経営支援関連


03年11月第7号

居酒屋コンサル奮戦記…「街一番」のお店をめざして


<「自分の店を持ちたい」の夢>

 先月、知人から「開業したばかりの居酒屋の経営を軌道に乗せるために力を貸して欲しい」と依頼がありました。他でもない“居酒屋の支援”と聞いて、「願ったり、かなったり!」の思いを胸に、さっそく開店1ヶ月という和風割烹「T」を訪ねました。調理師の免許を取り、10年ほど修行を積んだ若いマスターと奥さん。「自分の店を持つ」という夢への挑戦と具体化が始まっていました。

<八方美人では客の心をつかめない>

 どんな事業を行うにも、誰を対象にするのかは基本中の基本。アパレル業界がもっとも顧客ターゲットが細分化されていると思いますが、居酒屋にとっても重要な視点です。20歳代を中心とする若者を主たるターゲットにするのか、30歳代のちょっとオシャレな雰囲気を好むOLの心をつかむのか、中年のサラリーマンを対象にするのかでは、お店の雰囲気はもちろん、取り揃えるアルコール類から料理の趣向まで、まったく違います。肝心なのは、ついつい欲張って、「若者も、中年も、さらには女性客も……」なんてソロバンを弾かないこと。結局誰からも満足してもらえず、失敗への第1歩になりかねません。

 こういう八方美人の経営でうまくいく可能性があるのは、大規模なチェーン店くらいです。チェーン展開している居酒屋のメニューを見ればわかりますが、お酒の種類も料理の種類も山盛りそろえてあって、あらゆる客層に対応しようとしています。ただし、それで成功しているかどうかは別ですが…。

 個人経営の小さな居酒屋では、とくに対象とする客層を絞り込んで、雰囲気から飲み物や食べ物、さらには器(うつわ)や接客態度まで、コンセプトを統一させる努力が必要です。でも実は、これがいちばん難しく、大変なことなのです。周りを見れば、よく目にしますよね。なんとなく中途半端なお店を。それだけに、ターゲットの絞込みとコンセプトの確立を軽視してはいけません。お店の「売り」をはっきりさせることです。

<「敵を知り…」も大切>

 そのためには、競合店の様子を知ることも大切。「A店は、女性客を意識したメニューや店づくりに徹している」「B店は、客層は似ているけど、客単価がちょっと高めの設定」「C店は、客単価を低く設定しながら回転率で勝負している」「D店は…」など、同一街区内で競合しそうなお店をピックアップして、調査をおこないました(ただの飲み歩き?)。そして、マスターや奥さんから「こんなお店にしたい」という思いをヒヤリングして、それと競合店調査の結果とを重ね合わせて、「他とは違う」「他にはない」オリジナリティあふれる店づくりを進めるわけです。

<経理は「税金のため」のみならず>

 もう一つ、開業したばかりの経営者にとっての大きな苦労は、経理の仕事です。最近では、手軽にできるパソコン用の経理・会計ソフトもいろいろ売っていますが、ソフトをそろえ、パソコンが上達しても仕事は進みません。なぜなら、「なぜ経理か」というそもそもの意義が腑に落ちていない場合が多いからです。

 よく耳にするのが、「税金対策のために」です。「ちゃんと記帳していないと税金を払うときに大変になる」のはその通りですが、経理を「税金対策」という側面からのみ見たのでは、本業が忙しくなったらどうしてもあと回しになってしまいます。

 経理とは、まず何よりも事業が順調なのか、どこかに欠陥はないか、利益を伸ばすにはどうしたら良いかなどを判断し、効果的に次の一手を打つためのものなのです。

 くり返しくり返し、経理の大切さを強調し、励ました甲斐もあって(?)、奥さんも伝票や領収書の山を相手に、連日格闘を始めました。

<忘年会・新年会――さあ、勝負の季節!>

 「おいしいお酒と心づくしの料理で、サラリーマンに一日の疲れを忘れてもらえるようなお店にしたい」「『来てよかった』と、“得した気分”になってもらえるようなお店」などの、めざすべき方向がだんだん鮮明になってきました。一度来たお客さんが次もまた来たくなり、さらには「行きつけの店」として利用してもらえるようになるかどうか、これからのがんばり次第です。

 コンサルを引き受けてから、はや1ヵ月。居酒屋にとっては1年のうちで最も重要な忘年会・新年会の季節に突入しました。メニューも決まり、チラシもできあがって、はじめて迎える"勝負の季節"です。