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20代、30代のための年金相談

 若い世代の年金問題について、当事務所の鎌田がある雑誌に寄稿した文章を紹介します。


 国民年金も厚生年金も保険料が年々上がり、一方で保険給付額は確実にダウンしています。これだけ年金制度の改悪がすすむと、若い人たちの中で、「老後の年金などもらえないだろう」とあきらめている人も増えています。
 また、とくに20代、30代では、パート、アルバイト、派遣などいわゆる非正規雇用者が増えています。「国民年金保険料を払う余裕がない」「厚生年金に加入させてもらえない」と悩み、将来に不安を感じている人も少なくありません。
 この特集では、20代、30代の方から多く出される年金についての質問にお答えします。

 【パートでも厚生年金に加入できる】

Q1:従業員10人の小さな会社にようやくパートとして採用されました。働いている時間は社員の人たちとそれほど変わりません。社長から「がんばればいずれ社員にするから」と言われ、パート採用期間中は社会保険(健康保険と厚生年金保険)に入れてもらえません。なんとかならないでしょうか?(24歳)

A1:パートや試用期間中の者を社会保険の対象にしない会社が少なくありません。社長さんが、こういう人たちは社会保険の加入対象ではないと勘違いされている場合もあります。法人の事業所または常時5人以上の従業員を使用する個人の事業所で使用される者は、法律上当然に社会保険に加入させなければなりません。試用期間中の者はもちろん、厚生労働省の通達では、パートやアルバイトでも「通常の労働者の所定労働時間及び所定労働日数のおおむね4分の3以上」であれば社会保険に加入させなければならない、としているのです。
 解決手段としては、社長さんに率直に相談してみてはいかがでしょうか。ただ苦労してようやく見つけた仕事のようですから社長さんになかなかいいづらいかもしれません。そういう場合は社会保険事務所に相談してみる方法もあります。社会保険事務所では、このような違法な扱いを行っている事業所などを対象にして、社会保険調査官が随時「総合調査」を行っています。社会保険事務所は、事業所に対して、あなたが相談に行かれたことはわからないように調査するようになっていますので安心してください。

 【25年保険料を払ってはじめて老齢年金がもらえる】

Q2:パートや派遣で働いて貯めたお金で最近小さなフラワーショップを開きました。いままで国民年金保険料をほとんど払ったことがないので、いまさら払っても将来年金をもらうのは無理ではないかと不安です。(36歳)

A2:日本の年金制度では、老齢年金は、20歳から60歳までの間に、国民年金保険料または厚生年金保険料をとにかく25年間納入していなければ給付されないという世界一厳しい条件があります(「25年」には保険料が免除になった期間も含まれます)。ようやくフラワーショップという夢が実現したにもかかわらず、36歳ですからいまから60歳まで保険料を払っても25年を満たせるかどうかギリギリというところですね。でもこれからがんばれば25年を満たすことは可能です。
 まずあなたのいままでの年金加入期間を、最寄りの市区町村役所か社会保険事務所へ行って調べてください。もし年金手帳を紛失した場合も再交付申請をすれば交付してもらえます。
かりに60歳までの間に25年を満たすことができなかったとしても、60歳以降も加入できる制度があります。厚生年金は70歳まで加入することができます。フラワーショップを法人化する(会社にする)とか、将来会社勤めをするなど、厚生年金が適用される事業所で働くということです。また、自営業として経営する場合も申し出れば65歳まで国民年金に任意加入することができます。
また、老齢基礎年金の額には反映しないものの、25年の加入期間としてカウントされる期間(「カラ期間」)があるかどうかもチェックポイントです。あなたの年齢の場合、@学生時代に任意加入しなかった期間があればその期間(1991年3月までは20歳以降の学生は任意加入だった)、A20歳前に会社勤めをしていて厚生年金に加入していればその期間がそれに該当します。

 【学生納付特例制度】

Q3:アルバイトをしながら語学の専門学校に通っています。アルバイト代で学費を払わなければならず、とても国民年金保険料を払う余裕がありません。何か事故があった場合や老後の年金のことを考えると心配です。何かいい方法はありますか?(23歳)

A3:学生納付特例制度という保険料納付猶予制度がありますので、市区町村の年金課に申請してください。親の収入に関係なく学生本人の所得が118万円未満であれば承認されます。学生納付特例期間中に重い障害になったり、亡くなった場合には、障害基礎年金や遺族基礎年金の支給が保証されます。
ただ就職してから保険料の追納(追納できる期間は10年)をしなければ、学生納付特例期間は老齢基礎年金の額には反映しませんのでご注意ください。
新聞などで学生無年金訴訟のことが報道されています。20歳を過ぎた学生の国民年金加入が任意だった当時(1991年3月以前)に、未加入のまま事故等で障害を持ち、障害基礎年金の支払いを拒否された方たちが、不支給決定の取り消しと損害賠償を請求しているのです。年金制度のこうした問題点を改善するため2000年4月から設けられたのがこの制度です。対象となるのは学校教育法で定められた大学・短大・専門学校等の学生です(2002年4月から定時制・通信制・夜間などの学生も対象となりました。予備校生は対象となりません)。

 【保険料の30歳未満猶予制度・免除制度】

Q4:アルバイトで働いていますが、厚生年金には入れてもらえないし、国民年金の保険料はとても払えません。どうしたらいいでしょうか?(24歳)

A4:保険料納付の猶予制度はQ3のケース以外にも、平成27年6月までの時限措置として、30歳未満(学生を除く)の若年者に対する保険料納付猶予制度が設けられました。アルバイトやフリーターなどで本人および配偶者の所得が低いと(※1)、申請によって保険料納付が猶予されます。追納しなければ老齢基礎年金額には反映しません。追納期間は学生納付特例と同じ10年間です。
※1:30歳未満猶予制度が適用される所得基準…「扶養親族等の数に1を加えた数を35万円に乗じて得た額に22万円を加算した額」(例:扶養親族等がいない場合は57万円、扶養親族等が3人いる場合は〔35万円×4+22万円〕で162万円となる)
 保険料免除制度は、いままでは全額免除と半額免除の2段階しかなかったのですが、2006年7月から新たに4分の1免除、4分の3免除の2段階が追加され、世帯の所得水準に応じて4段階の免除制度となります(※2)。免除制度は猶予制度と違い、ある程度老齢基礎年金の額に反映します(もちろん10年間に限り追納することもできます)。具体的には、1ヶ月が、全額免除の場合は3分の1ヶ月、4分の3免除の場合は2分の1ヶ月、半額免除の場合3分の2ヶ月、4分の1免除の場合は6分の5ヶ月としてカウントされることになります。

※2:免除となる所得の目安(〔 〕内は収入の目安)

単身世帯 2人世帯 4人世帯
全額免除 57万円〔122万円〕 92万円〔157万円〕 162万円〔257万円〕
3/4免除 93万円〔158万円〕 142万円〔229万円〕 230万円〔354万円〕
半額免除 141万円〔227万円〕 195万円〔304万円〕 282万円〔420万円〕
1/4免除 189万円〔296万円〕 247万円〔376万円〕 335万円〔486万円〕

 免除期間と猶予期間は、いずれも加入期間とみなされるので、25年の受給資格にカウントされ、またその期間に障害となった場合には障害基礎年金が支給されます。ただ、免除期間は老齢基礎年金額に一定の範囲で反映しますが、猶予期間は追納しない限り反映しません。また、各制度が適用される所得の基準となる単位は、学生納付特例は「本人」のみ、30歳未満猶予制度は「本人と配偶者」、免除制度は「世帯」の所得であることに気をつけてください。

 【育児休業への新しい支援制度】

Q5:近く出産を予定しています。夫婦共働きなので、産休明けに育児休業をとるつもりです。育児休業期間中の厚生年金保険料はどうなりますか?将来の年金額は減ってしまうのでしょうか?(30歳)

A5:若い夫婦にとって子どもを育てながら共働きを続けていくことは大変な苦労です。政府も少子化対策を強調していますが、雇用環境を抜本的に改善する施策はきわめて不十分です。そうした中でも、厚生年金の加入者に対してはいくつかの子育て支援策をとっており、活用したいものです。
 第一は、育児休業している間の厚生年金保険料が免除される制度です。いままでは産休明けから子どもが1歳になるまでの間で育児休業した場合に保険料免除とされていましたが、これが拡充されました。具体的には、@育児介護休業法が改正され、子が1歳に達したあと保育所に入れないなどの場合育児休業が1歳6ヶ月まで延長できることになりましたが、これに伴い、保険料の免除期間も1歳6ヶ月まで延長できるようになり、A事業所で3歳になるまでの育児休業制度が設けられている場合は、保険料の免除期間も3歳になるまで延長できるようになったことです。この免除期間は、厚生年金保険料を払ったものとみなされますから、年金額は減額されません。
 第二は、育児休業を終了して復職した際、育児のために勤務時間を短縮せざるをえないため報酬が低下したとき、従来は要件を満たして一定の期間が経過しないと保険料負担が軽くなりませんでした(随時改定という仕組み)が、申し出さえすれば直ちに保険料負担も軽くできるよう改正されました。
 第三に、育児休業等を取得せずに仕事をしながら子を養育する場合にも勤務時間の短縮等で報酬が低下する場合がありますが、この場合、子が3歳に達するまでの間、保険料は実際の報酬に応じた額を納付しながら、年金額は出産直前の報酬に基づく保険料が納付されたものとみなして計算されるという制度です。3歳未満の子を養育している人なら、お父さんもお母さんも二人で活用できます。

 【夫の扶養に入ったほうがトク?】

Q6:子育ても一段落ついたのでパートで働き始めました。勤め先の厚生年金に加入すると保険料も負担しなければならないし、年金もどれだけもらえるかわからないので、年収130万円未満になるよう勤務時間と収入を調整して夫の扶養に入っています。将来の年金額のことを考えると本当にこれでいいのでしょうか?(35歳)

A6:おっしゃるとおり年収130万円未満で、かつ被保険者の年収の2分の1未満だと、健康保険の被扶養者となり、国民年金の第3号被保険者になれます。自己負担なしに健康保険証を使えますし、国民年金保険料の納付済期間に算入されます。手続きは第2号被保険者(夫)の事業所を通じて行います(注)。
 (注:第3号被保険者の届け出の特例)
結婚や出産を期に退職したりパート勤務になった女性が、第3号被保険者の届け出をし忘れる場合があります。そうした方を救済する措置として、2005年4月前の期間については届け出を行えばすべて保険料納付済期間に算入されることになりました。なお、2005年4月以後の期間は、届け出前の2年間(あるいは「やむを得ない事由があると認められた期間」)だけ遡って保険料納付済期間に算入されます
なんとも得したような気分になる制度ですが、支払う保険料の負担と将来もらえる年金額との関係を長い目で見てよく考える必要がありそうです。つまり、いままで専業主婦だった方がパートで働き始め厚生年金に加入したとして、パート期間中に支払う保険料と、65歳から女性の平均寿命の86歳まで生きたとして受け取れる年金額を比較して考えるということです。パートの女性は平均で7年半働き、既婚の女性の場合の年収は90万円〜100万円が最多です。これを基準に試算してみると、おおむね次のようなことがいえそうです。
@ 夫が自営業者の場合は、妻が厚生年金に加入した方がトクであることは間違いありません。支払う保険料は、現在の定額の国民年金保険料(2006年度は1ヶ月13,860円)より厚生年金保険料の方が安くなります。厚生年金保険料率は現在14・288%で半分は使用者が支払いますから当然です。一方、老齢厚生年金額は増えます。
A 夫が厚生年金に加入しているサラリーマンで、妻が第3号被保険者だった場合は、厚生年金に加入することによっていままで払っていなかった保険料を新たに負担することになります。100万円の年収で7年半働けば、本人の保険料負担は今後の保険料率のアップも考慮に入れると約60万円。65歳からもらえる老齢厚生年金の増額分が7年半の保険料負担分(約60万円)を超えるのが75歳前後になりそうです。平均寿命を考えて差し引きすると“長生きするほどプラス”ということになります。

 【無年金障害者にならないために】

Q7:最近ある難病を患っていることがわかりました。この間いろんな会社を短期間で入退社してきたため、年金保険料の納付は途切れ途切れになっています。障害年金をもらうことはできるのでしょうか?(25歳)

A7:障害基礎年金も障害厚生年金も、@初診日に被保険者であること、A初診日から1年6ヶ月後(障害認定日という)に障害等級(障害基礎年金の場合1級・2級の2つ、障害厚生年金の場合1級・2級・3級の3つがある)に該当すること、B保険料納付要件を満たしていることが支給要件です。
 あなたの場合、Bの保険料納付要件を満たしているかどうか不安です。保険料納付要件とは、初診日の前日に初診日の属する月の前々月までに国民年金の被保険者期間があるとき(※)、保険料滞納期間が3分の1未満であること、または、直前1年間に保険料滞納期間がゼロであることのいずれかを満たしているということです。まずこの1年間あるいは20歳以降の保険料納付状況を社会保険事務所などで調べてみてください。
※保険料納付要件について
  ○「初診日の前日に」納付要件をみる…いままで保険料を滞納していた者が初診日以後に保険料を納付して受給権を得ようとすることを防止するため
  ○初診日の「前々月まで」の納付状況をみる…毎月の保険料は翌月末日までに納付することとなっているため、初診日の前々月までには確実に保険料が納付されているはずとの考え方に基づく
  ○「前々月までに国民年金の被保険者期間があるとき」…厚生年金に加入し続けている人はもともと事業主に保険料納付義務があるので保険料納付要件が問われない。ただし、自営業者などで国民年金保険料を滞納している者が、厚生年金に加入した直後に傷病にかかった場合には保険料納付要件を満たさないことになる。また、20歳に達した直後に初診日がある場合は、もともと前々月までに被保険者期間がないので保険料納付要件は問われない。
  ○「(初診日の前々月までの)直前1年間に保険料滞納期間がゼロ」という要件は、2016年4月までの特例である。
 また、20歳前に病気が発症した場合に、「20歳前傷病による障害基礎年金」が支給されます。20歳前ということはまだ国民年金の被保険者ではありませんから、保険料納付要件というものがそもそもありません。あなたが患っておられる難病の初診日が20歳前であることを証明できれば支給されます。カルテの保存が義務付けられているのが5年ですから、過去の記録をたどるのは大変ですが、最初に症状が現れたときにかかった病院に相談して、受診状況等証明書を書いてもらい、市区町村の国民年金の担当係に相談してみてください。もしその証明が無理な場合でも20歳前に発症したことが医学的に明らかであれば支給される可能性があります。最近の裁判でも「初診日は、発症日を基準とした拡張解釈をする必要が極めて高い場合がある」として障害基礎年金不支給決定の取り消し、20歳前の障害基礎年金の支給を命ずる判決が出されています(2006年3月27日盛岡地裁など)。
 もしものときを考えると、保険料を納める努力を怠らないこと、どうしても苦しいときは保険料の免除や猶予の申請手続きを忘れずに行うことが大事です。


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