| 2003.5-2003.9 | 2003.10-2004.2 | 2004.3-2004.7 | 2004.8-2004.12 | 2005.1-2005.5 |
| 2005.6-2005.12 | 2006.1-2006.12 | 2007.1-2007.12 | 2008.1-2008.12 | 2009.1- |
| 中小企業へのちぐはぐな金融政策を正せ(2009年1月) | |
|---|---|
| 【緊急融資額は前年の30倍】 中小企業支援のため08年10月末に新設された信用保証協会100%保証の「緊急保障制度融資」承諾額が、12月末までの2ヶ月間で、累計17万件、約3兆9000億円になったと発表されました。前年の約30倍にもなります。景気が悪化の一途をたどる中、多くの中小企業の資金繰りが救われました。ただし、見方によっては、それまでの金融政策により中小企業に資金が廻らなくなっていた反動とも言えるものです。このままでは、緊急融資が一巡した後、中小企業へ更なる貸し渋りの発生することが心配されます。 【貸し渋りを引き起こした大本は】 もともと中小企業への融資は、信用保証協会付きのものが大半で、保証枠内であれば貸し手の金融機関としてもリスクを回避できたのですが、07年10月より、「責任共有制度」が導入され、融資が返済不能になった場合、そのリスクの20%を金融機関が負うことになりました。「責任共有制度」の導入後、中小企業への融資は減り続け、大手銀行6グループの08年9月末の中間決算では、中小企業向け融資残高はわずか半年の間に2兆9000億円も減少していました。 さらに、昨年後半からの金融市場の混乱で、大手企業は市場から直接資金調達することが難しくなったため、銀行からの借り入れを増やしたことが、中小企業融資へ大きく影響しました。貸出し増による自己資本比率の低下を恐れた銀行は、中小企業への融資を減らす方針をとり、「黒字の中小企業へも貸さない」と言われる今回の貸し渋りへとつながっています。 そこで、政府は期限切れとなっていた「金融機能強化法」を改正して12月より再度施行、金融機関への公的資金注入で自己資本比率を高めることができるようにしました。先日、さっそくこの法に基づき、第二地銀最大手の札幌北洋ホールディングスが公的資金の注入を申請しました。 【銀行は社会に血液を送り続ける心臓の役割】 銀行は、社会の血液ともいえる「お金」を動かす心臓の役割をしています。その心臓が正常に機能しなければ、人間と同じように社会も健康を害することになります。とくに財務基盤の脆弱な中小企業においては、金融政策のわずかな変動が死活問題に直結します。景気悪化が、今後ますます深刻化する見通しが強いもとで、政府の安定的な金融政策と「心臓」としての銀行の自覚は、ますます必要になっています。 |
|
| 「雇用を守る」段階から「雇用の創出」へ(2009年2月) | |
|---|---|
| 【年越し派遣村が遺したもの】 昨年末来の大手企業を中心とした派遣切り、期間工切りの中で、1月26日現在、全国で1,806事業所、約12万5千人の非正規労働者が雇止めされました(厚生労働省)。民間の調査・予測によると3月末までに40万人を超える雇止めとなると言われています。 年末にマスコミを賑わせた「年越し派遣村」。その影響はいままでの労働行政、「セーフティネット」行政の常識を一つひとつ打ち破りつつあるように見えます。@いすゞ自動車が期間従業員550人の途中解雇を撤回したのに続き、三菱ふそうトラック・バスなどが解雇撤回、A雇止め・解雇された労働者の住居保障、Bいままで「住所不定」などを理由に窓口で却下されていた生活保護行政の一部変化、C厚生労働省が国会で、偽装請負期間(「クーリングオフ」期間の偽装)を実質的な派遣期間と認定すると表明、などです。 そしていま焦点は派遣法を原則自由化の前に戻す(=派遣はあくまでも例外的に認めるものという法律に戻す)かどうかに移ってきているようです。一人ひとりにとって「いろんな働き方を選べる」という耳ざわりのいい宣伝で自由化された派遣労働という形態が、社会全体に蔓延したときにどういう結果をもたらすかが浮き彫りになったが故でしょう。一頃有名になった『派遣の品格』というテレビドラマのPart2が放映中止になるという話まででてきているのです。 【外需依存型から内需中心の経済へ】 海外メディアの日本に関する報道の中心は驚くべき日本経済の「失速ぶり」だといいます。日本の経済成長率マイナス12.7%(昨年10−12月前期比を年率換算)という数字は、この間の「好況」の実態が一部輸出企業の活況でしかなかったことを示しました。欧米諸国の成長率がマイナス数%であることと比べるとあまりにも内需が脆弱であることが浮き彫りになったのです。 いまや非正規雇用切りから正規雇用切りへという流れが強まっています。リストラは、たしかに個別の企業にとっては経営危機を救う策となります。しかし多くの企業がリストラに走り、内需の中心である消費が減退したままで日本経済の回復はあり得ないでしょう。 「雇用を守る」段階から「雇用を創出する」段階へ、日本経済がいかに進むかが問われています。 |
|
| 「価値観の変革」が求められる時代に(2009年3月) | |
|---|---|
| 「ピンチをチャンスに」あるいは「弱みを強みに」変えるとは、よく言われますが、それには「価値観の変革」が重要なテコになっています。先月26日、NHKテレビの朝のニュース番組内で放映された徳島の卵問屋の事例(「経済リポート」)で考えてみましょう。 【「用途別パッケージ」で売上6倍に】 従業員30名弱のその卵問屋は、業界ではけして大きくなく、あちこちの小規模養鶏業者から卵を仕入れているため大きさや品質が不揃いで、主な販売先であるスーパーなどの「品質の安定」要求に十分こたえられないことが、経営上の最大の悩みでした。 この「弱み」をどう克服し、苦境から脱出するか、と考え出したのが、卵の「用途別パッケージ」です。さまざまな大きさや品質の卵が入荷することを逆手にとり、白身の多い卵はふんわりと調理しやすい「オムレツ用」、卵黄の味の濃いものは「たまごかけご飯用」などと、用途別に販売したのでした。これが大当たり。レストランをはじめ、それまで「品質の安定」を要求してきたスーパーも注目、売上は6倍に。今ではこの「用途別パッケージ」も20種類以上といいます。 【“不揃いの卵”を“金の卵”に変えたもの】 もともと、大きさや殻の色などを基準にしてスーパーなどが要求する「品質」とは、“まっすぐなキュウリ”と同様、輸送のしやすさや見た目などの「売る側」の価値観にもとづいており、多くの場合、この価値観に消費者も左右されているのが現状でしょう。 ところが、あらためて“不揃いの卵”は本当にダメな卵か?卵本来の価値は、「売る側」ではなく「消費する側」が決めるべきではないか?という視点に立ったとき、目の前の“不揃いの卵”が価値ある“金の卵”に変わったのです。 【弱みを強みに変えていく過程は、会社を好きになっていく過程】 「会社は株主のもの」という価値観のもと、「赤字だから」と非正規雇用者を切り、正規雇用者には定期昇給もストップする一方で、「赤字でも」と株主には手厚く配当するという大企業のやり方は、かつて日本の企業や経済にはありませんでした。近年、欧米から輸入され、急速に普及された価値観です。しかしこれでは、ますます格差が拡大し、国民の購買力を奪って、不況を長引かせるばかりです。企業にとっても、従業員のモラールの低下は重大な損失です。 卵問屋の社長が最後にインタビューで答えていたのが印象的でした。「会社の弱みを強みに変えていく過程は、自分の会社を好きになっていく過程だった」。傾聴に値する言葉です。 |
|
| 「一将功成りて万骨枯る」のツケ(2009年4月) | |
|---|---|
| 先日開かれた主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議(G7)では、世界経済の見通しについて「本年内に回復を開始する」と、“明るい見通し”を示しました。 しかし、多くの機関や識者の間では、先行きの不透明感をぬぐい切れず、けして楽観できないとする見方が大勢です。 【とくに深刻な日本経済】 とくに日本については、他の先進諸国と比べても深刻です。22日に発表されたIMFの政界経済見通しによれば、世界経済全体の09年の成長率は、−1.3%、主要先進国では、米国が−2.8%、ユーロ圏−4.2%となっていますが、日本は−6.2%と断トツのマイナスを予測しています。また、政府・日銀も次々と景気見通しの下方修正を余儀なくされ、当初0%成長としていた09年度の日本のGDP見通しを−3.3%と大幅に下方修正しました。これは、15兆円を超える追加経済対策を行うことを前提とした数値で、いかに日本の景気悪化のスピードが深刻であるかを物語っています。 【内需底上げの課題を放置したツケが】 こうした日本の景気の落ち込みと回復見通しの深刻さは、国民消費や中小企業対策など内需底上げの課題を放置したまま、景気のけん引をもっぱら輸出型大企業の繁栄に任せて、「戦後最長」の景気拡大と喧伝してきたわが国のいびつな経済構造・経済政策に起因しています。まさに「一将功成りて万骨枯る」との戒めの故事そのままです。 【国民生活と中小企業のリアルな実態に目を向けて】 企業倒産は急増し、ついに3月の倒産件数は、6年ぶりに1500件を超えました。その多くが中小企業です。かろうじて倒産に至らない中小企業でも、多くが元請けからの“買いたたき”や一方的な単価切り下げ、回収条件の変更(悪化)などに苦しめられているところが少なくありません。 また、派遣切りや正規従業員のリストラで職を失う国民も数十万人に達しています。その結果、各自治体では生活保護世帯が急増し、そのための予算措置が間に合わない状況が続出しています。少子化が問題とされながら、一方で保育園に入れない待機児童が激増し、テレビの特集番組が組まれるなど大きな社会問題となっているのも同根です。 “時すでに遅し”の感もありますが、これ以上の被害拡大を防ぎ、ただちにこのいびつな構造にメスを入れることで、内需拡大に軸足を置いた健全な経済の立て直しを図ることこそ、経済政策の要諦です。 |
|
| 「内定取り消し」もう一つの要因(2009年6月) | |
|---|---|
| 【2000人を超える過去最悪の数字】 企業から採用内定を取り消された大学、短大、専門学校、高校の卒業生が2,083人に上っています(厚生労働省調)。山一證券が破綻した1998年の約2倍、過去最悪の状態です。しかも昨年10月以前の内定取り消しについては、この数字にも含まれておらず、最近では入社と同時に「自宅待機」を命じられる新入社員が増えているとも言われています。これらは、昨年秋以降の急激な景気の悪化が最大の要因であることは明らかですが、それだけではありません。企業の採用活動の時期が大きく変化していることも要因の一つです。 【入社1年以上前に「内定」決定の異常】 近年、新卒採用活動時期の早期化が進み、4年制大学の場合、3年生の秋から春に掛けてが中心となっています。この時期に、企業は学生向けの会社説明会を頻繁に開催します。さらに、体験型の企業研修ともいえるインターンシップなどを実施して多くの学生と接触、エントリーシートの提出や、筆記試験、面接試験と重ねていきます。こうして4年生になる前にかなりの内定者が生まれます。実際の入社はまだ1年以上先であり、まさに「青田買い」です。かつては就職協定があり、ある程度の歯止めがかかっていましたが、1997年の協定廃止以降は、じわじわと早期化が進み現在のように、大学3年時が採用活動の中心となりました。 ところが各企業は、1年以上先の経営予測を立てて新入社員を採用するため、入社時期の経営実態との誤差が大きくなった場合、必然的に今回のような「内定取り消し」の事態が生まれることになるわけです。 【社会的なルールと制度で是正を】 早期化する採用活動は、急激な景気の変動に対応できないことが分かっていても、個別企業から見たら、毎年スケジュール化し、他社との競争も激しいため、容易に変更することができません。「リクルート産業」が早期化に大きく関与していることも見逃せません。 また、採用活動は長期化する傾向にあり、学生が学校に行かず就職活動をすることも問題化しています。国立大学協会などは昨年、「学業に支障がある」として、経済団体に採用活動の適正化の申し入れをしましたが、日本経団連などでは「現状は好ましくない」としながら、個別企業の「自主性」任せです。 もともと経済的損得が行動規範の企業側にこの問題を解決する能力はありません。社会的なルールと制度をつくり、強制力をもって従わせなければ問題は解決しません。政治のイニシアティブが求められています。 |
|
| バックナンバー INDEXへ |