敵を知り、己を知れば…
最近ある経営者から、弁護士の方とともに相談を受けました。特許を取得するほどの高い技術力ですばらしい商品を開発したものの、販売力や宣伝力などが乏しく深刻な経営不振に陥ってしまったというものです。いま経営の改善、強化のために、この経営者と一緒に知恵を絞って対策を打っているところです。
「最近どうも売上が…」と悩む経営者の方が少なくありません。経営不振の原因を突き止め、解決のための道筋や方法を明らかにする、そのための調査・分析が「SWOT分析」といわれるものです。「SWOT」とは、内部環境を「強み(S=strength)」と「弱み(W=weakness)」、外部環境を「機会(O=opportunity)」と「脅威(T=threat)」に分けた際のそれぞれの頭文字です。このそれぞれについて調査・分析することで、その企業の実態をリアルに把握することが可能になります。
一般的に中小企業において、「強み」は意思決定の速さや機動力、地域密着性、個性などがあげられます。冒頭の企業の場合、高い技術力が大事な「強み」です。一方、「弱み」は、資金力や設備、人材などの経営資源の乏しさなどが、共通しています。
事業機会と脅威を分析する外部環境分析では、市場動向や消費者動向、顧客ニーズや競合他社の動向などを把握することが必要です。
事業機会を見出して、そこに自らの「強み」を集中することが、もっともオーソドックスな方法ですが、ときには「弱み」を強化して「強み」にすることで、「脅威」を「機会」に転換することもありえます。いずれにしてもまず、経営者が自らの会社と会社の周りの実態をリアルに把握することが大切です。
A−B=Cは奥が深い
具体的な数字を入れてみましょう。「100−85=15」ですね。ところで100を売上高、85を売上原価とすると、15は売上総利益、15÷100で粗利益率は15%。こうなると、この式は大変重要な意味を持ってきます。
深刻な不況のもとで、なんとか経営を維持しようと、どの経営者も必死です。ある社長さんは、「来年度はなんとか売上を5%アップさせたい」と意気込みを語ります。そうすれば約1億円の売上増になり、経常収支もようやくトントンになるとのこと。しかし、過去数年間の傾向や業界動向を見ると、売上5%アップの目標は、大変厳しい目標のようです。「実は、売上5%アップなんて無理だと思っている従業員がほとんどなんだよね」。不必要な経費を切り詰め、ギリギリの努力を進めてきた社長さんは、頭を抱えてしまいました。
ところが、この会社の経営状況をいろいろ調べてみると、売上高の割に売上総利益が少なすぎることがわかりました。粗利益率が低いのです。粗利益率は、業種や経営規模によって、おおよそ似た傾向を示すことがわかっていますが、この会社の粗利益率はなんと、全国平均からみて3〜4%も低かったのです。
購買意欲が冷え切っている昨今の経済状況下では、売上高をアップさせるのは至難の業。売上高アップを目指しつつも、売上原価を低く抑え、粗利益率アップを狙うことがより効果的です。この会社の場合、粗利率を0.5%改善するだけで、売上高5%アップにほぼ匹敵する効果があることがわかり、「売上増だけが業績アップの道じゃない」と、社長さんの新たな挑戦が始まりました。
問題は、机上の計算に終わらせないこと。仕入の仕方や在庫管理のあり方をはじめ、いかにして売上原価の圧縮を図るか、ここからが本当の勝負です。
新鮮な+αを追い求めて
市場が成熟化し、かつてのように売上を伸ばすことが難しくなっているもとで、CS(顧客満足)の向上が業績アップ・生き残りのカギとして近年ますます注目されています。先日も、ある企業が社員から提出してもらった個人別の当期目標を見せていただきましたが、売上目標などのほかに「お客様の立場に立った言葉遣いや接客態度」「ミスのない納品、迅速・的確なクレーム対応」など、どの目標も顧客の反応を意識した目標が掲げられていました。
ところで、「満足」とは一体なんでしょう?考え始めるとかなり難しい問題です。どうしたら「満足」してもらえるのでしょうか?さらに、顧客から出されたクレームや不満を解消したら、「満足」してもらえるのでしょうか?混同している会社も少なくないようです。
普通私たちは、「あたりまえ」のことがきちんと行われなかった場合に、「不満」を感じます。「不満」の解消とは、できなかった「あたりまえ」をきちんとすることです。でも、それだけでは「満足」は得られません。なにしろ「あたりまえ」のことが行われただけのことですから。「満足」とは「あたりまえ」以上のことが得られて初めて感じられるのです。つまり、「あたりまえ+α」が「満足」です。「不満」は本質的価値の欠如であり、「満足」は付加価値と整理しても良いでしょう。
ただ厄介なのは、この「あたりまえ」というのが、客観的・普遍的なものではなく、相手や時代によって変化するということ。昨日まで「満足」だったことが、今日では「あたりまえ」もしくはそれ以下ということは、いくらでもあります。CS(顧客満足)向上とは、新鮮な「+α」を提供するための日常的で継続的な努力です。
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