09年3月第71号
建設業で不動産業も始めたいが…そのとき、労働保険はどうなる?
Q:建設業を営んでいます。今度定款を変更し、不動産業も始めようと思っていますが、労働保険の扱いと保険料率はどのようになるのでしょうか?
A:労働保険には労災保険と雇用保険があります。通常の事業所の場合は、これらをまとめて申告できますが、建設業の場合は、「二元適用事業」といって、労災保険と雇用保険で別々の保険関係成立届を提出し、二つの労働保険番号をもらうことになります。したがって、保険料の申告に当たっては、労災保険と雇用保険は別々に申告しなければなりません。
ただし、現場とは区別して事務作業だけを行う部門を独立して持っている場合、建設業の労災保険とは別に、事務部門の労災保険の保険関係設立届を出すことができます。通常、建設業の労災保険料率は1000分の15程度となっていますが、この場合は、事務部門の労働保険料率は1000分の4.5となります。ただ、雇用保険料率については、建設現場と事務部門の別に関わらず、建設の事業として1000分の18の料率が一律に適用されます。
ところで、不動産業を新しく始める場合ですが、建設業とは別に、その事業としての保険関係設立届を提出してください。そうすれば、その事業は「一元摘要事業」として労災保険料率は1000分の4.5、雇用保険料率は1000分の15が適用されます。
なお、不動産事業も労働保険番号をもらうので、保険料の申告に当たっては、労働保険番号ごとに4枚の保険料申告書を提出することになります。
08年6月第62号
Q:当社の給与は、月末締め翌月の10日支給です。4月度給与(5月10日支給)から賃上げをしたので7月から標準報酬月額が変更になると思うのですが、社会保険料額の変更は、8月10日支給分からでよいのでしょうか?また、毎年7月1日在職者は標準報酬月額算定届を提出しなければならないと思いますが、これとの関係はどうなるのでしょうか?
A:5月支給分から給与額が改定されたので、5〜7月の3ヵ月間に支給された給与額の平均額で標準報酬月額の変更の有無を判断します(随時改定)。固定的賃金の変動が2等級以上ある場合は、8月分(9月10日支給)の保険料額から変更となります。
一方、毎年7月1日在籍者を対象に行う標準報酬月額算定届の提出(定時決定)は、4〜6月の3ヵ月間に支払われた給与額の平均額で算定され、9月分(10月10日支給)の保険料から新しい保険料額となります。
ですから、5月支給分から賃上げして随時改定を行った場合、「算定届」には氏名等だけで金額は空白とし、備考欄に「8月月変」と記入して、「変更届」といっしょに提出します。
肝心なことは、保険料の発生・控除は給与計算締日とは関係なく、判断基準は以下の2点です。参考にしてください。
@その月の保険料が発生するかどうか?
入社時=月の途中でも1日でも在籍すればその月の保険料は発生する
退職時=末日まで在籍しなければ保険料は発生しない
Aその月の保険料をいつ控除するか?
原 則=翌月支給分の給与(給与計算締日は無関係)
例 外=退職した月の保険料は当月支給分の給与から控除することができる
08年4月第60号
後期高齢者医療制度が4月から開始されましたが会社としての対応は?
Q:4月から後期高齢者医療制度がスタートしましたが、当社には従業員の被扶養者として75歳以上の方がかなりいます。会社として行うべき実務があるでしょうか?
A:いままでは、健康保険被保険者の被扶養者であれば、年齢に関わりなく保険料を払う必要はありませんでした。後期高齢者医療制度では、75歳の誕生日から自動的に同制度の被保険者となり保険料の支払が必要となります。
保険料の納付方法は年金から天引きされる特別徴収と、自身が納付書や口座振替で納付する普通徴収のどちらかになりますが、自治体によって方法が異なる場合があるので役所の窓口で確認する必要があります。
なお、保険料を1年以上滞納した場合には、「被保険者資格証明書」が発行され、窓口でいったん医療費の全額を負担しなければならなくなります。従来の老人医療制度では、健康保険等の被保険者の被扶養者となっていれば、被保険者が保険料を滞納してもこのような全額の負担はありませんでしたので注意が必要です。
会社として一番気を付けなければならないのは以下の点です。被保険者の被扶養者が75歳に達したときは、社会保険事務所や健康保険組合から、該当者に「資格喪失のお知らせ」が届きますので、通常の資格喪失届や被扶養者の異動届に該当者の被保険者証(高齢受給者証の交付を受けているときはこれも)を添付して届け出てください。
なお、今回の改正により健康保険の一般保険料率が、「基本保険料率」と後期高齢者医療制度を支えるための「後期高齢者支援金」等に当てる「特別保険料率」の合算額とされました。当面は従来の保険料率と変わりませんが、今後は変更されてくる可能性があります。
07年12月第56号
入社した月に退社した場合、支払う保険料は厚生年金、国民年金?
Q:10月にある会社に就職しましたが、事情があり10月の半ばに退職し、給与から厚生年金保険料が控除されました。その後就職が決まらず失業給付を受けています。最近、社会保険事務所から10月以降の国民年金保険料の納付書が送られてきました。10月は厚生年金保険料を払っているので、国民年金保険料は払う必要がないと思うのですが…。(M子)
A:ご質問のケースに関する法律上の規定は次のようになっています。国民年金法第11条の2:「同一の月において、二回以上にわたり被保険者の種別に変更があったときは、その月は最後の種別の被保険者であった月とみなす」。厚生年金保険法第19条第2項:「被保険者の資格を取得した月にその資格を喪失したとき(筆者注:「同月得喪」といいます)は、その月を一箇月として被保険者期間に算入する」。
つまり、10月末日においてはすでに退職していますから、「最後の種別」である国民年金の第1号被保険者であった月とみなされます。一方、10月は厚生年金被保険者としての資格を「同月得喪」していますから厚生年金の被保険者でもあったことになります。ですから国民年金保険料と厚生年金保険料の両方を支払わなければならないわけです。もちろん保険料を払えば、それぞれ老齢基礎年金、老齢厚生年金の額に反映します。逆に、10月分の国民年金保険料を払わなければ、国民年金の未納月ということになってしまいます。
なお、失業している場合、国民年金保険料の免除をうけられます。離職票もしくは雇用保険受給資格者証をもって、最寄りの社会保険事務所で全額免除の申請をすることができます。免除されれば、3分の1(近い将来に2分の1となる予定)は老齢基礎年金額に反映します。
07年2月第46号
Q:弊社の従業員が数ヶ月前に定年(60歳・再雇用制度あり)を迎え、賃金規定に則り、再雇用後の賃金を60%に設定して雇用契約を交わし、先日、高年齢雇用継続給付の申請を行いました。すると、本人から「振り込まれた金額が思ったより少ないのだが…」と言われました。高年齢雇用継続基本給付金は60歳以降、賃金が60歳前の75%未満に下がったら、最高15%支給されると聞いており、本人にもそのように伝えたのですが、何か間違っていますでしょうか?ちなみに、定年前の賃金月額は40万円、再雇用後の賃金月額は24万円です。
A:高年齢雇用継続基本給付金は、賃金額が60歳到達日(算定基礎期間が5年に満たない場合は、60歳到達日以降に5年に達した日)を「みなし離職日」として算定した賃金日額に30を乗じて得た額の75%未満になった場合に、支給対象月に算出された賃金額の上限15%が65歳に達するまで支給されます。(詳細はハローワークのホームページを参照して下さい。)
気を付けていただきたいのは、支給額が何の15%なのかということです。支給額は「支給対象月に算出された賃金額(=60歳以降の賃金額)」の15%であって、定年前の賃金月額の15%ではありません。60歳到達日前の賃金の15%だと6万円、再雇用後の賃金の15%だと3万6千円になり、2万円以上の差が出てしまいます。
なお、今回のケースでは、随時改定を待つことなく直ちに社会保険の標準報酬月額を下げられます。忘れずに手続を行いましょう。手続にあたっては、就業規則の定年に関する記載部分の写しが必要です。
07年1月第45号
Q:私傷病で休職中の社員(41歳)が、「体調が回復しないので退職したい」と申し出てきました。退職後でも傷病手当金が支給されると聞いたことがあり、本人がすぐに再就職できる状況ではないので受給を勧めたいのですが。本人は1年以上健康保険に加入しており、標準報酬月額は36万円。休職期間中は就業規則に基づいて給与額の約6割の休職手当が支払われています。
A:まず、退職後に傷病手当金を受けるに当たっては、退職日が無給でなければなりません。したがって、退職日の休職手当は支給しないか、退職日を休職手当支給終了日の翌日にすることが必要です。
この方には@国民健康保険に加入し「資格喪失後の給付」として傷病手当金を受けるか、A健康保険を任意継続するかの2つの方法があります。@とAとでは、以下の点が違いますので、注意が必要です。
T.傷病手当金の日額が違います。@では在職時の等級に基づいて計算されるため7,200円(4月1日からは8,000円)になりますが、Aでは5,598円(4月1日からは6,220円)になってしまいます。なぜかというと、任意継続被保険者の標準報酬月額は、退職時の標準報酬月額と全被保険者の標準報酬月額平均額(28万円)のいずれか少ない額となるためです。
U.健康保険料が違います。国民健康保険料は源泉徴収票があれば、各市区町村のホームページを参考に試算出来ます。Aの場合、この方の場合は26,404円です。
いずれの場合も傷病手当金の日額が3,612円を超えるので、扶養家族にはなれません。また、雇用保険の受給期間を延長することも忘れずに指示して下さい。
06年12月第44号
Q:先日1週間ほど検査入院しました。その間の給料は支払われていません。そのような場合に4日目から傷病手当金の支給が受けられると聞き、申請しようと思い、医師の証明をもらうために病院に行きました。すると、「病名が確定していないから(医師の証明欄を)書けない。」と言われてしまいました。どうすれば良いのでしょうか?
A:「病名が確定していないので…」と言われたとのことですが、受給可能かどうかを決めるのは社会保険庁であって、医師ではありません。
病名は確定していなくても、何らかの病気の疑いがあって検査入院をしたわけですから、医師に「○○(=病名)の疑いあり」と書いてもらい、申請して下さい。
医師の証明欄を書いてくれなかったのは、医師の思い違いの場合もありますが、まれに重病告知を避けるために書かないという場合もあります。
(後日談)結局、この方は奥様から医師に証明欄の記入を依頼したところ、書いてもらえて事なきを得ました。
※傷病手当金は、健康保険の被保険者が病気や怪我等の療養のため欠勤し、給料を受けられない場合に、労務不能となった日から起算して4日目から最長1年半支給されます。支給額は、1日につき標準報酬日額の6割(H19年4月からは3分の2)です。
現在は退職後に任意継続した場合(任意継続被保険者)も受けられますが、平成19年4月1日以降は、以下の条件をすべて満たさないと受けられなくなります。出産手当金についても同様です。
@平成19年3月31日時点で現に傷病(出産)手当金を受けていた (受けられた)こと
A退職日までの加入期間が1年以上あること
06年11月第43号
Q:私は病院に勤務しています。病棟と外来があり、外来職員は月〜金(祝祭日除く)は1日8時間、土曜は半日勤務です。土曜勤務は時間外手当が支払われるべきだと思うのですが、支払われていません。
A:本来、勤務時間が「@1日8時間を超えた場合」「A1日8時間以内であっても、1週間を合計して40時間を超えた場合」は、時間外手当を支払わねばなりません。
病院の外来職員の場合、Aに該当することが多く、就業規則上で何の定めもなければ、時間外手当を支払わねばなりません。実際は1年単位の変形労働時間制を導入し、1年間の所定勤務時間を平均して1週40時間以内になるように勤務日を定めていることが多いです。
質問の場合も、1年単位の変形労働時間制が導入されているため、所定勤務時間を超えない限り時間外手当を支払う必要がないのです。ちなみに病棟職員が2交替制(日勤・夜勤)の場合、通常は夜勤1回を2日分の勤務として取り扱います。しかし法律上は2日分とはみなされず、@により時間外手当を支払わねばなりません。
そこで1ヶ月単位の変形労働時間制を導入し、1ヶ月の所定勤務時間が法定労働時間を超えないようにしているのです。
事業主にとって都合が良いような気がする変形労働時間制ですが、時間外労働の上限時間数が、導入しない場合より少ないこと、所定勤務時間の上限を1日10時間以内、1週48時間超52時間以内の週を年3回以内に抑えねばならないこと(共に1年単位)は案外知られていません。それぞれの事業場にあった労働時間制を検討した上で導入することをお勧めいたします。
06年10月第42号
Q:弊社のパート社員が、「働きすぎると主人の扶養家族から外れるから、年収103万円以内に調整しなければ。」と言っていました。しかし、別のパート社員は103万円ではなく130万円と言っていました。この差はどういうことなのでしょうか?
A:税法上では、年収103万円以下であれば、扶養親族として認められ、夫は配偶者控除(一律38万円)を受けられます。また、年収103万円超141万円未満であれば、夫は配偶者特別控除が受けられます。(控除額は妻の収入に応じて変わります。)
一方、社会保険上では、年収130万円未満であれば被扶養者として認定され、健康保険料・国民年金の支払いが不要になります。ただし、年収が130万円未満であっても勤務時間が正社員の4分の3以上の場合や、夫の年収の半分以上である場合は、社会保険に加入もしくは自分で国民年金・国民健康保険に加入し保険料を支払わねばなりません。
さらに、夫の会社で家族手当がどのような基準で支給されているのかという問題もあります。年収103万円以下の場合に支給する会社が多いようですが、実際は会社によって異なります。(支給のない会社もあります。)
以上の理由で、パート社員個々の事情により103万円以内に調整する人もいれば、130万円までは大丈夫という人もいるのです。
それにしても、一口に扶養と言っても色々な基準があって複雑です。これに住民税の話も加わると、さらに複雑になってしまいます。ただ、その基準に合わせて働き方を変え、意に添わない働き方をするのはいかがなものかと思います。
06年9月第41号
Q:先日、弊社を退職して健康保険(政府管掌)を任意継続した元女性社員から、「傷病手当金と出産手当金が支給されなくなる」と聞いたのですが。
A:その通りです。さらに、現在は退職して半年以内に出産すると出産手当金が支給されていますが、それも廃止されます。ただし、支給廃止は来年4月からで、出産育児一時金については現在同様支給されます。
一方で傷病手当金・出産手当金の1日あたりの給付額は、来年4月から少しながら増額(60/100 → 2/3)されます。
というのも、傷病手当金や出産手当金は、傷病または出産のため労務に服すことができなかった者に対する所得保障という性格を有するものだからです。厳しい医療保険財政の下で、給付の本来の目的を踏まえた上で、少子化に対応する給付の充実を図り、同時に給付の見直しと重点化を行うため、廃止が決まったようです。
この他に来月から実施される変更として、@出産育児一時金が1児につき5万円増額、A埋葬料(被保険者本人・家族とも)が一律5万円になる、などがあります。
さて、今までは在職時の健康保険の標準報酬等級が59万円以上の人については、従来会社負担分を自己負担しても保険料が在職時より安くなること、傷病手当金や出産手当金(女性のみ)がもらえること、扶養家族分の保険料が無料であることから、健康保険の任意継続を勧めることが多かったと思います。
しかし、来年4月からの支給廃止を受けて、任意継続した場合の保険料と、国民健康保険料のどちらが安いかをよく調べた上でのアドバイスが必要になるでしょう。
(国民健康保険料の計算方法については、各市区町村のホームページから調べることができます。)
06年8月第40号
Q:先日、算定基礎届を提出したところ、社会保険事務所より「従業員のAさんについて月額変更届を提出して下さい。」と言われたのですが、どういうことでしょうか?
A:算定基礎届は「定時決定」、月額変更届は「随時改定」の仕組みに基づいて提出する書類です。「定時決定」とは、毎年4〜6月に支払われた給与の金額を平均して毎年7月に標準報酬月額を決定し、その年の9月分から翌年8月分までの保険料の計算に適用します。
「随時改定」とは、@給料の固定額部分に変動があった。A変動があった月から連続した3ヶ月間に支払われた給与の平均額に相当する等級に、従前と比較して2等級以上の差が生じた。BAの連続した3ヶ月のいずれの月も「支払基礎日数」が17日以上であった。という3つの条件をすべて満たしている際に行われます。
変動があった月から数えて4ヶ月目から改定され、1〜6月に改定の場合は同年8月分まで、7〜12月に改定の場合は翌年8月分までの保険料の計算に適用します。
「支払基礎日数」とは、給料計算の対象となる日数のことです。月給制の場合は暦日、日給・時給制の場合は実際の出勤日数のことを指しますが、月給制で欠勤控除があった場合は、その事業所の1ヶ月の所定出勤日数から欠勤日数を控除した日数になります。
貴社では、Aさんが随時改定の要件をすべて満たしているため、提出を求められたと思われます。
随時改定についてですが、以下のような場合も該当する可能性がありますので、ご注意下さい。該当する場合は月額変更届の提出をお忘れなく。
1.金額を定めて支給されている諸手当の変動
2.日給・時給の変動
3.勤務条件の変更
4.雇用形態の変更(パート・アルバイト⇔正社員など)