有期契約労働者を正社員にすると助成金が支給されるか
Q 先月6ヵ月の有期契約の社員を正社員にしました。助成金がもらえると聞いたのですが…。
A 今年4月より、中小企業の事業主が、有期契約労働者を正規雇用に転換した場合、「中小企業雇用安定化奨励金」として以下の額が支給されることとなりました。
1 この法律で定める転換制度を新たに導入し、有期契 約労働者を1人以上通常の労働者に転換させた事業 主に対して・・・1事業主に対して35万円。
2 制度を導入してから3年以内に3人以上の有期契約 労働者を通常の労働者に転換させた事業主に対して・・・ 当該労働者10人までで1人につき10万円
ただし、上記を受給するためには以下の要件を満たさなければなりません。
@雇用保険の適用事業主であること。Aすべての有期契約労働者を対象とした転換制度を就業規則等に新たに定めたこと。B該当労働者が次の要件を備えていること。イ・転換前に6ヵ月以上の期間有期契約労働者として雇用されている雇用保険の被保険者であること、ロ・転換後も引続き雇用することが見込まれていること、ハ・転換日の前日から起算して過去3年間に当該事業主に通常の労働者として雇用されていないこと、ニ・通常の労働者として雇用することを前提として雇用された者でないこと。C上記の奨励金の対象となる労働者を最後に通常の労働者として転換した日から6ヵ月以内に労働者を解雇していないこと等。
なお、受給のためには、対象労働者に通常の労働者としての1か月分の基本給を支給した日の翌日から1ヵ月以内に所轄の都道府県労働局長へ申請書を提出すること等が必要です。また、転換対象労働者が母子家庭の母である場合の特例などもあります。詳しい内容は最寄のハローワークに問合せてください。
労働4法(安全衛生法、労災保険法、徴収法、時短法)の一括改正と対応
昨年10月、労働安全衛生法、労災保険法、労働保険の保険料の徴収等に関する法律、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の4法の改正が、一括して「労働安全衛生法等の一部を改正する法律」として成立し、この4月から施行されます(一部は平成19年12月1日施行)。
【改正の概要】
<労働安全衛生法の一部改正>
◆危険性・有害性の低減に向けた事業者の措置の拡充
@事業者の自主的な取組を促す、A危険・有害な化学物質について、容器・包装の表示や、譲渡・提供の際の文書交付に関する制度の改善、B爆発等のおそれがある化学設備について、その仕事を発注する者が請負人に対して必要な情報を提供する、C製造業等における業務請負の増加に対応するため、元方事業者(自らも仕事を行う最先次の注文者)が作業間の連絡調整を行う
◆過重労働・メンタルヘルス対策の充実
1ヶ月の法定時間外労働が100時間を超え、疲労の蓄積が認められる者で、申出を行った者に対し、医師による面接指導を行い、その結果に応じた措置を講じる義務
<労働者災害補償保険法の一部改正>
従来通勤災害の対象ではなかった次の部分を保護の対象とする
@2つ以上の事業場で働く複数就業者の事業場間の移動
A単身赴任者の赴任先住居・帰省先住居間の移動
<労働保険の保険料の徴収等に関する法律の一部改正>
有期事業の保険料のメリット増減幅(現行±35%)を、継続事業と同じ±40%とする
<労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部改正>
「年間総実労働時間1800時間」を目標とする労働時間の短縮の促進を図る法律を、題名も「労働時間等の設定の改善に関する特別措置法」に改め、労働時間等の設定の改善に向けた自主的努力を促進する法律とする
【改正の背景―労働者の生命・生活に関わる深刻な問題】
厚生労働省が法改正を提案した理由を見ると、「企業間競争の激化、働き方の多様化が進む中で、自主的な安全衛生活動の不足に伴う重大災害が発生し、業務の集中する層の長時間労働に伴う健康障害の増加や、子育て世代の生活時間の確保の困難化が生じている。他方で、移動に際しての保護の拡充が必要な単身赴任者、複数就業者の増加など、労働者の生命や生活に関わる問題全般が深刻化している」、となっています。いったい何が「深刻化」しているのでしょうか?
@重大災害(一時に3人以上が被災した災害)の件数が、 昭和60年141件であったものが、平成15年には249件 (1.8倍)に急増
A仕事に関して強い不安やストレスを感じている労働者 が6割を超え、一般健康診断における有所見率は年々 増加の一途をたどっている。とくに脳・心臓疾患を発 症したとして平成15年度に労災認定された件数は310 件と高止まりしており、うち過労死の労災認定は157 件となっている。また業務による心理的負荷を原因と して精神障害を発症し、あるいは精神障害により自殺 に至る事案が増加し、平成15年度の労災認定件数は10 0件を超えている。
B職場における化学物質は種類が多様で、かつ取り扱う 作業も多岐にわたるなか、規則によって規制されてい ない化学物質による疾病が増え、化学物質による爆発・ 火災等も依然として発生している。
C短時間労働者の増加などの中で二重就職者の数は昭和6 2年に55万人であったものが平成14年には81万5千人 に増加。単身赴任者の数も昭和62年41万9千人であっ たものが平成14年には71万5千人に増加。
D近年、年間総実労働時間は短縮から増加に転じている。 また週労働時間別に雇用者の分布を見ると、「35時間 以上60時間未満」の雇用者が減少する一方、「35時間 未満」と「60時間以上」の雇用者がともに増大し、 「労働時間分布の長短二極化」が進展している。
【対応する際の視点・留意点】
今回の法改正で「深刻な問題」は解決できるのか?労働界からは次のような疑問が投げかけられています。@過重労働の際の医師の面接指導を「本人からの申出」を条件とするのは実効性を弱める(*)、A年間総実労働時間1800時間の目標を取り下げ、「自主的努力」に委ねるのは実態に合致していない、Bメリット増減幅を拡大することは「労災隠し」を助長するのではないか、などです。
*最近厚生労働省は、労働者が確実に申出できるよう、申出窓 口の設置等を通達で呼びかけた。
それにしても今回の法改正が、過重労働に企業はどう対応するか、大きな問題を提起したことは間違いありません。第一に、過重労働発生時の医師の面接指導等について、従来単なる行政指導に過ぎませんでしたが、法的根拠条文をもって明確化されたことです。過労死等の民事賠償請求が不可避となっている中で企業の責任はより重くなりました。第二に、企業の負う健康配慮義務の内容としてメンタルヘルスの重要性が高くなりました。産業医等を確保する余裕のない中小企業にとって地域産業保健センターの活用促進は大いに勧めたいところです。また、最近、うつ病等の健康障害を抱え休職に入った後の復職をめぐる紛争も増大しています。企業の指定医による復職可能性の判断のための受診義務や、検診に基づく配転・給与減額・解雇または退職等に関する規定の整備が不可欠といえます。
なお、今回の法改正を受けて、厚生労働省は、就業規則で多くの会社がうたっている「兼業禁止規定」について、“一律に兼業禁止とするのは適当でない”と抑制的方向を打ち出し、年次有給休暇の取得に関して、「計画年休の普及」「半日単位の年休の利用の促進」などいくつかの方針を提起しています。これらの今後の動向にも注目しておく必要があります。
法人の代表者等の「業務に起因した」傷病が、健康保険の給付対象に
【労災保険と健康保険の“はざ間”にあった経営者】
いままで法人の「代表者等」が労働災害にあった場合、労働者でないがために労災保険の給付対象とならず、一方健康保険は「業務外」の傷病等に対して給付するという法律上の制約があったため給付対象とならない、つまりいずれからも救済されないという問題がありました。一定規模以下の中小事業主や一人親方などについては、労働者とみなして労災保険の給付を受けられる特別加入制度がありますが、任意加入の制度なので、加入していない場合にはどちらからも給付されなかったわけです。
【限定つきながら7月1日から実施】
以前からこの問題への批判は強く、厚生労働省はようやく7月1日から表記の制度を「当面の措置」として実施しました。以下の要件で取り扱われます。
@「被保険者が5人未満である適用事業所に所属する法人の代表者等であって、一般の従業員と著しく異ならないような労務に従事している者」の業務上の災害による傷病を、健康保険による給付の対象とする。
A労災保険の特別加入をしている者、「労働者の地位を併せ保有すると認められる者」は労災保険による給付が原則。
B健康保険の傷病手当金(療養のため労務不能になった場合に支給)は支給の対象とならない。
高年齢雇用継続給付金
60歳に達した後も引き続きその労働者を雇用している場合、以下の要件を満たした場合に雇用保険から支給されます。今年の5月から支給要件と支給額が変わりましたのでご注意ください。
<支給要件>
@60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者で、被保険者であった期間が5年以上。
A原則として60歳時点と比較して、60歳以後の賃金が75%未満となっていること。
<支給額>
賃金低下率が61%以下の場合、賃金額の15%が支給されます。低下率が61%超75%未満の場合、計算式によって算出されます。なお、賃金が350,880円以上の場合は支給されません。
<具体例=60歳時の賃金月額が30万円の労働者を継続雇用した場合>
○賃金が26万円に低下→低下率が「75%未満」となっていないので支給されない。
○賃金が20万円に低下→低下率が66・67%。計算式で計算すると16,339円。
○賃金が18万円に低下→低下率60%なので、18万円×15%=27,000円支給。
高年齢雇用継続給付金は、再雇用などの際に、在職老齢年金の受給と併せて給付を受けることによって、賃金減による労働者の生活レベルの低下を最小限に食い止める手段として活用されています。ご相談ください。
労働審判制度の概要と企業の対応
【労働審判法が成立】
労働者と使用者間の個別紛争が頻発、急増しているなか、さきの通常国会で労働審判法が成立(平成18年からの施行予定)、現在、手続の細則の策定作業が行われています。
平成13年10月から、個別労働関係紛争解決促進法に基づく紛争調整委員会によるあっせん制度が開始されたものの、この制度は紛争の一方の当事者が手続に参加しないとあっせんが打ち切られるケースが多いという点で、実効性にたいする疑問が投げかけられていました。
一方、訴訟による紛争解決には時間がかかるのが実情です。解雇事件で労働者としての地位確認を求める訴訟のさなかに定年退職を迎えてしまう場合も多く、また、少額の未払い賃金の支払を求めてそれ以上の費用をかけて弁護士に依頼するのもバカバカしいという声もよく聞きます。だから労使紛争を訴訟の場に持ち込む例は氷山の一角です。
こうしたなかで、今回の労働審判制度は、簡易敏速に、かつ実効性ある紛争解決を可能にする制度といわれています。
【労働審判制の概要】
概要は次のようなものです。
@ まず、調停(話し合い)による解決が試みられます。
A 調停不成立の場合、原則として3回以内の期日で労働審判が出され、それは判決と同様の効力をもちます。
B 1人の審判官(職業裁判官)と、労使各1名の審判員から構成される労働審判委員会によって行われ、3名の多数決によります。
C 当事者から異議が出された場合には、新たな提訴をせずとも、地裁に訴えの提起があったものとみなされます。
【紛争を未然に防止する対策が求められる】
この制度の実施とともに、圧倒的な数の労使紛争について労働審判の申立がなされると予想されています。企業としても短期間のうちに準備が求められ、それに対応するコストもバカにならないと思われます。労働法規を遵守し、無用な紛争を未然に防止する、そのためにもいまから就業規則等の見直しなど対策を打つ必要があるでしょう。
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