◆男女差別


04年1月第9号

住友電工訴訟と間接差別

 年明け早々、大阪高裁で男女賃金差別が争われた住友電工訴訟の和解成立が発表されました。間接差別をめぐる議論に大きな一石を投じるものです。

【「男女コース別採用」が争われた住友電工訴訟】

 この訴訟は、住友電気工業の女性社員2人が「女性であることを理由に昇進などで不当な差別を受けた」として、同社と国を相手に男性との賃金の差額分などの損害賠償を求め、95年に提訴したものです。

 住友電工は「専門職」と「事務職」のコース別採用を導入し、原告の女性社員は「事務職」採用でした。今回の裁判で、原告は、同じ高卒で同期入社男性社員が、3年ほどの実務経験を経て全員「専門職」に転換したのに、女性は試験を受ける機会もなく「事務職」のままにされたことが差別にあたる、と主張しました。

 会社だけでなく国をも被告として訴訟を起こしたのは、男女雇用機会均等法の調停制度の申請を行なったにもかかわらず門前払いされたからです。

【会社は2女性昇格、国は解消策を約束】

 採用段階から男女を別扱いにしていた人事制度の違法性が争点になり、2000年7月の一審・大阪地裁判決は「差別を禁じた憲法の趣旨に反するが、採用時点で公序良俗に反したとはいえない」として原告の請求を退けました。

 これをくつがえした今回の大阪高裁での和解内容は次のとおりです。(1)会社は2女性を昇格(主査から課長級、一般社員から主査へ)させ、1人500万円の解決金を払う、(2)国は、@雇用方法が実質的に性別による管理になっていないか、厚生労働大臣が十分注意を払い必要な施策を推進し、Aまた、男女雇用機会均等法の調停制度を積極的に活用する。

 同高裁の井垣敏生裁判長が「女性が差別されない社会は世界の共通認識だ。直接的な差別だけでなく、間接的な差別に対しても十分な配慮が求められている」と、一審で勝訴した企業や国に強く迫ったことが背景にあります。

【間接差別をめぐる議論に一石】

 “差別する意図がなくても、結果的に差別が生じている”―そんな状況を間接差別といいます。直接、男女別に採用しなくても、職種などに紛れて事実上男女別になる間接差別について、国連の女性差別撤廃委員会は、昨年夏日本政府に、女性差別として国内法で明確に定義づけるよう勧告しました。今回の大阪高裁の和解勧告は、こうした国際社会の動向も念頭に入れたものです。

 日本国内においても、どのような状況が間接差別に当てはまるのか、改正男女雇用機会均等法制定時の国会付帯決議で、その検討が宿題とされてきました。一昨年11月、厚生労働省が男女雇用機会均等政策研究会を立ち上げてから1年間、ようやく突っ込んだ議論が行われてきました。間接差別になりうるものとして同研究会であげられている主なケースは次のようなもの。

(1)世帯主、非世帯主を基準とした処遇の違い。内閣府(委託調査)によれば、企業が住宅手当制度を採用している場合、支給条件を「世帯主」としている企業が6割を超えています。形式上は男女差別的な取扱いではないが、男性が住民票上の世帯主になることが圧倒的に多い実態を踏まえれば、事実上女性を不利益に取扱う結果となりうるというわけです。

(2)コース別雇用管理制度を導入している企業が、「総合職」、「一般職」などに社員を振り分ける際、転勤などができるかどうかを判断基準にしている場合。

(3)パート労働の従事者に女性が多く、かつ正社員に比べると処遇に格差があること。国連委員会も「正規雇用よりも給料が低いパートタイムや派遣労働で女性の比率が高いことを懸念する」と日本政府に勧告しています。

 今年の夏前に予想される研究会報告が注目されます。