鎌田勝典の論文
2005年1月
パートタイマーの権利
○パートタイマーとは、「短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律」第二条に定義=「一週間の所定労働時間が同一事業所に雇用される通常の労働者の一週間の所定労働時間に比し短い労働者」。他に法律で定められた定義はないが、雇用期間を定めて雇用される契約社員や臨時社員等がある。
(1)採用されるとき抑えておきたいポイント
採用後に、労働条件が突然変更になるなどのトラブルを防ぐ上で大事なのは、採用時に労働条件をしっかり確認しておくことです。
パートタイマーに限らず、使用者は従業員を雇用する際、賃金、労働時間、その他の労働条件について明示する義務があります(労働基準法15条)。必ず明示すべき事項は次のとおり。@労働契約の期間、A就業の場所及び従事すべき業務、B始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換に関する事項、C賃金(退職手当を除く)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項、C退職に関する事項。これらは原則として書面で交付することが義務付けられています。
また、とくに常時10人以上の労働者のいる職場では、使用者は、パートも含め全員に適用され得る就業規則を作成する義務があるので、必ず見せてもらうようにします。
(2)正社員との間に大きな賃金較差が許されるか
使用者がパートタイマーを採用する理由の一つに、人件費の抑制があります。正社員と同じ仕事をしているのに賃金格差が大きすぎるのはおかしなことです。裁判所でも、正社員と勤続年数が同じで仕事内容も同じな場合、「八割以下となるときは、許容される賃金格差の範囲を明らかに越え(ている)」という判決を出しています(丸子警報器事件。長野地裁平成八年三月一五日判決)。
(3)雇用の雇止め・解雇について
パートタイマーの場合、期間の定めのない雇用のケースよりも、3ヶ月、6ヶ月、1年など期間を定めた雇用とされるケースが多い。昨年出された厚生労働省の「有期労働契約締結、更新、雇止めに関する基準」では、@契約更新の有無、更新の判断の基準を書面で明示する、A雇止めの予告は、少なくとも契約期間終了の30日前に行う、B雇止めの予告をした後、労働者が請求した場合、雇止めの理由を明示する書面を交付する、などが行政指導の基準として発表されました。
どれぐらい職場に勤められるのか、つまり「更新の有無、更新の判断の基準」を採用されるときにはしっかり聞いておきましょう。仮に、雇止めされるときには、突然雇止めが言い渡されると困ります。次の仕事も考えなければなりませんから、「雇止めの予告は30日前」の原則を知っておくことが大事です。また、万が一、雇止めとなった場合には、自己都合退職か会社都合退職かで雇用保険から支給される基本手当の額に大きな違いがありますから、「雇止めの理由を明示する書面」を請求できることを知っておくことも大事です。
期間の定めのある労働契約において、その期間中に使用者の勝手な理由によって解雇された場合(過失が使用者にある場合)は、契約期間内の賃金を請求することができます。期間の定めのない労働契約の場合は、労働基準法に基づいて、30日前に解雇予告を行うか30日分以上の平均賃金を支払うことが使用者には義務づけられています。
(4)最低賃金が支払われているか
パートタイマーの多くは、時給(日給)制か、日給(月給)制、つまり、賃金は「一時間当たり○○円」「1日当たり○○円」と定めて、支払いはまとめて月一回行うという形態でしょう。最低賃金法に基づいて、地域別または産業別に毎年最低賃金額が定められています。たとえば東京の時給の最低賃金は平成16年度は710円です。使用者は最低賃金以上の賃金額を支払うことが義務づけられ、それ以下の賃金額を契約で定めても無効の契約となります。
また、最低賃金には、割増賃金、精皆勤手当、通勤手当、家族手当などは含まれません。それらの手当を除いた賃金が最低賃金以上であるかどうかがチェックポイントです。
(5)パートタイマーにも年次有給休暇がある
年次有給休暇制度とは、雇い入れの日から6ヶ月以上継続勤務し全労働日の八割以上出勤した労働者に与えられるもので、正社員であろうがパートタイマーであろうが権利を有しています。この場合、「継続勤務」とは会社の在籍期間のことをいい、産休で休業した期間や育児・介護休業期間、年次有給休暇を取得した期間も出勤した日と扱われます。
なお、週所定労働日数が4日以下(あるいは年間所定労働日数が216日以下)で、かつ、週所定労働時間が30時間未満の労働者の場合は、比例付与という制度が適用されます。通常の労働者は厚生労働省令によって「週5.2日」が平均所定労働日数とされており、通常の労働者に対する付与日数を基準として、週何日の所定労働日数かによって比例配分されるわけです。たとえば、勤め始めて6ヶ月経過した後の場合、通常の労働者にはむこう1年間10日の有給休暇の権利がありますが、週4日勤務のパートタイマーは「10日×4日÷5.2日=7.69」となり端数切捨てで7日間の有給休暇の権利があるということになります。(表参照)
| 週所定 労働 日数 |
1年間の所定 労働日数 |
継続勤務年数 | ||||||
| 6ヶ月 | 1年 6ヶ月 |
2年 6ヶ月 |
3年 6ヶ月 |
4年 6ヶ月 |
5年 6ヶ月 |
6年 6ヶ月以上 |
||
| 4日 | 169〜216日 | 7日 | 8日 | 9日 | 10日 | 12日 | 13日 | 15日 |
| 3日 | 121〜168日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 | 9日 | 10日 | 11日 |
| 2日 | 73〜120日 | 3日 | 4日 | 4日 | 5日 | 6日 | 6日 | 7日 |
| 1日 | 48〜72日 | 1日 | 2日 | 2日 | 2日 | 3日 | 3日 | 3日 |
(6)パートタイマーも産前・産後休業の権利は正社員と同じ。育児休業・介護休業は?
会社は、短期間のパートタイマーが産前・産後休業を取得することに必ずしも好意的でなく、そのことを理由に退職を迫ったり、解雇するような事態も多い。しかし、産前六週間、産後八週間の休業は労働基準法で定められている権利であり、この取得を抑制することは許されません。また、労働基準法は、産休中及びその後の30日間は解雇することを禁止し、男女雇用機会均等法は「事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、出産し、又は労働基準法第65条第1項若しくは第2項の規定による休業(注:産休のこと)をしたことを理由として解雇してはならない」としているのです。
育児休業・介護休業についても、期間の定めのない労働契約となっている場合や、実質的に期間の定めのない労働契約とみなされる場合、1年を超える労働契約の場合など一定の要件を満たせば取得可能です。もちろん生後1年に満たない生児を育てる女性に保障されている育児時間制度や、休業しないで勤務しながら介護をする介護勤務制度(短時間勤務の制度や始・終業時刻の繰上げ繰下げの制度など)は利用することができます。
(7)一定の要件を満たせば健康診断も受けられ、労災保険は当然適用されます
雇い入れ時健康診断や定期健康診断を労働者に実施することは、使用者に課せられた義務です。パートタイマーも、@期間の定めのない契約であるか、1年以上使用予定がある者で、かつ、A通常の労働者の4分の3の所定労働時間数のある者はその対象となります。
また、業務遂行や通勤に当たって負傷・疾病・死亡などという事態になったときは、労災保険が当然適用されます。負傷・疾病などで治療するとき健康保険を使えば3割の自己負担となりますが、労災保険の療養補償給付(通勤災害の場合療養給付)を受ければ自己負担なしです。休業せざるを得なかったときも労災保険から給与額の8割が休業補償給付(通勤災害の場合休業給付)・休業特別支給金として支給されます。
(8)パートタイマーと雇用保険
雇用保険の被保険者となる資格は、次のような基準で区分されています。
@一般被保険者:1)一週間の所定労働時間が、同種の業務に従事する労働者の所定労働時間のおおむね4分の3以上であり、かつ、30時間以上であること、2)1年以上引き続き雇用されることが見込まれること
A短時間被保険者:1)一週間の所定労働時間が、通常の労働者の所定労働時間に比し短く、かつ、30時間未満であり20時間以上であること、2)1年以上引き続き雇用されることが見込まれること(雇用期間が1年の場合、3ヶ月等の期間を定めて雇用される場合でも契約更新規定がある場合や更新が見込まれる場合等を含む)
雇用保険の被保険者が失業したとき、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6ヶ月以上あれば基本手当の受給資格があります。賃金日額によってその50%から80%が、最低90日間、最高360日間もらえます。給付日数は、一般被保険者であるか短時間被保険者であるかによって差別はありません。年齢、被保険者期間によって違ってくると同時に、離職理由が自己都合なのか会社都合なのかによっても大きく変わってきます。だから離職時の理由をしっかり確認しておくことが大事です。
(9)健康保険、厚生年金保険の加入資格はどうなっているか
健康保険、厚生年金保険は、自らが被保険者となるべきか、被扶養者であったほうがよいのかという問題があります。勤務先が適用事業所であった場合、おおむね次のような取り扱いになっています。
@パートタイマーで使用される人は、1日または1週間の労働時間及び1箇月の労働日数が同種の労働者のおおむね4分の3以上である場合は被保険者となります(この条件を満たしていない場合も総合的に判断して常用的な雇用関係があると認められる場合は被保険者となります)。
A夫などが被保険者で同居している場合、年収が130万円未満であって、かつ、被保険者の年収の半分以下であれば、被扶養者として認められます(ただし総合的に判断して、被保険者が生計維持の中心的役割を果たしていると認められれば、被扶養者として認められます)。被保険者と別居している場合、年収が130万円未満であって、かつ、被保険者からの援助による収入額より少ない場合は、被扶養者と認められます。
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