元銀行員の聞きかじり


【INDEX】

  貸すも親切、貸さぬも親切 (第1回)    
  『投資』と『融資』の違い (第2回〜第3回)     
  国有化りそな銀行への期待 (第4回)   
  銀行との関係 (第5回〜第8回)           
  決算書をどう見るか (第9回〜第16回)        
  パクリ屋について (第17回〜第19回)         
  コミットメントライン (第20回)         
  調査報告書(調書)の見方 (第21回〜)    
  企業内容の確認資料について (第26回)
  ディスクローズ(情報公開)について (第27回)
  本当に取締役は経営責任を果たせるのか (第28回)
  ビジネスローンって使えるの?(第29回〜第30回)
  タコ社長の経営能力は?(第31回)
  「自己責任の時代」とは「プロ不在の時代」?(第32回)
  景気回復について(第33回)
  『後悔しない決断』ってあるの?(第34回)
  「量的緩和」の解除について(第35回)
  事業計画は重要です(第36回)
  消費者金融規制はだれのため(第37回)
  村上ファンドの「言ったこと」「やったこと」(第38回)
  社長の交代(第39回)
  事故対応は会社風土そのものです(第40回)
  リストラの裏側?で行われていたこと(第41回)
  マネージャーは育つのか?(第42回)
  「歩留まり採用」の就職状況@(第43回)
  「歩留まり採用」の就職状況A(第44回)
  最近の銀行取引について<その@>(第45回)
  最近の銀行取引について<そのA>(第46回)
  最近の銀行取引について<そのB>(第47回)
  最近の銀行取引について<そのC>(第48回)
  目標と実績評価について(第49回)
  ニュース創刊50号に寄せて(第50回)
  最近の銀行取引について<そのD>(第51回)
  「決算書の見方」が整理できる本(第52回)
  「辞め時」について(第53回)
  カード会社の赤字発表について(第54回)
  使える会計@(第55回)
  使える会計A(第56回)
  使える会計B(第57回)
  使える会計C(第58回)
  新銀行東京について(第59回)
  税務調査について(第60回)
  使える会計D(第61回)
  経験者採用(第62回)
  監査法人について(第63回)
  北京オリンピック(第64回)
  食を守るもの(第65回)
  金融危機・その@(第66回)
  金融危機・そのA(第67回)
  金融危機・そのB(第68回)
  新年を迎えて(第69回)
  資産と費用について(第70回)
  社長交代(第71回)
  早期退職の募集について(第72回)
  構造改革(取引見直し)について(第73回)

第1回〜第10回 第11回〜第20回 第21回〜第30回 第31回〜第40回
第1回 貸すも親切、貸さぬも親切
 はじめまして。18年勤務した都市銀行が破綻し、ノンバンクに転職し5年となりました。概ね企業融資を担当してきました。今回ご縁があり、本欄を担当させていただきます。あまりお役に立つ情報はありませんが、皆様がいやでも≠ツきあいの必要な金融機関に勤務していた側からの考え方・見方などをお伝えし、少しでもスムーズな意志疎通ができればと思います。よろしくお願いします。
 さて、第1回は私の仕事上の信条です。これは、城南信金元理事長の小原鐵五郎氏の言葉と聞いています。「借入申込み」があった場合に、返済可能か保全が充足されるかなど検討を行う事となります。この際、上司からは「貸すことがその会社の為になるのか」とよく問いかけられました。「借りる人が『貸して』と言っているんだから(借り手自己責任)いいんだ」と単純にはいきません。結局は「金貸し」ではあるにしろ、求められているのは、むしろ「客観的な判断(アドバイス)なのだ」という教えです。数字に追われるなかで「本当の意味で役立つこと」を考えることは大きな意味があるとの信条を持つ銀行員はまだまだ健在のはずです。

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第2回 『投資』と『融資』の違い〜その1
 銀行は「ニュービジネスを理解しない」との不評は、もちろん今に始まったわけではありません。この対応は、『融資』と『投資』とが収益構造がまったく違っていることによるものです。
 言うまでもなく『融資』の儲けは「利息−調達原価(今は0に近いが)−事務コスト」です。具体的な例では、元金1千万円で金利3%、原価+事務コスト1%とすると年間の利益は2%、実額で20万円となります。ここで「貸倒」が起こったとしますと、1千万円のロスが発生します。つまり1件の事故が起こると50件分の利益が吹っ飛ぶことになります。(なんて儲からない商売とお思いになりませんか?)
 一方、『投資』は50件のうち1社でも株式公開し株価が50倍(例えば、500円が2万5千円)になれば、投資総額全部を回収できることとなります(もちろん、それ以上もあり)。
 このように、同じ1/50の確率でもまったく正反対の意味を持った「確率2%」であり、対応が違ってくることは当然の帰結といえます。〈この項続く〉

第3回 『投資』と『融資』の違い〜その2
 まず、皆様に質問です。友人が新規事業を始めることとなり資金援助を求めてきました。あなたは『融資』しますか?『投資』しますか?
 前回、利益構造の違いを説明しました。『融資』の「儲け」は、【利益率>貸倒リスク】を前提としており、現状の貸出金利水準ではリスクを取ることがいかに不可能に近いかがお分かりいただけたと思います(もちろん、銀行全体としては別な理論ではありますが)。逆に、よく「アメリカでは…」とも言われているように、金利が高くなれば、当然とるリスク範囲も広がるわけで、国内の銀行でもそのような商品が出てきました。
 さて、ここで問題となるのは、この金利水準で事業採算が成り立つかということです。単純に言って、金利が3倍ですから借りられる限界は3分の1、(通常が月商の6ヶ月以内とすると)2ヶ月程度とかなり限定的な範囲になると思われます。
最初の質問に対する皆様の回答はいかがでしたか?「必ず返してもらう」気持ちと「上手くいったら倍にしてもらう」気持ちで過ごすのはどちらがよいでしょう?〈この項終わり〉

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第4回 国有化りそな銀行への期待
 少し旧聞に属することになりましたが、りそな銀行が実質国有化されました。中心である大和銀行は信託併営のユニークな都市銀行として、90年頃には「お嫁さんにしたい銀行」と評価されていましたので、その後のスキャンダルはともかく、感慨があります。
 さて、私の期待は銀行経営の革新です。銀行は「黙っていても儲かった」ことを経験したため、原価(生産)管理がまだ不十分です。「質を量でカバーする」考え方が主流でした。最近支店の廃止・統合が増えてきましたが、これなども環境が変わったことだけが原因ではありません。今回の国有化により経営陣が一新されることに対して「素人に銀行業務がわかるのか」との妙な話もありましたが、「経営経験者にわからないような銀行経営自体にこそ問題がある」わけで、「メーカーの経営革新を進めてもらいたい」と考えていた私としては、JR出身の新社長には大いに期待しています(いろいろな前提条件はありますが…)。
 革新に伴う「痛み」は、当然私たち取引先にも生じます。困った時の「もたれ合い」ではなく、「信頼関係」の真価が問われることとなります。

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第5回 銀行との関係(その1)
 皆様はいろいろな契約書の欄外にある『捨印』欄に判を押しますか?さまざまな申込書・契約書などには申受け側(借入であれば銀行)の事務都合のためにある『捨印』を皆様はあまり意識なく押してはいませんか。私の銀行員時代に「絶対『捨印』は押さない」お客様がいました。事実、このお客様との過去の契約書には『捨印』はありませんでした。理由を尋ねると、以前『捨印』のために、不動産取引で全ての財産を失ったことがあるとのことでした。「『捨印』は当然」と考えていた私は大変とまどいました。しかし、よく考えると確かにそのお客様の言うとおりで、契約で『捨印=白紙委任』は有り得ないわけです。万一、作成が間違っていたら、両者了解のうえ『訂正印』により修正すればよいだけのことです。逆に、『捨印』による訂正の場合、契約者が合意していたかは疑わしいことになります。「任せることが信頼」という迷信です。
 この経験以降、実務的でなく緊張感をもって契約することができるようになりました。銀行とお客様の良い関係には、このような緊張感が必要です。なお、後年ですが、銀行の内部検査においても、『不要(押す必要がない)捨印』放置は指摘事項となりました。

第6回 銀行との関係(その2)
 銀行にとって『よい取引先』とはどういう先でしょうか?まず、銀行も商売ですから、「儲かる」取引先でなくてはなりません。利益の源泉は『利息』ですが、その他手数料の収入のウェートも増えています。取引が進んでくると、銀行からさまざまな「お願い(要請)」が来ます。いわく、「○○周年」「頭取交代」の預金積上げ要請、インターネット取引の拡大、クレジットカードの加入など実にさまざまなものがあります。当然、これらすべてに答えることはないと思いますが、今後の融資がスムーズにいくことなどを考え、できる範囲での対応をしていることも多いのではありませんか。もちろん、事業にプラスになる提案としては(例えば、事務合理化など)歓迎すべきことですが、いわゆる「担当者ノルマ」であれば「取引関係強化」に結びつくことはあまり見込めません。銀行との取引が“持ちつ持たれつ”の関係では発展的なものにはなり得ません。経験的にも、財務内容がしっかりした会社では、銀行対応はより厳しく、「お願い」ベースは通りませんでした。逆説的にも、この時代にコスト管理の意識が低い企業は成長できません。

第7回 銀行との関係(その3の@)
 どんな銀行(支店)とつき合うのかを考えてみます。役に立たないのでは話になりませんが、今の時代“破綻しない”も重要です。しかし、“潰れない大きい銀行がいいか”というとそう簡単な問題ではありません。銀行取引こそがイコールパートナー関係となる必要があり、当社を最もよく理解して、重要先として遇してくれる銀行を選ぶべきです。例えば、“支店長交代”の際に「あいさつ」が来る先も一つの基準です。支店長にアポイントが容易に取れないところも話になりません。
 通常の借入などについは窓口担当者・課長で構わないわけですが、事業提携・大きな設備投資(必ずしも借入を必要としない場合にも)などについては、直接支店長に説明・理解してもらいます。これは、コミュニケーションの為だけではなく、当社のことを知っている人に対して説明し理解されるかどうかでその内容が充分かを検証することができるからです。よく理解されればよい内容であったこととなりますし、積極的な協力者を得ることとなります。逆に、銀行員ぐらいを説得できない事業ではちょっと弱いものと思われます(もちろん銀行員の努力・能力にも負うわけですが)。〜この項続く

第8回 銀行との関係(その3のA)
 銀行にどのように理解してもらうか。更にもう一歩踏み込んで、どうやって味方になってもらうか。しかし、これが簡単ではないことを知った経験を紹介します。A社はサブメイン取引であったのにもかかわらず、社長自らが試算表・決算書を持ち少なくとも3ヶ月ごとには来店されます。借入申込みがあるときに限りません。銀行側では主要先ではなく、課長対応先でしたし、タイミングが合わなければ担当の私だけのときもありました。しかし、いつも同じ態度で、事業の状況および今後の計画を説明されましたので、徐々にA社に対する関心・理解は深まりました。時代はまだバブル入り口でもあり、やや成長性に難はあったものの、私はメイン奪取を狙って積極的な融資を売込みました。しかし、相当に有利な条件を出したにもかかわらず、社長はメイン銀行への変更を受け入れませんでした。この結果は、会社と銀行との信頼関係がどのようにあるべきかを随分と考えさせられました。この話は、現在のスピード時代・ニュービジネスに合わないのかも知れません。しかし、イコールパートナーになるにはお互いの理解が必要で、それには時間・実績も重要な要素となります。支店長・担当者は異動しますが、会社は“異動”しないのですから。〈この項おわり〉

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第9回 決算書をどう見るか@〜「赤字」か「黒字」か
 本年もよろしくお願いします。年も改まりましたので、テーマも「決算書」に移らせていただきます。
 「銀行が決算書をどう見ているか」を理解することは、対銀行折衝だけでなく、取引先を見るポイントとしても有益と思われます。さて、決算書は取引先分析のための重要な部分を占めます。しかし、監査法人がいるような大企業と、一般の中小企業の場合には内容の正確さに大きな差があります。特に中小企業の場合、決算書には経営者の“意思”が強く反映されています。つまり「納税」目的であれば、極力利益を少なくしてあります。また、逆に「借入」目的であれば、できるだけ利益を計上するようになります。(保証協会の調査で)倒産件数と利益率(当期利益÷売上高)には、強い負の相関関係があることがわかりますが、ただ1ヶ所だけ倒産件数がその前後で群を抜いて高いポイントがあります。赤字寸前の決算をしている場合です。いわゆる『粉飾』が集中しているということだと思います。「黒字」決算に越したことはないのですが、明らかに赤字を回避しただけの「黒字」決算は、他の内容にも疑念を生じますし、経営者に対する印象も消極的なものになってしまいます。

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第10回 決算書をどう見るかA〜「利益が大事」
 さて、決算書をどこから見ていくか。今こんなことを言うとセクハラと非難されるんでしょうが、新人の頃「女性と決算書は尻から見ろ」と教えられました。女性についての真偽のほどはわかりませんが、語呂も良いことから妙に頭に残っています。つまり、まず「利益」ありきということです。それから順次上にさかのぼって行きます。借入の返済財源は、短期資金であれば「売上金」、長期資金であれば「償却前利益」(やや正確さを欠きますが)です。決算書を見る目的が「貸せるか、貸せないか」を判断することですので、まず黒字でなければ追加貸付が難しいということになり、そこで終わってしまうこともあります。さて、黒字でなければダメですが、黒字ならばよいと言うわけではありません。次にその利益の内容が問題となります。何によるものか(一時的なものではないか)?、正しいものか(償却など費用計上が正当か)?など細かく見て行きます。やはり、ここでは本業による利益が出ているかどうかが一番重要です。ですが、利益の出ている黒字会社だけが取引相手ではありません。当然に、取引先には赤字先もあります。ここにどう対応していくか、どういう赤字であれば「貸せるのか」を検討していくことになります。

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第1回〜第10回 第11回〜第20回 第21回〜第30回