05年12月から、「全国商工新聞」(発行:全国商工団体連合会)の相談コーナーに月1回程度のペースで当事務所の金井が記事を寄せてきたものを事務所ニュース用に補筆したものです。
その1 クリーニング店もマーケティング!?(06年7月号)
Q:クリーニング店を経営しています。マーケティングが大切だといわれますが、中小零細業者でも必要でしょうか。
A:「利益=売上−経費」ですから、安定的な利益を確保するには、経費を抑えて売上を増やすしかありません。マーケティングとは、そのための視点や方法のことです。ですから、マーケティングというと、なんだか大企業がやるちょっと難しい仕事だと思いがちですが、そうではなく、いわば、“商売上手になるための工夫”と考えてもいいでしょう。それは、経営規模の大小や業種にかかわりなく、事業にとって大切な問題です。
【お客様の立場に立って考える】
どんな業種や経営規模でも、お客様に商品(サービス)を買ってもらわなければ商売は成り立ちません。まずは、お客様が何を欲しがっているのか、お客様の立場に立って考えることが大切です。
実はこうした視点は、高度成長の時代やバブルの時代には、あまり問題にされませんでした。いわば「作れば(仕入れをすれば)売れる」時代だったのです。しかし今日では、売り手の側がこんな態度では、どんな大企業でも衰退してしまいます。
【ダイエーの教訓】
戦後、スーパーマーケットの雄として君臨してきたダイエーが、経営破たんに追い込まれ、いま新しい経営陣のもとで再建にとりくんでいます。ダイエーが業績を伸ばしてきた時代は、いわば「何でも売れた」(ちょっと乱暴な言い方ですが)時代だったのです。だからダイエーは、全国に巨大店舗網を広げ、食料品だけでなく家電や衣料品をはじめ売れるものなら何でも扱ってきました。
先日、ダイエーの新しい経営陣から話を聞く機会がありましたが、再建のために大規模なお客様アンケートを実施したところ、日ごろの買い物は「一番近いお店」だが、「消費者のことを大切にしてくれる親身なお店が欲しい」という回答が一番多かったそうです。そして、「お客様や、お客様と最も直接的に接点がある(パートを含めた)従業員の声を十分に聞いてこなかったことが、破たんの一因だった」と述べていました。これは、大企業だけの問題ではなく、中小零細業者もふくめてすべての業種の教訓だと思います。
お客様がどんな商品をどんな価格で求めているのか、はもちろん、プラスαとしてどんなサービスを付け加えたら喜んでもらえるのか、こうした売り手の側の研究心こそが、何よりも大切なマーケティングの基礎なのです。
【既存顧客=お得意さんを大切に】
もう一つ。既存顧客を大切にするという問題です。売上増大のためには、新規顧客の開拓も大切ですが、既存顧客によりいっそう利用してもらえるような工夫をするほうが、経費や労力、失敗の確率などから見ても賢明です。ある調査によると、「新規顧客を獲得するには、既存顧客を維持するよりも5倍のエネルギーを必要とする」とのこと。
まずは、できることから。昨日よりは今日、今日よりは明日、という日々の一歩前進の努力と工夫こそが、大切ではないでしょうか。
その2 新しい視点で売上アップを図ろう!(06年8月号)
Q:印刷業を営んでいます。売上が10年前の3分の2に落ち込んでしまい、経営が厳しい状況です。
A: 中小零細の印刷業界では、軒並み厳しい経営状況です。パソコンやコピー機の高性能化と普及により、企業などで印刷物の多くを内製にする傾向が強まっていることが最大の原因と考えられます。そのため、中小零細業者の市場だった小ロットの印刷物市場にも大手印刷会社がどんどん参入し、競争激化のもと、受注量減だけでなく単価切り下げなどの悪循環となっています。
【自社の「強み」を生かそう】
業種を問わず、中小零細企業が大手と同じ土俵で勝負しようとしても、「体力負け」は必定です。肝心なのは、同じ土俵で勝負しないこと。自分の得意とする分野や市場を見つけることです。たとえば「親身に相談に乗り、小回りの利く町の印刷屋さん」「企画・デザインならお任せ!」など、まずは自社の「強み」を自覚し、アピールしてみましょう。
【「団塊の世代」の大量定年であらたな需要も】
売上アップでとくに注目したいのは、「団塊の世代」が大量に定年を迎えるもとで、あらたな印刷需要も高まりつつあることです。様々な趣味や特技を生かした定年後の新しいライフスタイルやライフワークを模索する動きが活発化し、地域の公民館や文化センターなどでは、俳句や短歌の会、自分史をつづる会、史跡散策会などのサークルが数多く作られています。そして、「自分の歌集を作りたい」「自分史を本にして知人に配りたい」など、成果を形にすることへの要望も増えています。中小零細の印刷業者がこうした活動を支援することは、地域活性化に貢献するとともに自身の経営の新しい発展にもつながるでしょう。
また、これらの年代には、かなりの水準でパソコンを使いこなせる人はもちろん、これから身につけたいという人も少なくありません。たとえば「企画・デザイン作成のプロ」として、手作りの印刷物作成への助言や援助なども進め、そのなかから新たな需要を引き出すことも大切です。
【同業者同士の連携も】
中小零細業者の場合、一社では大手に敵いませんが、力を合わせ連携すれば、大手並みの能力を有することも可能です。それぞれの得意分野をもちよって、一つのパッケージとしてサービスを提供することで、需要者の安心と信頼も高まるでしょう。
そして、何よりも「待ち」ではなく「攻め」の姿勢で、積極的に広告宣伝や営業に挑戦しましょう。
その3 自分なりの事業計画書で資金調達を(06年9月号)
Q:若い女性向け衣料品の企画・製造・卸をしようと昨秋創業しました。資金調達のために銀行へ申し込みに行ったら、「事業計画書」を作成するようにいわれましたが、どのように書いたらよいのでしょう。
A:銀行では最近、融資の際に従来以上に事業計画書を重視しています。以前は不動産担保一辺倒だったことと比べて、大きな変化です。
【形式は問わない。事業への真剣さを示す】
事業計画書は、自治体の制度融資などの場合、規定のフォーマットが用意されていることも少なくありませんが、通常は決められた形式はありません。むしろ、自分なりに事業計画書を作成して提出した方が、「事業に対する真剣さ」を評価され、好印象を得ることができます。力点としては、製品やサービスの魅力、市場の魅力や事業の成長性、事業の確実性などがあげられますが、金融機関からの借入等で作成する事業計画書の場合、とくに事業の確実性が説得力を持って述べられていることが大切です。金融機関の側から見れば、貸したお金が確実に返ってくるかが、一番の関心事だからです。
【伝えたいことを整理して】
さて、その内容ですが、書くべき主な事項に沿って留意点をあげてみましょう。
第一に事業概要です。会社概要や事業の特徴、会社と事業の将来像などを書きます。とくに創業したばかりの場合は、所属する業界の特徴や課題が鮮明にされており、それに対して当該事業がどのような対策案を持ち、利益を上げていくのかが述べられていると良いでしょう。
第二に扱う製品やサービスについてです。たとえば、既存製品や競合製品に対してどんな優位性や特徴を持っているのか、今後の研究開発課題があるのかどうか、などを整理しましょう。
第三は市場の可能性。その製品をどのような顧客に販売するのか、需要はどの程度あるのか、今後その市場は成長するのかどうか、などです。
そして最後に資金・財務計画です。売上見込みとそれに必要な資金予想、どの時期に利益が発生するのか、それまでにどれだけの資金が必要なのか、その資金のうち自己調達できる資金はどれほどあるのかなどを、当面する月々の試算表と3年後〜5年後の計画があると良いでしょう。
こうして、はじめて計画書が説得ある内容になり、いくらの融資が必要なのかを金融機関に伝えることができるのです。ただし、創業向け融資の場合、通常は自己調達した資金額が融資額の上限となります。
その4 「誰にも好かれたい」の気持ちをグッと抑えて(06年10月号)
Q:居酒屋を営んでいます。売上アップのためにあの手この手と工夫をしているのですが、なかなかうまくいきません。
A:
【「誰にでも好かれたい」は、結局「誰にも好かれない」】
居酒屋のみならず、経営の盲点の一つに「誰にでも好かれたい」「みんなに利用して(買って)欲しい」という売り手側の気持ちがあります。こうした気持ちは、人生にとってはけっして悪いことではありませんが、こと“経営”という問題においては危険です。買い手(利用者)の側から見ると、中途半端で八方美人なお店に映ってしまうからです。
買い手は、けっして一様ではありません。職業や年齢、所得、趣味や嗜好などさまざまです。たとえば、「安くて友人たちとワイワイガヤガヤ騒げるお店」が良いと思う人たちがいる反面、「一日の疲れをゆっくりと癒したい」と思って暖簾をくぐる人もいます。また、アットホームな雰囲気を求めている人もいれば、「美味しい肴でじっくり飲りたい」とか、「他では飲めない希少なお酒を」というお客さんもいます。
こんな人たちが、同じお店に席を並べることはほとんど不可能です。だとすれば、「誰にでも好かれたい」というお店は、結局「誰にも好かれない」お店になってしまいます。
【お店の「売り」をはっきり示す】
大切なのは、「誰にでも好かれたい」という気持ちを持ちつつも、どんなお客さんを対象にするかを明確にして、お店の「売り」を作っていくことです。それは、お店の雰囲気であり、メニューであり、接客のあり方であり、価格でもあります。
そのためには、立地条件や経営者の得意・不得意なども当然考慮しなければなりません。“こんなお店にしよう”というコンセプトをはっきりさせて、伸ばすべきは伸ばし、改めるべきは改めていく、そういう姿勢と努力が大切です。
こうしてこそ、常連のお客さんにはより居心地よく、かつ「友人にも紹介してあげたい」お店に、フリーや一見のお客さんには「もう一度来たい」お店に変身することができるのです。そうすれば、「誰にでも」とはいかないまでも、お客さんに「好かれる」お店として、売上はかならず「後から着いて来る」でしょう。
その5 「税金滞納=借り入れは無理」は早計手を尽くして道を拓こう(06年11月号)
Q:運転資金の確保で融資を受けたいと考えていたのですが、税金の滞納があったために承認されませんでした。銀行からの借入は不可能なのでしょうか。
A:一般的に、銀行や信用保証協会では、融資実行のための判断資料として融資申込みの際に納税証明書の添付を要求します。税金を滞納している場合、納税証明書が発行されませんから、融資を受けるのは難しくなります。
【貸す側の論理は、借りる側の論理と違う】
銀行や保証協会の側からすれば、“税金滞納”という実態は、「せっかく実行した融資が、納税資金に回ってしまい、運転資金としての本来の目的に活用されないのではないか」という疑念や「税金も支払えないような経営状態なのに、融資を受けても返せるのか」という信用不安を想起させる材料となるからです。
【納付誓約書や受託証書を提出すれば】
しかし、「だから借入は不可能だ」と諦めるのは早計です。税務署との間で納税についての意思が確認され、分割等納税方法についての合意がなされ、納付誓約書や受託証書が交わされているならば、それらが融資実行のための判断資料として採用されます。銀行や保証協会は、「経営は厳しいが、まじめな事業者だ」と判断してくれます。
実際、税金の滞納で苦労してきた東京のあるクリーニング業者は、税務署と交渉して分割納税の合意をとり、受託証書を発行してもらって、ある信用金庫から融資を受けています。
【事業計画書も融資獲得の大切な書類】
また、「いまは、税金も支払えないような厳しい経営状態だが、こうやって経営を立て直し、事業を軌道に乗せていくつもりである」という事業改善計画を作成して、融資申し込みの際に、必要書類とともに提出することは、銀行や保証協会が融資実行を判断する上で、最も大切な材料となります。ある信用金庫の幹部も、「ただ『お金が足りないから貸してくれ』といわれても、返してもらえる保証のないお金は貸せない」、「計画書をみれば、経営者がどれだけ自分の事業に責任と展望を持っているかがわかり、融資の判断もしやすい」と述べています。
こうして必要な書類を準備したら、融資獲得の秘訣は、諦めない情熱を持った交渉です。
その6 クレーム対応=マニュアルに頼りすぎず、顧客満足獲得の大切な場として(06年12月号)
Q:お客様からのクレームに対して、従業員に対応のばらつきがあり、困っています。マニュアルを作成したいと思うのですが…。(クリーニング業)
A:クリーニング業は「クレーム業」といわれるほど、クレームの多い業種です。一方で、大手チェーン店がどんどん進出し、低価格競争を煽っています。それだけに、お客様からのクレームにどう対応するかは、商売の浮沈にかかわる重大問題でもあります。マニュアルをつくるのも、一つの方法でしょう。ただし、あまりマニュアルに頼りすぎないことが大切です。
【クレームをただの「苦情」と見ないこと】
マニュアルをつくって、何でもそのとおりに対応させればよいというものではありません。逆に、お客様に「誠実さが感じられない対応」と映り、不快感を与えることになりかねません。
大切なことは、クレームをただの「苦情」とか、嫌なもの、マイナスで余計なものとしてだけとらえるのではなく、お客様の生の声、社会の傾向としての積極的な意味としてとらえる、自分の会社や事業の質を高めるための貴重な情報源として活用することです。
【クレーム対応を通してお客様に満足してもらう】
それだけではありません。クレーム対応に成功すれば、それを通してお客様からよりよい評価を得られ、満足してもらうことで、より深いお付き合いをしてもらえることになるでしょう。クレーム対応は、技術の問題ではなく、お客様に対する心構えの問題です。
【基本を踏まえつつ、画一的でないマニュアルを】
こうしたことを十分考慮したうえでマニュアルをつくり、その観点を従業員にわかってもらうための教育を進めましょう。
クレーム対応のための手順の基本を以下にあげておきますので、参考にしてください。
@身構えず、お客様を感謝の気持ちで迎える、Aクレームの内容をよく聞く(お客様が話をしている途中で口出しをしたり反論したりしない)、B客観的事実にもとづいてふさわしい対応策を提示する、Cお客様の納得を得る(お客様の納得が一番肝心)、Dクレームを寄せていただいたことに感謝する気持ちでお客様を見送る。
お客様は千差万別ですから対応の仕方も画一的でなく、「臨機応変」が基本です。
その7 新商品の開発や新事業開始に活用できる制度=「経営革新計画」(07年1月号)
Q:地元の農家と提携して、こだわりの豆腐を販売しようと考えています。ついでに新たな商品も開発したいと思っているのですが、活用できる制度はありませんか。(○○県・豆腐店)
A:一昨年成立した中小企業新事業活動促進法では、それまでの施策を引き継ぎ、「経営革新計画」を作成して、都道府県等に承認された中小企業にたいして、さまざまな優遇措置を行う旨が盛り込まれています。これらの制度を活用して、事業発展に果敢にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
【「経営革新」とは】
この法律では、「経営革新」とは「事業者が新事業活動を行うことにより、その経営の相当程度の向上を図ること」であると定義しています。そして、「新事業活動」として@新商品の開発または生産、A新役務(サービス)の開発または提供、B商品の新たな生産または販売の方式の導入、C役務の新たな提供の方式の導入その他の新たな事業活動、の4つを示唆しています。
また、「経営の相当程度の向上」とは、@「付加価値額」または「一人当たりの付加価値額」の伸び率がおおむね3年〜5年で9%〜15%以上、A「経常利益率」の伸び率が3年〜5年で3%〜5%以上、それぞれ向上することをいいます。
【承認されるとさまざまな優遇措置が】
計画が承認されると、次のような優遇措置を受けることができます。
@税の優遇措置
計画に沿って設備投資を行った場合、取得価額の7%の税額控除(リースの場合は費用総額の4.2%)、または、通常の減価償却費とは別枠で取得年度に取得価額の30%の特別償却が利用できます。
同族会社に対する留保金課税制度が停止されます。
A保証・融資の優遇措置
信用保証協会の保証枠の特例が受けられます。政府系金融機関による低利子融資制度を利用できます。その他にも、高度化融資制度や小規模企業設備資金貸付制度の特例なども適用されます。
Bその他
中小企業投資育成会社からの投資やベンチャーファンドからの投資にも有利です。また、各都道府県で実施する補助金制度を利用する際にも有利です。
そして何よりも、公的機関から認められた計画であるという「肩書き」を得ることは、その事業の発展にとって最大のプラスになるのではないでしょうか。
申請は、通常、各都道府県の担当窓口で行っています。また、承認後のフォローアップも行っています。気軽に問い合わせてみるとよいでしょう。
その8 「借入しかない」と思い込む前にあらためて検討すべきことがあります(07年2月号)
Q:新しい取引先を開拓するなどの努力もあって、ようやく売上や利益も増えてきたのですが、資金繰りが以前よりたいへんになったような気がします。
A:事業をされている方なら、「売上」や「利益」などの数字と、日々追われている資金繰りとは、まったくの別物であることは、常々実感されていることでしょう。
■売上が増えても資金繰りは改善されない■
「売上が増えたら、資金繰りがより厳しくなった」と、よく耳にしますが、売上増にともなって仕入や人件費などの費用も増大するからです。とくに仕入のための費用は、通常、売上が発生する前に必要となる資金であり、毎月の売上が増加傾向にあるならば、それに応じて仕入に必要な資金も毎月増大することになります。まして、予定していた売上を達成できずに在庫を抱えることになれば、資金繰りはさらに厳しくならざるをえません。
売上が増大している局面では、それを支える費用も増大することをつねに念頭において、資金管理をする必要があるのです。
■「掛け取引」や「手形取引」は資金管理が複雑■
また、「月末締め、翌月末払い」などの「掛け取引」の場合、実際の取引と資金の出入りとの間に時間的な隔たりが生じますから、資金管理が複雑になり注意が必要です。また日本特有の商慣行である「手形取引」の場合は、資金の流れをさらに複雑にするとともに、リスクも増大しますから(できれば使わない方がよい)、厳密な資金管理が必要となります。
自分の会社や事業の会計記帳を会計事務所などに依頼している場合も少なくありませんが、個人事業や小規模の会社の場合、経営者自らが資金繰り表を作って資金管理を行なうことが大切です。
■「回収は早く、支払は遅く」が資金繰りの基本■
資金繰りを改善するための具体的な手立ては、そんなに多くはありませんが、「借入しかない」と判断する前に、あらためて検討すべきことがあります。それは、資金の「出」と「入」のタイミングに無理や矛盾をなくすことで、その基本は「回収は早く、支払は遅く」です。平均回収サイト(売り上げてから実際に現金を得るまでの期間)よりも、平均支払サイト(請求書を受け取ってから実際に現金を支払うまでの期間)が短い場合、資金繰りが苦しくなり、支払のための借入や手形割引などに頼らざるを得ないというのはよく聞く話です。
「月々の数字は悪くないのに、いつも資金繰りが大変」と悩んでいたある建設業者は、取引先と交渉して、「月末締め、翌々月7日払い」という条件を「月末締め、翌月末払い」に改善し、「資金繰りがすごく楽になった」と喜んでいますが、こうした努力も経営者の大切な仕事です。
その9 「アウトソーシング」業務を見極め、慎重な判断を(07年3月号)
Q:経費削減のために、アウトソーシングを検討していますが、どのように考えたらよいのか視点を教えてください。
A:近年、業務委託や外注のことを一般に「アウトソーシング」と呼んでいます。
【狙いは固定費の削減と変動費化】
アウトソーシングの目的は、「経費削減」が一般的です。とくに、「固定費の変動費化」が喧伝され、アウトソーシングという言葉も注目されるようになりました。固定費とは、人件費や地代家賃のように、一たび決まれば、売上に左右されずに毎月確実にかかる経費です。たとえば人件費は、売上がどうあれ、ほぼ毎月決まった額(残業の多寡等で多少の変動はあるが)が支払われます。
アウトソーシングとは、ある業務または工程を外部に委託することで、それにかかる人件費等の固定費を削減し、月々の売上高や仕事量に応じて増減する経費(変動費)にすることを大きな狙いとしているのです。
【経営者や従業員が本業に専念する】
本来「アウトソーシング」には、従来の単なる業務委託や外注とは違う、重要な考え方が背景にあります。それは、限られた経営資源(人、物、金)をなるべく分散させずに、本業に集中するというものです。つまり、経営上必要ではあるがあまり重点とはいえない業務については、なるべく経費を切り詰めて経営資源に余裕をつくり出し、それを競合する同業他社に対する優位性や顧客からの強い支持を獲得するための独自能力や技術の開発・確立に効果的に使おうという考え方です。
中小企業やとりわけ小規模経営の場合、経営者や従業員が本業に専念できる時間や条件をどう確保するかは、非常に大切です。
たとえば製造業において、事務作業などの必要だが本業ではない業務に手をとられるようなことがあるとすれば、経営資源の効率的な配置という観点から改善を検討してみても良いでしょう。また、一部の工程を内製から外部委託に切り替えることで、従来その工程に従事していた従業員を他工程に再配置して効率化をすすめ、売上全体のアップを図るということも考えられるでしょう。
【業務の見極めが大事】
ただし最近、少なくない大企業で、外部委託をどんどん進めてきた結果、「史上最高益」を達成した一方で、従来保有していた技術やノウハウさえ喪失し、その再構築が深刻な経営課題になっていることも見逃せません。
大切なことは、事業全体を中長期的に展望して、外部委託すべき業務としてはいけない業務をきちんと見極めることです。
その10 今がチャンス!入念な準備で単価交渉に臨もう!(07年4月号)
Q:鉄工所を経営しています。多少、景気が上向きになってきたおかげで、仕事は増えているんですが、材料費の高騰で利益が出ません。このままでは人件費もままならない状況です。
A:■単価交渉は今がチャンス■
この数年、原油高や金属などの材料費の高騰で、多くの下請業者が同じような悩みを抱えています。一方、大手企業は、こうした原材料の高騰をもビジネスチャンスととらえて、「史上最大の利益」捻出のテコとして活用しているようです。
こうした中で下請業者の経営改善策として、元請業者に対して単価交渉を求めることも有効です。とくに、景気上昇を受けて「史上最高益達成」や「大量採用」に沸く多くの大手元請企業には、下請業者からの「単価引上げ」の要望にこたえる十分な体力が客観的に存在していることを考えると、単価交渉は今がチャンスとも言えるでしょう。
■交渉の前に入念な準備を■
ただし、チャンスだからといって、ただ「このままではやっていけない」「とにかく値上げを」と訴えるだけでは、交渉は成功しません。敵を知り己を知れば…です。あわてずに、入念な準備をして交渉に臨みましょう。
現状の条件はどうなっているのか、原材料の仕入単価がどのくらい高騰しそれによって原価率がどれくらい悪化しているのか、など具体的な数字でよく整理し、交渉の資料として提出できるようにしておくことが大切です。
また、こうした経営環境の悪化に対して、自社内でどのような努力をしてきたのか、についても示すことができると、交渉には大変有利になります。
■交渉は初めが肝心■
交渉で気をつけたいことは、「下請は立場が弱い」と決め込んで、あらかじめ落ち着きそうな単価を想定して、はじめから譲歩した提案をしないことです。実際に落ち着く線(単価)は、元請業者との何度かのキャッチボールの後の結果として決まるものであることを念頭において、下請の立場から堂々と提案することが肝心です。そうでなければ、交渉前の準備でせっかくはじき出した数値資料の根拠や信憑性が疑われてしまいます。
相手(元請)側は、こうして提出された資料や提案内容を吟味し、相手側なりの回答を用意するでしょうし、それにたいして合意に向けて再度こちら(下請)側から再提案をする、こうした数度の交渉を繰り返しながら、新しい取引条件が決められていくようにすることが大切です。
また、交渉はけんか腰ではなく、お互いの立場を理解しあうという態度で臨むなら、その後のより深い取引関係に発展するきっかけになる可能性も生まれてきます。
その11 4月改定の中小企業組合制度― 正確な対応で積極活用を ―(07年5月号)
今日、多くの個人事業主や中小法人が、同業者や地域の事業主同士で組合を結成し、共存共栄のための活動をしていますが、今年4月から中小企業組合制度が変わり、注意が必要です。おもな特徴は、@組合の運営に関するルールを全面的に見直し、昨年施行された会社法との整合性を図る、A共済事業の健全性を確保するために新たな制度を導入する、ことですが、その概略を紹介します。
【役員任期の変更】
従来、「3年以内で定款で定める期間」となっていた理事の任期が、「2年以内…」に変更されました。一方、監事の任期については、従来の「3年以内…」から、「4年以内…」に延長されます。
【理事による利益相反取引が制限】
これまで理事が組合と契約する場合のみ理事会の承認が必要とされていましたが、今後は、「組合と取引しようとするとき」「組合が理事の債務を保証する等組合と理事の利益が相反する行為をしようとするとき」に理事会の承認が必要となり、取引後に重要な事実を理事会に報告しなければなりません。
【監事・組合員の権限の拡大】
これまで監事は、会計監査のみを行なうこととされていましたが、今後は、業務監査も行なうこととされます。ただし、組合員が1千名以下の場合は、定款で定めれば、これまでどおり会計監査のみを行なうことも可能です。
また、監事の権限を会計監査のみに限定する組合においては、理事会の招集請求権の付与をはじめ、組合員の権限が強化されることになります。
【決算書類等に関する手続の明確化】
これまでは決算関係書類は、通常総会の1週間前までに監事に提出し、同じく1週間前までに主たる事務所に備え置く、とされていました。しかし今後は、@決算書類および事業報告書は、監事の監査を受けた上で理事会の承認を受けなければならない、A理事会の承認を受けた決算書類および事業報告書を通常総会の通知とともに組合員に提供しなければならない、B通常総会の2週間前までに決算書類および事業報告書を主たる事務所および従たる事務所に備え置かなければならない、となりました。
また、会計帳簿は、10年間の保存が義務付けられています。
【共済事業についての新しい制度の導入】
組合員が1千名以下の場合、@新たに行政の許可が必要、A共済事業とそれ以外の事業を兼業する場合は、区別して経理する、B共済金支払に充当するための準備金の積立て義務、C共済計理人の関与義務、などが新たな制度として導入されました。また、組合員が1千名を超える組合では、共済事業と他の事業を兼業することが、原則禁止になります。
実際の運用に際しては、直接各都道府県の中小企業団体中央会等に問合せ、改定された制度に正確に対応することが大切です。
その12 「できる社員」の「できる秘訣」を全社員のものに―(07年6月号)
Q:業績や業務水準向上のために、社外で開催されるセミナーなどを活用していますが、あまり効果があるように思えません。
A:多くの会社や事業所で、業務水準の向上を目指して社員教育が行なわれています。
とくに、金融機関や業界団体など社外で企画・開催される各種セミナーなどは、他社の経験や理論を学べ、業務水準の向上を図るきっかけになります。
【「宝の山」は、自分の足下に】
しかし、それらセミナーのすべてが社内で直面している課題の解決や業務水準向上に、即効果が期待できるとは限りません。自社の実態に合わないノウハウや理論に振り回されて、失敗する例も見聞きします。
ところが、こうした会社の内部にこそ、課題解決のカギが眠っていたりするものなのです。「となりの芝生は青く見える」とは、よく言われる格言ですが、案外「宝の山」の上に自分が立っていたりします。あらためて社内を見回してみましょう。
【「できる秘訣」を具体的事例で誰にもわかるように】
すると、磨けば光る玉が見つかるはずです。どんな会社でも、すべての社員が「ダメ」などということはありません(だとすれば、すでに倒産しています)。
ある分野ですばらしい力を持ち、成果をあげている社員がいませんか?ところが多くの場合、こうした社員のすばらしい力やノウハウが、会社全体のものになっていないことが多いのです。「できる社員」の「できる秘訣」を分かりやすくまとめ、社内に広めることができたら、わざわざ他社の経験や社外のセミナーで得たものを自社風に加工するなどと回りくどいことをしなくても済むではありませんか。
取引先との交渉はAさん、ていねいで正確な実務はBさん、Cさんはお客様から好かれているなど、社内の「できる社員」を発見して、なぜ他の社員と違うのか、なぜ彼らは「できる」のか、その秘訣を聞き出したり、見つけ出してみてはいかがでしょう。
それを自社の具体的な業務や事例にもとづいて普及すれば、社員の理解も進みます。こうしたとりくみを“コンピテンシー”と呼んでいます。
【会社の幸せと社員の幸せの連鎖への理解が前提】
ただし、このとりくみを進めるためには、社員の意欲に留意することが大切です。
どんなに良い手法やノウハウが社内にあっても、社員にそれを学び、自ら水準を向上させようという意欲がなければ、普及・浸透は困難です。
また、それを強制的に注入しようとしても形だけのものとなり、「できる社員」がもっている心構えや意欲は伝わりません。「秘訣」は案外、心構えや意欲と隣り合わせなものなのです。
中小企業の場合、会社の業績と社員の生活の距離は近く、比較的会社への帰属意識が高いという特徴がありますから、業務水準の向上が、会社の利益をアップさせ、それが自らの生活を豊かにする、また自らの能力や人間的成長につながっている、という連鎖的な関係を理解してもらい、それにふさわしい処遇を保証すれば、成功の可能性が広がります。
人材は、中小企業経営のキーワードの一つですが、この人材を本当に活かした経営に挑戦してみてはいかがでしょうか。
その13 「セーフティネット」保証制度を活用して資金調達の道を拓く(07年7月号)
Q:長年酒屋を営んできましたが、ディスカウント店の進出などで、売上が落ち込み、資金繰りが厳しくなっています。信用保証協会の保証限度枠に余裕も無く、融資を受けるのも難しいのではないかと困っています。
A:「景気が良い」といわれますが、中小企業ではその実感が薄く、業種によっては、むしろ厳しさを増しているのが実態です。
【「業況の悪化している業種」への特別な保証】
こうした厳しい経営状況におかれている中小企業への支援策として、「セーフティネット保証制度」が設けられています。この制度は、1号から8号まであり、その5号では「業況の悪化している業種」に属する中小企業者に対して、「保証限度額の別枠」で信用保証協会の保証を与えるとしています。
具体的には、政府が作成する「業況が悪化している業種」の指定リストに該当する中小企業者であること。この指定リストは、適宜更新され現在旅館・ホテル業など、約80業種が指定されています。酒小売業も入っています。
【最近3ヶ月の売上高が前年同期比5%以上悪化していること】
同時に、最近3ヶ月の平均売上高が前年同期比で5%以上落ち込んでいることが条件となります。取引台帳や契約書類、試算表など、その事実を証明できる資料を用意しておくと、認定の際に有効です。
また、指定リストに掲載されている業種を営む中小企業者で、原油などの仕入が原価の20%以上を占めており、原油価格の上昇を製品価格に転嫁できない場合も対象になります。
【市町村で認定してもらい、金融機関へ】
手続は、本店(個人事業主の場合は主たる事業所)所在地の市町村の商工担当課等の窓口に認定申請書を提出して認定を受け、それを希望する金融機関か所在地の信用保証協会に持参して、保証付き融資を申し込みます。
この制度の保証料率は、おおむね1%以内の低率で、保証協会や制度ごとに定められています。また、保証限度額は、一般保証の限度額とは別枠で普通保証2億円以内、無担保保証8千万円以内、無担保無保証人保証1250万円以内と定められています。
【同制度を活用する場合のその他の条件】
「セーフティネット」保証制度には、このほかに、1号:連鎖倒産防止、2号:取引先企業のリストラ等の事業活動の制限、3号:突発的災害(事故等)、4号:突発的災害(自然災害等)、6号:取引先金融機関の破綻、7号:金融機関の経営の相当程度の合理化に伴う金融取引の調整、8号:金融機関の整理回収機構に対する貸付債権の譲渡があり、該当すると考えられる場合は、市町村の窓口や信用保証協会などに問い合わせてみると良いでしょう。
その14 視野を広げアンテナを高く、チャレンジ精神を持って、新商品・サービス開発を(07年9月号)
Q:単なる営業努力だけでは、もう売上アップにも限界があります。何か新しい製品をつくりたいと思っているのですが…。
A:売上アップや事業発展のために、新しい製品・サービスを生み出すための努力は、事業規模を問わず多くの中小企業や個人事業者の間で行われています。その際、成功のカギとなるのは、どれだけ豊かなアイデアを持っているかですが、これがなかなか難しい。ただぼんやりと日々の仕事を眺めていても、いいアイデアは生まれてきませんし、一心不乱に目の前にある仕事をこなしていても良いわけではありません。
自社が提供する商品やサービスが、どのように世の中に受け入れられているのか、消費者やユーザーに不満や改善を求める声はないかなど、注意深く気を配ることが必要でしょう。
【異業種・異分野との交流の中から】
また、自社内や同業社内からの情報だけでなく、従来あまりつながりのなかった異業種・異分野との交流やそこからの情報も、新商品・サービスを考える上で、重要なきっかけになるものです。自社内や同業社内ではまったく気がつかなかった新しい視点から自分たちの商品やサービスを見直すことができたり、「そんなことは不可能」と思い込んでいたことが、「こうすれば可能」になったりします。
地域の商店街でそれぞれの個店が協力してネットワークを作り、高齢者や妊婦、病気療養中の家庭などに宅配サービスを行なって、それが地域住民から喜ばれ、売上アップにもつながっている例なども報告されています。
また、音楽に合わせてタコ焼き器の上でタコ焼きが踊りながら焼ける「自動タコ焼き器」を開発して、特許取得・事業化をめざすグループもあります。
当事務所の顧客でも、皮なめし業を営む会社と建築会社が、新しい建材を開発しようと、協力をはじめました。
【政府の「新連携支援」策も活用して】
いま政府も、異分野の中小企業が連携し、優れた経営資源を有効に組み合わせることで、新しい製品・サービスを創出しようとする取組を認定し、支援を行っています(新連携支援)。すでに300件を超える計画が認定されています。
この「新連携」の認定を受けると、融資や信用保証、税、などの優遇措置があり、また研究開発など「新連携」対策の補助金も利用できます。
いずれにせよ、新商品・サービスを生み出すためには、“視野を広げアンテナを高く、チャレンジ精神を持って”です。
その15 いくら売り上げたら、利益はどれくらい?
――経営者自らが利益計画づくりを(07年10月号)
どんな業種であれ、経営規模であれ、企業にとって存続と成長のための適正な利益確保は、避けて通れません。そして、そのための計画作りも経営者の仕事です。そして、「どれだけの売上を上げるとどれくらいの利益が出るか」または、「どれだけの売上にしないと利益が出ないか」は、各企業の経営状況に左右されます。これを損益分岐点売上高といいますが、計画作りには欠かせません。
【費用を固定費と変動費に分けて計算する】
決算書や毎月の試算表の損益計算書(および製造原価報告書)を見てください。売上と費用が集計され、その差し引きとして利益がどれだけ出たかがわかります。ポイントは、費用の内訳です。売上の額にほとんど左右されず固定的に支出されるものがあるはずです。人件費や地代家賃などが代表的ですが、これらを固定費といいます。
一方、材料費や仕入商品、あるいは外注費など、売上に連動して上下する費用=変動費もあります。
こうして分けた固定費と変動費を以下のような計算式にあてはめて、損益分岐点を計算します。
固定費÷(1−(変動費÷売上高))
【ある企業の場合を例に】
1ヶ月平均の売上が500万円で、固定費が220万円、変動費が300万円という企業があります。毎月20万円の赤字です。
では、この企業が赤字を出さないようにするためには、あと20万円売上を増やせばよいかというとそうはいきません。20万円の売上のためには、材料費などの変動費が12万円必要です。上の式にあてはめて計算してみると、赤字解消のためには、550万円の売上が必要であることがわかります。
簡単に売上アップができるならば良いのですが、今日の経営環境の厳しさのもとでは、そんな簡単ではありません。そこで、売上アップの努力をする一方で、いかに効率よく利益を確保するかに工夫が必要となります。これが経営努力です。
もし、節約可能で、固定費を215万円に圧縮できたら、また変動費比率(変動費÷売上高)を2%改善(60%⇒58%)できたら、どうでしょう?赤字解消のためには512万円ほどで良いことになります。これならなんとかがんばれそうですね。
【利益計画にも応用可能】
さらに、毎月10万円の利益を確保するためには?
上の式を応用して、固定費のところを(固定費+目標利益)にすれば、目標売上高を計算できます。上記の改善のままならば、約536万円の売上が必要ですし、固定費をさらに5万円(210万円に)、変動費比率をあと1%改善(57%に)できれば、やはり512万円ほどの売上で、10万円の利益が確保されることになります。
こうした計算は、金融機関への借入の申し込みの際に提出する「事業計画書」の作成でも役立ちます。ぜひマスターしてみてください。
その16 注目される「地域資源」の積極活用
――地域おこしと経営の発展を結んで(07年11月号)
いま、「地域資源」が注目されています。今年度版「中小企業白書」では、地域経済や地域社会の担い手という中小企業の役割に着目して、地域の特産品や伝統的な技法、自然や歴史遺産などの文化財その他、独自の「地域資源」を有効活用して、経営改善と地域活性化の両方を進めることや、“隠れた地域資源”を発掘し、広めることを重視しています。
【「地域資源」で差別化をはかる】
大手企業との価格競争に巻き込まれては、中小企業に勝ち目はありません。いかに、大手企業と差別化をはかり、大手企業では扱わない製品や商品、サービスを生み出すかが、中小企業の生き残りと発展にとって大きなポイントです。
最近、その地域特有の農産物を材料に、「○○産の△△使用」などと銘打った食料品をよく見かけるようになりましたが、こうした工夫で、同じ種類の食料品であっても大手企業より高めの価格設定で、十分販売できる場合も少なくありません。とくに、食料品の場合、消費者は“どこで採れたどのような材料が使われているか”に、強い関心を持っています。「地域資源」を活用した商品は、こうした消費者ニーズにも合致しているのです。
伝統的な地場産業によって培われてきた技術を転用して、新しい工業製品をつくるのも、「地域資源」活用の一つです。
【「地域資源活用促進法」を利用して】
ただし、そのためには工夫や研究も必要です。今年6月、「中小企業地域資源活用促進法」が施行され、国や地方自治体の支援体制も整備され始めています。
そして、同法にもとづき、10月には全国で153件の「地域産業資源活用事業計画」が認定されました(農林水産物関連が57件、鉱工業製品やその生産技術関連が81件、観光関連が15件)。地域別では、北海道や中国・九州などで多数認定されているのが特徴です。
各都道府県では、地域産業の強化やあらたな地域産業の創出の核となり得る地域資源を特定して、それらを活用した事業を促進するための方向性や具体的施策を「基本構想」として定めています。現在全国で、8千件余(農林水産物が約2,500、鉱工業製品やその生産技術が約2,000、観光資源が約3,800)の「基本構想」があります。
中小企業者は、この「基本構想」に合致する「計画」をつくり、申請することが条件となりますが、この認定を受けると、@専門家によるアドバイス、A試作品開発や販路開拓に対する補助、B設備投資減税、C中小企業信用保険法の特例、D政府系金融機関の低利融資、など様々な支援を受けることができます。
町おこし、地域おこしという社会貢献と、自らの経営の発展とを結びつけて進めることができれば、一挙両得。挑戦してみる価値がありそうです。
その17 借りられる会社、借りられない会社
〜あなたの会社は?(1)(08年3月号)
3月は、確定申告の時期であるとともに、多くの会社が期末を迎えます。それに合わせて資金需要も多くなり、窮屈な資金繰りを余儀なくされている場合は、金融機関から融資をしてもらえるか、してもらえない場合はどうしたら良いか、と経営者は不安やストレスを募らせることになります。当事務所にも最近、融資の相談が増えています。
【不動産担保一辺倒からの反省と教訓】
金融機関は、どのような基準で融資の可否判断をしているのでしょうか。
かつて金融機関は、申込者がどれだけの不動産を所有しているかに最も注目して、それを担保に融資を行なう場合が少なくありませんでした。ところが、バブル崩壊で「土地は未来永劫値上がりし続ける」などというのは、“神話”であり幻想だったことが明らかになりました。
今日では、審査基準をかなり整備して、その基準に照らして融資の可否を判断するようになっています(もちろん、不動産担保も一つの判断基準ですが)。その審査基準は、金融機関ごとに独自性がありますが、以下、共通するポイントを見てみましょう。
@事業規模と比べて借入残高は多過ぎないか
第一に、事業規模と比べて借入残高は多過ぎないか、という点です。
金融機関によって、その基準は多少バラつきがありますが、およそ月商の3〜4か月分が限度です。6か月分を超えている場合は、ほぼそれ以上の融資を得るのは不可能です。
バブル以前では、不動産さえもっていれば、多少経営状況がどうであれ、融資を実行するというケースも少なくありませんでした。
実際、A社では、バブル当時、不動産を担保に融資を受けて都内に自社ビル(工場)を建設しました。ところがその後、経営状況が悪化し、倒産寸前の状態にまで追い込まれてしまいました。金融機関と交渉して、返済計画を見直し(リスケ)てもらうとともに、必死の経営改善を進める中で、なんとか経営も軌道に乗ってきましたが、いまだに月商の30倍近い借入残高を抱えており、その返済が経営を圧迫しているのです。
A社のようなケースはほとんど例外といっても良いでしょう。不動産を担保に多額の借入をして、その負担の重さに倒産した中小企業は少なくありません。(以下次号)
| いま、中小企業庁では、原油・建築問題への金融支援の強化、年度末の資金需要の増大への金融支援の拡充を行なっています。 国民生活金融公庫をはじめとする政府系中小企業金融機関での低利融資、信用保証協会を通じたセーフティネット保証の業種拡大、年度末資金繰りについて民間金融機関への配慮要請などが行なわれています。 ご希望の方は、当事務所にご相談いただくか、直接金融機関等へお問合せください。 |
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その18 借りられる会社、借りられない会社
〜あなたの会社は?(2)(08年4月号)
金融機関が、どのような基準で融資の可否を判断するかについて、先月号では「@事業規模と比べて借入残高は多すぎないか」という問題をとりあげましたが、その他の基準について考えてみましょう。
A適正な利益が出ているか
第二に、本業によって生み出される利益は適正な水準か、という点です。
借入金返済では、その利子払いは営業外費用として計上されますが、元金返済のための原資は、基本的には利益からしか求めることはできません(費用ではありません)。また、利益が出ていたとしても、それが既存の借入の返済原資に充てられていて、それを控除するとほとんど残らない場合は、新たな借り入れは難しく、金融機関も難色を示します。
先日相談に来られたサービス業のB社の場合、売上規模は月商1.5億円で、既存借入残高は月商の2か月分弱だったのですが、新たな借り入れを申し込んだら金融機関に断られたとのこと。理由は、経常利益率が0.3%と黒字幅が小さすぎ、これ以上返済できる体力がないとの判断でした。
B減価償却費等の非資金的費用の存在
ところが、利益はあまり出ていなくても、融資を受けられる場合もあります。それは、「第2の利益」ともいうべき、減価償却費などの資金の支出を伴わない非資金的費用が潤沢に計上されている場合です。
製造業を営むE社の場合は、経常利益が若干マイナスで、借入残高も1億円近い額にのぼっていましたが、数千万円のあらたな融資が実行されました。それは、経常利益がマイナスでも、毎年2千万円近い減価償却費が計上されており、キャッシュ・フローがかなりのプラスだったからです。返済原資にまだ十分な余裕があるとの判断だったのでしょう。
C事業計画は現実的か
第三に、現実的で実現可能性の高い事業計画になっているか、という点です。
金融機関も最近では、融資実行の可否判断に事業計画を重視し、事業計画書の提出を求めるケースが増えています。
既存の借入残高が、かなり限度額いっぱいで、かつ現状ではあまり利益が出ていない場合でも、これを改善するための事業計画が現実的で、事業主や経営者が経営改善に強い意欲を持って取り組もうとしているなら、金融機関もよく相談に乗ってくれ、融資に応じてくれる場合も少なくありません。
融資獲得のためのポイントをいくつか述べてきましたが、大切なことは、なるべく融資に頼らない経営へとつねに改善を図っていくことです。そして、融資を受ける場合も必要最低限に抑えることです。よく「晴れた日に傘を貸し、雨の日には傘を貸してくれない」とのボヤキも耳にしますが、経営者としての“自己防衛”術も必要です。
その19 フランチャイズ加盟はメリットや
デメリットなどを考慮して慎重に(08年5月号)
「事業がうまくいかない」、「手っ取り早く起業したい…」などの理由から、フランチャイズに加盟する例をよく見聞きします。しかし、よく検討せずに加盟して、「失敗した」と嘆く事業主も後を絶ちません。
【フランチャイズ加盟のメリット】
フランチャイズ加盟のメリットは、なんといってもそのブランド力やネーム・バリューです。また、個店だけの力では扱えない商品(もしくは原材料)を扱えるようになることです。全国展開する有名フランチャイズ店の場合、消費者の多くはすぐに、どのような店舗で、どのような商品が売られているか、価格はどうかなど、イメージを持つことができます。開店間もない店舗でも、その店名を掲げることで、消費者に安心感を与えることができるのです。
また、POSシステム等を通じて収集される各加盟店から情報が加工され、売れ筋商品や陳列の仕方などの情報提供を受けたり、業績アップのためのコンサルティングを受けることができます。
【デメリットは?】
一方、デメリットも考えなくてはなりません。フランチャイズ本部は、各個店では作り出せないブランド力やネーム・バリュー、商品や原材料を加盟店に提供する代わりに、ロイヤルティを要求します。その金額は、各フランチャイズによって様々ですが、たとえば固定的な額と売上に比例する額の合計などで算出されます。某有名コンビニエンス・ストアーの場合、値入額の45%という高額なロイヤルティが請求されます。
また、フランチャイズのブランド・イメージや品質を維持するために、さまざまな“縛り”がかけられます。仕入れる商品や原材料は、仕入れ先や仕入れ価格も指定されるのが普通です。飲食店の場合は、提供するメニューも決められ、お店独自のメニューを作ることにかなりの制限が加えられます。さらに、店舗の内装や什器備品も指定業者を通さなければならない場合が多く、その費用も“言い値”で自己負担しなければならないのが通常です。その他、営業時間やユニホームなど、細かな規定が設けられています。
【絶えないトラブルや脱退、廃業】
このように、一方で、一見手軽に事業が成り立つようにみえるフランチャイズですが、自由度はかなり狭められ、経済的にもかなり厳しいのが実態です。そのため、ロイヤルティが払えずに脱退したり、廃業に追い込まれるケースも少なくありません。また、全国各地で、フランチャイズ本部に対する加盟店の「反乱」ともいうべきトラブルが続出しています。「反乱」者が多数生まれ、とうとう本部が2分する事態に発展してしまったフランチャイズもあります。
フランチャイズ加盟に際しては、メリットは?デメリットは?採算がとれるのか?など、慎重に検討して結論を出すべきでしょう。
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