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年金相談の現場から

 
         教育重視の会社ほど高い生産性
(第1回)

 社員教育といっても、社内講師で企画する研修から、外部研修、また、個々人で取り組むものなど形だけでもさまざまです。
 新入社員を採用したときには、OJT(仕事を通じての実地研修)を中心にほとんどの会社が研修を実施していると思いますが、そこを過ぎると、必要に迫られた「技術研修」以外は実施していない会社が多いようです。経営者や教育担当者の話を聞くと「できれば自社で研修を実施したい」ということが多いのですが、全社員はもちろん、一つの部署だけでも全員が集まれる時間を調整することができず、なかなか実施できずにいるようです。ある経済団体の調査では、社員研修を毎年実施している会社とそうでない会社では、外部環境の厳しいとき、業績の伸びに差が生まれるという結果も出ています。原材料やガソリン価格が高騰する今のような時こそ、社員研修を重視して、他社との差別化への第一歩にしていきたいところです。

【労働生産性が高いと認識している会社ほど教育重視】

 平成19年度「能力開発基本調査(厚生労働省)」では、「OJTが大いに役に立つ」という企業は全体20.7%に対し、生産性の高い企業では38.3%となっています。同様に「OFF-JT(現場を離れての外部研修等)」では、全体が8.5%に対し、23.2%。「自己啓発の支援」や「キャリアプランの策定」でも傾向は同じで、生産性の高い企業は全体より3倍前後の割合で能力開発の取り組みが「大いに役に立つ」としています。また、一人当たりのOFF-JT費用も、全体が2.3万円に対し生産性の高い企業は4万円と約1.7倍で、全体に比べて能力開発の取組を重視し、実際に効果を上げていることが伺えます。

【教育は無理なく継続が大切】
 実際に行われているOFF-JTは自社内での実施が53.7%、民間の教育機関が29.1%と、自社での実施がトップです。
 一方で、人材育成の問題点のトップに「指導する人材の不足(50.5%)」「人材育成を行う時間が無い(47.3%)」があげられており、自社で実施していく難しさも見受けられます。
 実施しているOFF-JTを中止したり、毎年内容が変わるようでは、受ける側も能力開発の方向が定まらず、キャリアプランを作ることが困難です。OFF-JTの実施に当っては、継続していくことを第一に、自社内での研修と社外研修を組み合わせて無理なく取り組んでいくことが大切です。


         2008年の若者は「カーリング型」
(第5回)
 今回は、若者気質について考えてみます。新卒に限らず、若手の社員を採用すれば「最近の若い者は何を考えているのかよくわからない」とは、いつの時代でも言われることばです。ただし、これを、当たりとせずに、「なぜ?」と相手に問いかけることが、今の若者を理解する上で大切です。
【高学歴でも実体験のない若者】

 大学進学率は毎年上昇し続けており、東京では20年3月の高校卒業者のうち63.8%が大学・短大へ進学、また、11.1%が専門学校へ進んでいます。就職する生徒は、全体のわずか7.5%にすぎません。中小企業でも大卒者の採用が増え、高学歴化が進んでいます。
 10年程前の新入社員の研修で驚いたことがあります。数社の社員が混合で「学生と社会人との違いは何か」などいくつかのテーマでディスカッションをしました。その感想文に「自分の考えや他人の考えを交えて討論したのは初めてで感動した」とあるのです。世間ではかなり優秀とされる大学の卒業生です。その後、そういったディスカッション経験のない若者が大変増えてきました。これは、学校の友達同士でも、家庭の中でも自分の考えを本音で話し合った経験のない若者が増え続けているということです。高学歴化とは言いながら、インターネットや携帯電話の普及により、コンピュータの前に座る時間が増え、学校で顔を会わせているにも関わらず、メールで会話をするような表面的な人間関係になってきます。実体験の機会は減り、社会的な活動の経験不足、コミュニケーション不足の若者が増えています。ところが、就職すると今までのデジタル的なものより、むしろ実態はアナログ的なものばかりで、一番苦手だった人間関係がさらに重要なことに戸惑うことになります。ひとりで悩み精神的に病んでしまう人も多く社会的な問題にもなりつつあります。
【問いかけることが大切】

 しかし、根本的には経験に乏しいだけで根は素直な若者がほとんどです。こちらから問いかければ、戸惑いながらも応えてくれます。「褒めて育てる」とよく言われますが、今時の若者はその前に、「問いかけ」をして正しく表現をする経験を積むことが必要です。コミュニケーションがスムーズにできるようになるには訓練が必要です。若者を育てられる教育力を身につけることが差別化になりそうです。
 財団法人社会生産性本部が、毎年、新入社員のタイプを命名していますが、今年の型を紹介します。
2008年「カーリング型」:冬期オリンピックでおなじみになったカーリング、新入社員は磨けば光るとばかりに、育成の方向を定め、そっと背中を押し、ブラシでこすりつつ、周りは働きやすい環境作りに腐心する。しかし、少しでもブラシでこするのをやめると、減速したり、止まってしまったりしかねない。……まさに、その通りです。


         マナーを自社文化として定着させよう
(第4回)


 会社を訪問した時、気持のよい接客応対を受けたことは、今までにどれくらいあるでしょうか。記憶に残っている会社となれば、意外に少ないものです。一定水準のビジネスマナーを定着させることが容易ではないことは、経営者の方なら誰もが感じていることではないでしょうか。今回は、マナー研修を考えます。

【総務担当者には重荷のマナー担当】

 会社でマナーを向上させようと考える時、よくあるのが、接客をする機会の多い総務の女性事務員1、2名を研修に参加させるパターンです。しかし、この人たちが相当の権限を持っているなら、研修で受けた内容を社内に教育・普及・定着させていくことも可能でしょうが、一般的にはそういう権限も時間も確保されておらず、なかなかうまくはいきません。新入社員が外部でマナー研修を受ける時も「先輩が挨拶や電話応対を研修のようにしていないのに自分だけではやりづらい」と、現実の業務の中では会社の多数派に「右へ倣え」というのがしばしばで、一部の担当者が研修を受けただけでは変わらないのが現実です。

【マナー向上のための3つの条件】

 では、どうすれば会社全体でマナーを向上させることができるのか。マナーは習慣のようなものですから、短時間で定着させることは困難です。
 多少時間がかかることを前提に、1つは、マナーの担当者に専務や総務部長など、権限のある人を付けることです。総務の担当者と複数名ででプロジェクトを組むのも良い方法です。担当上司がいなければ、社員だけではやりたいことがあってもできず、徹底もできないものです。
 2つ目に、定期的に教育を繰り返すことが必要です。マナーのしっかりしている、航空会社や外食チェーン店、車のディーラー店などのサービス業ほど絶えず社員教育を実施しています。社員も入れ替わるし、お客様も絶えず変化していきます。実際に起きた事例を出して「こんな時はどうするのか」と取り上げれば、クレーム対応の事例研究にもなります。
 3つ目に、マナーを人事評価の項目に入れること。マナーが会社全体で向上定着して、誰の目にもわかるようになれば、間違いなく取引先やお客様からの信頼も厚くなり評価は高まります。外部から見て、会社全体のマナーが一致していることがとても大切ですので、他の業務と同様に、評価の一項目とすることで会社全体に周知させることにもなります。

【マナーを会社の文化へ】

 「マナー研修のようなマニュアルや形式を整えるだけでは意味がない」という意見もありますが、そのとおりです。マナーには「これが正しい」というものはありません。お客様や取引先、社員同士まで、TPOに応じてどのような対応をすることがよいのか、相手の立場になって考えたらどうなるのか、を考え積み重ねていくことで、会社のマナーがつくられ、それが会社の文化ともなります。



         やる気を引き出す社内研修
(第3回)


 社内研修は、全体で効果的に実施したいところですが、形式的なところが多く容易ではありません。

【参加しても、しなくても同じ研修】

 社員50名程の電子部品の商社での例です。研修会では、技術の進歩や業界の再編が激しいことから、業界全体の情報、特定の大手メーカーの経営戦略、世界情勢まで、毎回盛りだくさんの勉強会です。まるでテレビの経済番組のようだといいます。さらに、業務優先で研修会と重なった場合は研修会の途中でも容赦なく退席、最初から欠席する人間も多く、研修を受けなくとも実際の業務に支障はないといいます。
 また、約30名の家電企業の子会社では、親会社の方針報告会的な勉強会を毎年数回に分けて実施。みんな参加が義務付けられているはずなのですが、業務優先でやはり欠席する人が多いようです。
 企画者の意図は様々あるのでしょうが、「研修で時間をとられるなら仕事をしていた方がいい」と考える社員が大多数なのが実際です。受けたくない人に研修を実施しても効果はほとんどありません。後で、資料を読めばわかるような研修ではなおさらです。

【ワークショップ型の研修】

 逆に、比較的簡単に実施していながら、上手に進めている社員20名の警備会社の例です。その会社は、工事現場で車と歩行者の誘導が主な業務です。ある時「どうしたらもっとスムーズに誘導できるか」の新入社員の言葉に、担当の上司が「みんなで話し合ってみよう」と呼びかけて月一回の研修会が始まりました。
 最初は社員の自主的な勉強会として始まったのですが、数回目からは経営者が業務と位置づけ研修の時間も賃金も保証しました。業務改善的な内容ですが決定権はありません。
 テーマの設定や各回の報告者は、社員が交代で担当し自分の業務の中で疑問に思ったこと、改善した方が良いと思ったことを事前に告知しておき、参加者は前もって自分の考えを頭の中にまとめておくというだけです。率直な意見が交わされ、最近では、他社の事例や改善提案をまとめるようになったといいます。
 自分の業務と直結している内容であること、過度な負担がなく実施できていることが、うまく運営されている要因のようです。
 また、約40名の通信販売会社では、会議の冒頭15分程度、社員に交代で業務と関係なく自分の好きなテーマでミニ学習会の講師をさせるそうです。自分の好きな映画や音楽、普段の生活で考えたことなど様々で、その人となりがわかり社員からも好評です。
 うまくいっている事例に共通しているのは、「ワークショップ形式(参加体験型)」であることです。その裏には、経営者の「社員の自主性を尊重する雰囲気づくり」がうかがえます。教育の本質は、知識を教え込むことではなく、本人の持っている力を引き出すことですから、まさにその点で、社員に依拠してやる気を引き出している事例といえるでしょう。


         外部セミナーを効果的に活用しよう
(第2回)

  自社の社員教育カリキュラムを作成しようとすると、@中・長期的な経営計画に基づき、Aどのような人材が必要になるなかを検討した上で、B育成のための教育カリキュラムを組んでいくことになります。ただし、この通りに進めようとすると、経営計画が確定されていない場合など、スタートするのは、半年から1年先ともなりかねません。そこで、まずは、経済団体やセミナー会社などで開催しているセミナーを活用してはいかがでしょうか。

【刺激的な参加者同士の意見交換】

 セミナーは大きく分けて2つに分けられます。一つは、技術や各種制度をテーマにした実務的なもの。もう一つは、「営業リーダー研修」や「管理職セミナー」のような階層別のものです。
 実務的なセミナーでは、そのテーマを学習する要素が強く座学だけの場合が多いようですが、階層別のセミナーでは、グループ討論などで参加者同士の意見交換をすることがよくあります。人によっては、講義よりもこの意見交換で多くの刺激を受け成長することも少なくありません。他社の状況や自分と同じような立場の人間との意見交換で、考え方が広がったり、業務のやり方を見直すことができたり、また、厳しい状況で自分より頑張っている人間を見れば励みにもなります。セミナーのレポートでも「どの会社も同じような悩みを持っていることがわかった」「他社の営業方法を自分でも実践してみたい」などの意見が多く見られ、今までの自分を振り返り今後を考えている様子がうかがえます。

【学び成長する風土づくりが大切】

 外部セミナーへ一度に大勢を参加させることは、組織体制の面からも費用の面からも難しいものです。1、2名の参加でも一工夫して効果を全体のものにしていきましょう。ポイントは、参加したセミナーについてのさまざまな情報を社内全体で共有することです。まず、誰がどんなセミナーを受けるのかを社内に知らせます。そうすることで、受けたセミナー内容を本人が社内で話す前提ができます。また、上司は参加したセミナーの報告を必ず受け、本人の成長の中身を社内にフィードバックすることです。朝礼やメールを通じて報告するのも共有するのによい方法です。それらを積み重ねることによって、セミナーには参加しなかった社員も「セミナーに参加すれば今よりも成長できる」「自分が成長すれば、会社は認めてくれる」という雰囲気が生まれてきます。逆に、それらを怠れば、「この会社は社員を育てる気がない」と逆効果ともなりかねません。会社全体のレベルアップのためには、「学ぼう」「成長しよう」という雰囲気が風土として定着することがとても重要です。