06年4月第36号
Q 当社は縫製業(サンプルの縫製)を営んでおります。タイムカードで残業時間を把握していますが、私用の時間があったり、自主的に技術の勉強をしている時間があったりして、本当の残業時間の把握が難しく、賃金計算上、困っています。
A 一般的には、就業規則等で「タイムカードは、勤務開始時においては勤務可能な状態になってから、勤務終了時においてはその日の業務が終了した時点で打刻すること」と定めている会社が多いと思いますので、そういう決め事を徹底させるのが一番確実と思われます。
しかし、今まで慣行として「退出時=帰宅するために会社を後にした時間」という解釈がなされていて、タイムカードの記録が信用するに足らないものである以上、本当の残業時間を把握するには、何らかの形で残業を報告させることが必要です。
その方法には、業務日報や「超過勤務報告書」のような用紙で、残業の理由・定時後に行った業務・かかった時間を記録し、提出させる方法などがあり、会社にとって一番手間がかからず、周知徹底しやすい方法を工夫されるのが良いかと思います。
ちなみに時間外賃金についてですが、私用時間については時間外賃金を支払う必要は全くありません。
また、自主的な技術の勉強については、時間外賃金を支払う必要はありませんが、「自主的」とはいえ、会社が半ば強制しているような場合は勤務とみなされ、時間外賃金を支払わなければなりません。
時間外賃金が割増賃金に該当するかどうかについては、会社の賃金規程に則って下さい。
05年11月第31号
Q うちの会社では、毎週土曜・日曜を休日としていますが、半分近くが休日出勤となっています。代休を取らせているので、休日出勤に対する割増賃金は支払ってきませんでしたがそれでよいでしょうか?
A 休日出勤の前に事前に他に休日となるべき日(振替休日)を決めた場合には、出勤した日は労働日となっていますので休日出勤手当を支払う必要はありません。ところが、休日出勤をした後に代休を与えた場合は休日出勤手当を支払わなければなりません。なぜなら、休日出勤という事実が先行しているからです。なお、ここでいう休日出勤手当の対象となるのは法定休日に限られることに注意してください。労基法では、法定休日は「1週間に1日」(または「4週間を通じて4日以上」)と規定しています。土曜か日曜のどちらか1日を休んでいれば法定休日が与えられていることとなるため、休日出勤手当を支払う必要はないのです。
また、@就業規則に「4週を通じて4日の休日を与える」(起算日も含む)と定め、A休日出勤をした後の代休を右記「4週間」の期間内に与えた場合で、Bその代休が「4週間を通じて4日の休日」に該当する法定休日であることを該当労働者に通告し同意を得れば、それは代休ではなく法定休日とすることができ割増賃金の支払い義務もなくなります(平6基発1号)。ここでいう労働者への通告は、その都度労働者に伝えるのでも、予め就業規則に定めておくことでもよく、労働者からの同意は、使用者の通告に異議を述べずに従った黙示の同意も含まれます(昭48鹿児島地裁判決)。
以上が休日出勤の扱いですが、これとは別に休日出勤の結果、週所定労働時間が40時間を超えた場合は、時間外割増賃金を支払う必要がありますので気をつけてください。この機会に就業規則を整備されることをお勧めします。
05年10月第30号
Q うちの会社では、残業時間の計算の仕方について、15分単位で集計をとっており、端数が7分未満であれば切り捨て、8分以上15分未満であれば15分に切り上げるようにしています。30分未満の端数については切り捨て、30分以上1時間未満の端数については1時間に切り上げることができると聞いていたのですが、最近読んだ雑誌にこうした扱いが労働基準法違反であると書かれていました。どう考えたらよいのでしょうか?
A 労働基準法では、残業時間は1分単位で管理しなければならないと定められています。したがって、毎日の残業時間は、1分単位で管理し1ヶ月分を集計して残業割増を支払うこととなります。ただし、1か月分の残業を集計した結果、30分未満の端数がある場合には切り捨て、30分以上1時間未満の端数がある場合には1時間に切り上げることが認められています(昭63.3.14基発第150号)。あくまでも、1日単位ではなく、1ヶ月単位で集計した結果に端数が出た場合の扱いですので注意が必要です。
仮に、1日について15分単位の扱いをするとした場合は、例えば、18時7分まで勤務した場合に7分間を切り捨てて18時までの勤務とすることは認められず、実際に勤務していない8分間を残業として扱い、18時15分を終了時間とするしかないのです。実際には働いていない時間を労働時間にカウントすることは、不要な出費です。法令どおり1分単位の集計にするか、18時00分または18時15分に勤務が終わるような業務と時間管理を行なうことをお勧めします。
05年9月第29号
Q 所定労働時間(午前9時〜午後6時)の勤務を終了していた者を、突発的な事故が発生したため午後9時から呼び出し、午前3時まで勤務させました。時間外労働と割増賃金は、どうなるのでしょうか?なお、土曜日から日曜日(法定休日)にかけてのことです。
A 労基法では、1日という単位について、通常、暦日(午前0時から午後12時)のことと解釈されています。ですから、同一の日に2回以上出勤した場合には、1回目の勤務の継続労働と扱われることとなっているため、2回目の6時間の労働時間はすべて当日の法定時間外労働時間として扱われます。午後9時からの2回目の勤務を当日3時間、翌日3時間の勤務に分割して計算するのではないのです。
割増賃金は、以下の通りとなります。
【午後9時〜午後10時】時間外割増125%
【午後10時〜午前0時】時間外割増125%+深夜割増25%=150%
【午前0時〜午前3時】 休日割増135%+深夜割増25%=160%
午後10時から午前5時までは、深夜労働となりますので、深夜割増がつきます。また、翌日の日曜日は、法定休日ですので、午前0時以降は休日出勤と同様の扱いになります。
なお、割増賃金を支払わなかった場合、「6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という罰則規定があります。
05年1月第21号
Q:製造業の会社です。機械設計や経理部門でみなし労働時間制を導入したいと考えていますが可能ですか?また、その場合、労働時間の管理はどうなるのでしょうか?
A:労働基準法は「1日8時間週40時間」の法定労働時間の弾力的運用として、変形労働時間制とみなし労働時間制を規定しています。みなし労働時間制には、@使用者の指揮命令下になく、労働時間の算定が困難な場合の「事業場外みなし労働時間制」、A研究開発やデザイナーなど19の業務に限定した「専門業務型の裁量労働制」、B事業の運営に関する事項の企画、立案、調査、分析業務の「企画業務型裁量労働制」の3種類があります。対象労働者は1日について所定労働時間(労使協定・労使委員会で定められた時間)労働したとみなされます。
Q:機械設計や経理を担当している労働者は、企画業務型裁量労働制の対象となりますか。
A:厚生労働省によれば、企画業務型裁量労働制の対象業務に「なりうる例」として、製造分野では「生産に関する企画を担当する部署における業務のうち、生産効率や原材料等に係る市場の動向等について調査及び分析を行い、原材料等の調達計画も含め全社的な生産計画を策定する業務」、経理分野では「財務・経理を担当する部署における業務のうち、財務状態等について調査及び分析を行い、財務に関する計画を策定する業務」をあげています。逆に「なり得ない例」として、製造分野では「個別の製造等の作業、物品の買い付け等の業務」、経理分野では「金銭の出納、財務諸表・会計帳簿の作成及び保管、租税の申告及び納付、予算・決算に係る計算等の業務」としています。これはあくまでも例ですが、“事業の運営に関する事項”であること、“企画、立案、調査及び分析の業務”であること、その対象業務の知識や職務経験を有した労働者であることなどが基準です。仕事の実態に即して検討してください。
Q:裁量労働制の場合、労働時間を把握する必要はないのでしょうか。
A:業務の遂行方法を大幅に労働者の裁量に委ねるのが裁量労働制ですから、厳密に労働時間を管理することは裁量労働を損ねることになります。しかし、会社の在室時間等の労働時間の状況は「健康・福祉措置」として把握する義務があります。また、裁量労働制は労働した時間帯までみなす制度ではありませんから、深夜割増、休日割増は支払わなければなりません。
Q:遅刻、早退、欠勤による賃金清算は?
A:遅刻、早退による賃金清算は裁量制と矛盾しますから行いません。しかし、欠勤による賃金清算はかまいません。労務提供がなかったのにあったものとみなす制度ではないのですから。
04年7月第15号
Q:管理職の従業員から「残業手当を払え」と要求されていて困っています。管理職に対しては労働基準法の労働時間の規定が適用されないと聞いたことがあるのですが…。
A:たしかに管理監督者等は、労働基準法で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定が適用されません。ただし管理監督者の範囲については、@経営方針の決定に参画しあるいは労務管理上の指揮権限を有する等、その職務と地位の実態から見て経営者と一体的な立場にあること、A出退勤について自由裁量の権限を有し、厳格な制限を受けない立場にあることという厳格な基準があり、いくら「部長」「工場長」という名称があってもその実態がなければ労働時間等の規定が適用されます。まずこの基準に該当する管理職であるかどうかが問われます。
Q:該当すると思います。
A:ところで、管理職に対する役職手当はどうなっていますか?
Q:毎月管理職手当を3万円支給しています。
A:その3万円のうち、時間外割増賃金分はどれぐらいの額なのか明示されていますか?
Q:とくにそのような規定はありませんが…。
A:もともと役職手当というのは、役職の地位と職責に対して支給される固定された特別給付ですから、時間外割増賃金とは性格を異にします。ただ、その役職手当には一定額の予定的な時間外割増賃金が含まれており、実際の時間外割増賃金額がこれを超えるときにはその差額を別に支払い、超えないときはそのまま支給する旨をあらかじめ明示している場合には、労働基準法違反の問題は生じないと思われます。賃金規定を整備されることをお勧めします。
Q:配達の業務で仕事が深夜に及ぶこともあり、深夜割増の支払いを要求しているのですが…。
A:それは当然の主張ですね。管理職が労働時間等の規定の適用から排除されているといっても、午後10時から午前5時までのいわゆる深夜業の割増賃金と、年次有給休暇に関する規定については適用されます。午後10時以降については、通常の賃金の1.25倍の賃金を支払わなければなりません。
04年11月第19号
Q:週休2日(土日)、月給制の職場です。就業規則で振替休日と代休を区別して書いてはあるのですが、運用上は振替休日をとった場合も代休をとった場合も同じ扱いで休日割増を支払っていません。法律違反になりませんか?
A:振替休日とは、あらかじめ、休日を労働日にし、他の労働日を休日とする措置です。たとえば、休日の日曜日に労働させる必要が生じたときに、その前の週の所定労働日(休日の繰上げ)あるいはその翌週の所定労働日(休日の繰下げ)を休日とし、その代わり日曜日を労働日とすることです。なお繰下げの場合の振替日は、「振り返られた日以降できる限り近接している日が望ましい」とされていますが、「振り返られた日を含む週から4週間以内」が限度です。これに対して、代休とは、こうした措置を事前にとっておくのではなくて、実際に休日に労働させてから、その後で休日労働の代償として別の他の労働日を休日として休ませることです。「あらかじめ」とるのが振替で、「事後に」とるのが代休です。
Q:そうすると、振替は休日と労働日が振り替わっているため休日割増は発生しないことになり、代休の場合は実際に休日労働させているので休日割増が必要ということになりますね。
A:原則はその通りです。代休を取らせなかった場合、休日労働分は通常の135%の割増賃金を払わなければなりません。問題は代休をとらせた場合ですが、「代休日は無給」と就業規則で決めておけば、35%分の賃金を支払うことになります。なぜ就業規則での定めが必要かといいますと、代休というのはもともと働く権利のある日を使用者が一方的に休ませるものだから、労働者に賃金の請求権(休業手当の請求権等)があるという考え方も成り立つからです。一方、平成6年1月4日付通達は、代休をとっても法定どおり4週4日の休日が保障されるのであれば割増加算しなくても「法違反として取り扱わない」としています。ですから、ご質問のような振替も代休も休日割増を支払わないという運用は、「4週4日」の休日が保障され、かつ、就業規則でその旨の定めをしておけば法律違反となりません。
Q:ところで、週休2日制の場合、土曜日と日曜日のどちらを法定休日と扱えばいいのでしょうか。就業規則で特に定めはないのですが。
A:どちらを法定休日にするか、就業規則で特定しなくてもよいとされています。使用者の選択によっていずれかを法定休日として指定できるのです。たとえば、日曜日に労働させても土曜日を休日とすれば週1日の休日が保障されますから、日曜日を休日労働と扱う必要はありません。もちろん、日曜日の労働によって週40時間を上回った場合は時間外労働としての割増加算(通常の125%)が必要となります。
04年8月第16号
Q: 週休2日制で、1日8時間、週40時間労働の会社です。現在、1日8時間を超えた分を時間外労働として残業代を支払っていますが負担が重くて大変です。変形労働時間制を採用すれば時間外労働を減らすことができると聞いたのですが…。
A:変形労働時間制には「1箇月単位の変形制」「1年単位の変形制」「1週間単位の変形制」「フレックスタイム制」の4種類あります。一定期間を平均して週40時間の枠内にあることを前提に、特定の週または日に法定労働時間を超過することを認める制度です。たとえば「1箇月」の変形制の場合、労働時間の総枠は31日の月では177.1(40×31÷7)時間となりますが、その枠内であれば「ある日」「ある週」を8時間、40時間を超える勤務割としてもその範囲内においては時間外労働となりません。フレックスタイム制は、始業及び終業時刻を労働者自らが決定する制度ですが、1箇月以内の一定期間の総労働時間数を定めておき、その総枠を超えた時間のみが時間外労働とされます。
Q:どの制度を採用したらいいのか、業種によって適した制度があるのでしょうか。
A:もちろん業種にもよりますが、業種の中でも就業実態、職務によって検討する必要があります。取引先との関係で就業時間を厳密に定める必要がないならフレックスタイム制、特定の曜日や特定の週が忙しくなる業務の場合は1箇月単位の変形制、デパートのように月により繁閑の差の大きいところは1年単位の変形制、小売業や飲食店の場合は1週間単位の変形制の採用が考えられます。どのような就業実態ですか。
Q:卸売業です。それほど曜日、週、月に繁閑の差があるわけではありません。
A:1年単位の変形制を採用されてはどうでしょうか。1年単位の場合、1年間の所定労働時間の上限は2085.7(40×365÷7)時間となり、それを超えた時間について法定の時間外労働となります。週休2日制で祝日や夏季・冬季の休業もある場合、年間120日程度の休日があります。仮に1年間245日の労働日数だとすると、1日8時間労働なら年間1960時間の所定労働時間となります。年間所定労働時間上限(2085.7時間)に達するまでの所定労働時間を超えた時間(2085.7−1960=125.7時間)に対する取り扱いは労使の自由に定めることができます。
Q:変形労働時間制を採用する手続はどのようにすればいいのでしょうか。
A:導入する制度にもよりますが、労使協定の締結と届出、就業規則による定め等が必要となります。詳細は労働基準監督署にお尋ねください。
![]() |