直線上に配置

たまには旅でも

home
塩田平(長野県)】


仰ぎ見れば、重なり合う巨大ホタテの貝殻。四重に見えるが、一番下は裳階(もこし)と呼ばれ、庇(ひさし)のこと。奈良・薬師寺の三重塔なども各階に裳階がつけられ六重に見える。な姿を見せてくれる。

 季節外れの猛暑から一転、さわやかな秋空の下、国宝にも指定されている八角三重塔を見たくて、信州・別所温泉に安楽寺を訪ねた。
 このあたりは、その昔から塩田平と呼ばれ、「信州の鎌倉」とも称されるほどに古刹が多い。
 杉、翌桧(あすなろ)等の巨木が林立する中、石段を上って山門をくぐると、禅寺らしいよく手入れされた庭が訪問者を出迎える。その向こうに、かつては萱葺きであったろうこんもりとした銅葺き屋根の本堂がみえてくる。お目当ての三重塔は、その裏手のほの暗い山を登ったところにそびえていた。
 鎌倉時代末期の創建といわれ、奈良・東大寺の大仏殿や南大門と同様の禅宗様(唐様)といわれる建築様式で、たしかに重厚感があるのだが、通常の四角い屋根と違い、まるでホタテの貝殻を重ねたような姿は、なんとも愛らしい感覚を観る者に与えている。
 塩田平は戦国の昔、真田昌幸・幸村親子の居城だった上田城がその中心で、かの徳川の大軍を2度も迎え討ち撃退したことで有名だが、この塔も幾多の戦禍をくぐりぬけ、焼け落ちずに人々の手によって守り抜かれてきた。そしていま、国内唯一の八角三重塔として、私たちの前に古色豊かな姿を見せてくれる。
 ここからさほど遠くない、これまた静かな山腹に戦没画学生を慰霊する美術館「無言館」もある。(育)


トップ アイコントップページへもどる
home
直線上に配置