り替えてもらいましたが、今後もこのようなケースが起こり得るため、対策方法を考えようと思うのですが、どうすれば良いのでしょうか。


A.このケースでは「一週間」としか書かれておらず、取得方法に制限を設けていなかったため、今回のような事態が起こったのでしょう。
 2労働日以上の特別休暇を与える場合には、

@日数は暦日数と労働日数のどちらで設定するのか。暦 日数の場合、休日を含めるのかどうか。

A分割取得を認めるのかどうか。
 以上をはっきりさせなければなりません。
 また、本人以外の親族の結婚・死亡による慶弔休暇の場合は、@・Aの他に、

B「対象とする親族の範囲」も定めておかなければなり ません。
 日常的に起こることではありませんが、たまに解釈の違いでトラブルになることがありますので、就業規則または内部規程で定めておきましょう。

 なお、慶弔休暇は、法律的には有給でも無給でもかまいませんが、一般的に@〜Bの方法で定めた日数分については、有給としているようです。ただ、契約社員やパートタイマー・アルバイトについては、無給としている会社が多いようです。


育児休業給付の増額と留意点

07年6月第50号

Q.結婚を間近に控えた弊社の女性従業員が、今年の4月から育児休業給付が増額すると言っているのですが、いったいどの位増えるのでしょうか?


A.育児休業(※1)給付には、@育児休業基本給付金とA育児休業者職場復帰給付金があり、@は育児休業中に、Aは職場復帰後6ヶ月を経過した後に支給されます。
金額は、@「休業開始前6ヶ月の賃金総額÷180(=賃金日額)×10%」、A「@の支給日数合計×賃金日額×10%」だったのですが、今年4月以降に職場復帰した方(※2)から、Aの10%が20%に改正されました。
 つまり、育児休業基本給付金が増えるのではなく、育児休業者職場復帰給付金が増えるのです。よって、育児休業中の支給額は変わりません。
 実は今回の改正には落とし穴があり、平成19年10月1日以降に育児休業を開始した方について、育児休業給付の支給を受けた期間は、基本手当(失業給付のことです。)の算定基礎期間(※3)から除外されてしまいます。
 例えば、25歳で就職し、5年間勤務した社員が、会社都合で退職を余儀なくされたような場合であっても、育児休業給付を受けたために、今までなら180日受給できたはずが90日になってしまうということです。
 少子化対策の一環で育児休業給付を手厚くする代わりに、セーフティーネットである基本手当を(結果的に)削るのは、いかがなものかと思います。

(※1)出産日後8週間以降の休業のこと。
(※2)平成22年3月末日までに育児休業を開始した方    が対象。
(※3)基本手当の給付日数を判定するための期間。純    粋な雇用保険加入期間のこと。


60歳以降の雇用制度について

07年5月第49号

Q.ここ数年、定年(60歳)後の雇用制度のことをいろいろ耳にしていて、わが社も手を打たねばと思っていたのですが、結局何もしないまま日が経ってしまいました。継続雇用制度を導入すれば、法改正に対応できると聞き、遅まきながらわが社でも導入したいと思いますが、何に注意すれば良いでしょうか?


A.この制度を「高年齢者雇用確保措置」と言いますが、これは高年齢者雇用安定法の改正により導入が義務付けられており、以下の3つのうち、どれかを選択し、導入しなければなりません。@定年の廃止、A定年を雇用確保年齢(注)以上に引き上げる、B定年年齢を据え置いたまま、継続雇用制度(勤務延長もしくは再雇用制度)を導入する。60歳以上の労働者が居ないことや、就業規則を作成していないからという理由で、制度の導入を免れることはできません。
 御社の場合はBをご検討とのことですが、1)対象者を希望者全員とする 2)対象者を限定する の2通りがあります。2)の場合、対象者を限定する際の基準について、労使協議を行い、その基準を労使協定に盛り込まなければなりません。協議を重ねたにもかかわらず、労使の合意に至らなかった場合には、特例的な経過措置(常時雇用労働者数が300人以下の企業においては、平成23年度まで)として、就業規則に基準を記載することで導入可能です。あくまでも労使協定を結ぶ努力が前提です。
 労使で十分な協議を重ね、60歳以降のワーク・ライフ・バランスを実現した制度を導入されることを希望します。

(注)雇用確保年齢は、老齢厚生年金の支給開始年齢に合わせて定められています。平成19〜21年度は63歳、平成22〜24年度は64歳、平成25年度以降は65歳と定められています。継続雇用制度を導入する場合においても、希望者には雇用確保年齢までの雇用確保が義務付けられています。


兄弟姉妹を健康保険の被扶養者にする場合の注意点について

07年4月第48号

Q.弊社従業員G(標準報酬月額240千円。年収360万円)の父が交通事故に遭い、働くことができなくなったため退職しました。Gから、「今まで父が扶養していた家族を今度は私の健康保険の被扶養者にしたい」と申し出がありました。
 Gの家族構成は以下の通りですが、全員被扶養者にすることはできるのでしょうか?

 父(55歳・身体障害者手帳2級・無職・障害年金を年額173万円受給中)、
 母(54歳・パート勤務・社会保険には加入していない・年収126万円)、
 兄(25歳・大学院生・一人暮らし・アルバイト収入72万円・仕送り額84万円)、
 妹(21歳・大学生・一人暮らし・アルバイト収入60万円・仕送り額72万円)

A:直系尊属(両親・祖父母等)、配偶者、目下の者(子・孫・弟・妹)以外を被扶養者にする場合は、「同一世帯に属する」という要件を満たしていなければなりません。したがって、家族の中でも実兄・実姉については同一世帯に属していなければ、被扶養者にすることはできません。
 このケースは年収要件(年収130万円未満〈60歳以上と障害者は180万未満〉、かつ、被保険者の年収の半分)を全員満たしていますが、兄だけは「同一世帯に属する」という要件を満たしていないため、被扶養者にはできません。
 ちなみに所得税法上の扶養親族になれるのは、父、兄、妹です。母は年収103万円を超えているため、扶養親族にはなれません。また、国民年金については、父は法定免除、兄・妹は学生納付特例制度(全額免除)の適用が受けられますが、母は免除されませんので、保険料を支払わねばなりません。


退職予定の従業員を予定日前に解雇するには?

07年3月第47号

Q.弊社従業員Hは、かねてから顧客からのクレームが多く、その都度厳重注意や配置転換で対処してきました。本人から1月に退職願が提出されており、3月20日付退職予定になっていました。ところが、退職を承認してから、顧客に対し会社の内情を暴露するような行為が見られるようになりました。その内容も事実無根で会社の信用を傷つけかねないものです。就業規則の懲戒解雇事由に該当するため退職日を待たずに解雇しようかと考えています。

A:この場合、方法としては即日解雇と出勤停止の2つがあります。
 即日解雇する場合は、たとえ以前に会社が3月20日付での退職を承認していたとしても、30日分の解雇予告手当を支払わなければなりませんし、Hが訴えを起こせば解雇自体の有効性が争われる可能性があります。
 出勤停止の場合は、その期間(この場合は退職日までの期間)1日あたりについて、労働基準法に定める休業手当(平均賃金の6割)を支払わなければなりません。
 ただ、制裁としての出勤停止の場合は、事業主責任ではありませんので、就業規則であらかじめ定めておけば無給とすることが可能です。就業規則では出勤停止期間を1週間と定めている会社が多いようですので、その場合には1週間を超えた期間について休業手当を支払わなければなりません。
 平均賃金は、原則として算出する必要の生じた日(この場合は解雇もしくは出勤停止を言い渡す日)の前日から遡って3ヶ月間、もしくは直前の賃金締切日から起算して3ヶ月間に該当者に支払われた賃金総額を、その対象期間の暦日数で割ったものです。


おたふく風邪にかかった従業員の出勤停止期間中は無給か?

05年2月第22号

Q:おたふく風邪にかかった従業員に治るまで休業するよう命令しました。その期間中は無給扱いとしてかまわないのでしょうか。

A:会社が一定の場合に出社そのものを禁止して自宅待機命令を出すことがあります。流行の兆しをみせている伝染病に感染している疑いがある従業員に対して、検査の結果がはっきりして医師の許可が出るまでは出勤を停止するという措置は、会社が他の従業員の健康管理にも責任を負っている以上、合理性があると考えられます。その他にも、従業員の出社により何か不都合が起きる可能性があるような場合で、休職や懲戒出勤停止までには至らないときに、業務命令として出社禁止を命じることがあります。

Q:そうすると自宅待機命令を出したことは問題ないわけですね。

A:自宅待機命令は、会社が通常有する指揮命令権の一環と考えられます。ただトラブルを避けるためにも、就業規則で「衛生上有害と認められるときは、会社への入場を禁止する」などの根拠規定を整備しておく方が良いと思います。

Q:その期間中の賃金はどうなりますか。

A:感染症の疑いのある病気に係る休業命令について注意しなければならないのは、感染の度合いについての判断基準の問題です。コレラ等の法定伝染病の場合は、法的に休業が義務づけられ、保健所による適切な措置がとられます。法定伝染病以外では、鳥インフルエンザが流行したとき、他国から帰国した人間について、保健所が認めた場合に限り、休業命令を使用者の責任としなかったという事例があります。しかしこの例外を除いて、法定伝染病以外の感染症については、感染する可能性の法律的な客観的な基準が存在しません。おたふく風邪も学校法定伝染病第二種とはされているものの、客観的基準がないのです。ですから、今回の休業命令は、労働基準法第26条の「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当することとなり、休業1日につき少なくとも平均賃金の6割の支払義務が生じます。

Q:「使用者の責任」はかなり広い範囲で問われることになりますね。

A:たしかに民法においては使用者に故意や過失があった場合に限って責任が問われます。ところが労働基準法においては、労働者の賃金生活の保障という観点から、使用者が責任を持つ範囲を広げているのです。
 以上、総合的に考えますと、ご相談のケースの場合、従業員の自主的判断で休暇を取って休むというのが一番適切ではないでしょうか。


業務上のケガの治療に健康保険を使ってしまったが…

04年6月第14号

Q:トラックからの荷おろし作業中に指をケガをした従業員が、健康保険を使って治療を行ったようで、後日、社会保険事務局のレセプト点検事務センターから「負傷時の状況について」確認を求める照会状が送られてきました。昔、「業務でのケガは健康保険で治療するように」と会社が指示したことがあったため、従業員は健康保険を使ったようです。どうしたらいいでしょうか。

A:労災保険は「業務上の事由または通勤」による労働者の負傷、疾病等に対して保険給付を行うもので、健康保険は「業務外の事由」による負傷、疾病等に対して保険給付を行います。社会保険事務局から照会状が送られたのは、勤務先、年齢、負傷日時等から見て、「業務外」とは考えられないためでしょう。労災保険の療養補償給付を使うべきです。本人にとっても、健康保険を使うと3割自己負担となりますが、労災保険による治療は自己負担なしです。手続が面倒でしょうが労災保険からの給付に切り替えられることをおすすめします。

Q:労災保険を使うと会社の保険料負担が増えると聞いたことがあるのですが。

A:たぶんメリット制のことだと思います。メリット制とは、納付された保険料額と支給した保険給付額の比率に応じて、一定の範囲内で労災保険率を上げ下げする制度です。事業主の保険料負担の具体的公平を図り、災害防止努力を促進するのが狙いですが、この制度が「労災隠し」が行われる背景の一つとなっているという指摘もあります。ところであなたの会社の労働者数は100人未満ですか。また労災保険率はいくつですか?

Q:50人未満です。労災保険率は1,000分の5です。

A:メリット制が適用されるのは、「100人以上の労働者を使用する事業」または「20人以上100人未満の労働者を使用する事業であって、災害度係数が0.4以上であるもの」です。災害度係数は、「労働者数×(労災保険率−1,000分の0.9)」という計算式ですから、1,000分の5の労災保険率ならば50人の労働者を使用しても災害度係数は「0.205」ですから、あなたの会社にメリット制は適用されません。

Q:今後もさまざまな事故が起こりうると思いますので、基準を従業員に示しておく必要がありますね。

A:そうですね。@業務上および通勤による負傷等においては労災保険を使うこと、A車両による事故で被害者側の場合と加害者側の場合の対応の仕方、B物損その他会社に損害を与えた場合の損害賠償についての基準、などを文書にして従業員の目に付く場所に張り出しておかれることをすすめます。


「セクハラか、社内風紀の問題か」〜慎重に見極め、会社の対応を

04年9月第17号

Q:派遣会社を経営しています。男性社員が、わが社の女性派遣社員と肉体関係をもち、派遣社員が妊娠してしまいました。同業の会社からその事実を知らされたのですが、対応を間違えると信頼を失い取引停止となる可能性もあります。二人とも解雇し、女性の方には会社として慰謝料のようなものを渡して解決したいと思うのですが…。

A:セクハラには「対価型」と「環境型」の2種類あります。「対価型」とは、上司などが部下に対して肉体関係などを迫る場合で、部下は「拒否すると解雇されるのではないか」など考えざるを得ませんから、地位や立場を利用した行為です。「環境型」は、相手に不快感をもたらす性的な言動によって職場環境を害する場合です。事件を起こした人の地位、あるいは事件が起きたあとの会社の対応によっては、裁判などで会社の責任が問われる場合があり、最近は会社に請求される損害賠償額が大きくなっていますから慎重な対応が必要です。事実調査はされましたか?

Q:女性から事情を聞き、男性の方も事実を認めています。

A:女性は、会社に対して責任を問うような主張をされているのですか?

Q:それはしていません。あくまでも「自分の恋愛感情によるもの」と述べています。ただ男性の方は別に付き合っている女性がおり、それがうちの社員でもあるので社内でうわさが広がっているのです。社内風紀上も会社としてけじめをつけなければならないと思っています。

A:男性社員は、女性派遣社員の直接の上司的な位置にある仕事をされているのでしょうか?もしそうならば「対価型」セクハラとみなされる可能性もあります。

Q:仕事上はまったく関係ありません。

A:そうしますとセクハラ問題というよりは、二人の関係の問題という側面が強いと思います。単純に解雇するのではなく、就業規則に基づいて社内風紀上の問題として対処されるのが適切ではないでしょうか。会社が女性に慰謝料のようなものを支払うとかえって複雑な問題になりそうです。また、心配されている取引先との関係は、社員教育を行う、「セクハラ規定」を作成するなど、今回の問題を教訓にして改善の努力を行っていることを示していくことが大切だと思います。