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成果主義はいま?〜「導入」も「見直し」も広がる(2005年6月)

【日経「賃金動向調査」】

 「日経2005年賃金動向調査」(4,203社対象)は、成果主義を導入する企業が広がる(86.7%)一方、内容の見直しも進んでいるとの結果を発表しました。
 制度の見直しで最も多いのが「プロセス評価の加味」。目標達成率で評価する目標管理制度が、低い目標しか掲げない社員の評価は高く、逆に意欲的な高い目標を持った社員は評価が低くなってしまうなどの問題点をもっていることから、こうした見直しが進んでいるようです。他の見直し項目で注目されるのは、企業理念に沿った行動や潜在能力など「成果以外の要素を加味」(アサヒビール、三菱電機)、職務と職責で賃金が決まる「役割給の導入」(キャノン)、「チームでの成果や貢献度の評価」(高島屋)などです。

【富士通の成果主義の見直し】

 一頃は“成果主義の先鞭”とまで言われた富士通は、内部告発本(「内側から見た富士通『成果主義』の崩壊」)がベストセラーになり、大きな注目を集めています。同社は、@「チームの成果評価とそれに社員がどう貢献したかを評価する」、A「目標の達成度ではなく、目標に向かう努力と実現した成果そのもので評価する」という方向で見直しをはかるといいます。
 少なからぬ会社が抱える悩みの一つに管理職の水準の低さがあります。経営者や上司からの指示を伝達する、いわゆる「メールサーバー」的能力しかない管理職が多いという悩みなどです。たしかにいまの管理職の大半は年功序列制度の下で管理職となりました。人事制度の運用で中心的役割を果たすのは管理職。成果主義が正しく運用されていくカギは、一般社員の評価を問う前に、まず「管理職自身の評価を厳しく問うこと」という城繁幸氏(告発本の著者)の指摘は的を射ているかもしれません。

【制度を活用する経営者の手腕】

 「成果主義一辺倒でもなく、かといって年功制度一辺倒でもない、わが社の実情に合った賃金・人事制度を作りたい」という依頼を受け、7ヶ月のプロジェクトチームでの議論を経てつくったある会社の新制度。社長自らが従業員50人全員と新制度に基づく面接を行う中で、「社内の雰囲気が変わってきた」とのこと。“制度だけで会社が変わるわけではない、問題はそれを活用できるかどうかだ”としみじみ思います。「この制度はいいですね」の一言に私たちの苦労も報われます。

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“クールビズ”の波紋(2005年7月)

 「クールビズ(COOL BIZ)」が話題です。環境省が名称を公募して始まった夏のノーネクタイ、ノー上着運動。大企業を中心に民間でも追随の動きが現れてきました。たしかに、日々の通勤電車でもネクタイをしていないサラリーマンが増えてきました。

【本当に省エネになるか】

 クールビズの最大の目的は「省エネ」。中央官庁の冷房温度を28度に設定することで、電力消費量を抑え、地球温暖化防止につなげる…というのが環境省の筋書きです。第一生命経済研究所の試算によると、室温を1度上げると二酸化炭素排出量は0.3%削減できるとのこと。電力10社で500億円の減収になる計算です。しかし電力10社の見通しは、エアコン等の普及が省エネ効果を上回り、今夏の最大電力は昨年比2%アップ。省エネ効果はどうやら「?」のようです。

【経済や文化への影響は…】

 経済や文化(ビジネス・スタイル)に与える影響はどうでしょう。

 一番ヒートアップしているのが衣料品業界。大手スーパー各社では、どこもシャツの売上が前年比30%増といいますから、その過熱ぶりは相当なもの。ただし、一方でネクタイ業界などではかなりの打撃のようです。

 また、注目はビジネス・スタイルへの影響。ネクタイは“ビジネスの象徴”“信頼の証”とされてきた不文律にクールビズは一石を投じることができるのでしょうか。

 「朝日」の世論調査では、67%がクールビズに好感(20、30代では75%)を持っている一方で、49%が「定着すると思わない」。

 ネクタイを締め背広を着込み、“ガンガン”に冷房が効いた部屋で、「寒い、寒い」と女性たちがひざ掛けやカーデガンを羽織る…、異国の人々から見ると理解に苦しむ日本の夏の光景に、はたして変化が生まれるのか。いよいよ夏本番、今後に注目です。

【マーケティング理論からみると…】

 それからもう一つ。マーケティング理論には、「初期少数採用者」から「前期多数採用者」へ波及するというロジャースの理論と、前者と後者の間には溝(キャズム)があり、連続的普及は簡単でないとするムーアの説がありますが、クールビズは、マーケティング理論をめぐっても、なかなか興味深い研究材料です。

 かくいう当事務所の男3人は、“推進派”です。

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第二、第三のアスベスト禍をもたらさないために(2005年8月)

【ヨーロッパより20年遅れたアスベスト対策】

 アスベストが主な原因とされるがんの一種、中皮種による死者は日本政府が統計をとり始めた1995年から2003年までの9年間で6千人を超え、今後40年間で中皮種による死者は10万人にのぼると予測されています。

 すでに1980年に世界保健機関(WHO)がアスベストを発がん性物質と断定し、ヨーロッパ各国は1983年から90年代はじめにかけて使用禁止にしました。日本でも80年代に小学校などでのアスベスト被害が社会問題化していたにもかかわらず、逆にバブル経済と建築ブームで石綿建材の輸入量が増え、結局原則使用禁止となったのは2004年10月でした。ヨーロッパから20年遅れ、被害を拡大した行政の責任は厳しく問われなければなりません。

【認定率5%という労災認定基準は正当か?】

 もう一つ、行政上の責任として労災認定の問題も問う必要があります。中皮種による死者6千人のうち、労災補償の認定は284人、わずか5%です。

 一般に、業務上の“負傷”と比べ、業務上の“疾病”について労災認定を受けるのは困難です。業務上の負傷の場合は、災害の発生の時間や場所を特定することが容易であるため、業務遂行中の事故であれば業務に起因した負傷であることが推定されます。これに対し疾病は、その多くが長期にわたる有害因子の曝露によって徐々に健康が害されて次第に病気になるという経過をたどります。中皮種は平均潜伏期間40年ですから、本人も原因がわからないままという場合が多く、しかも時効(2年ないし5年)の壁に阻まれてしまうのです。

【化学物質過敏症など新しい疾病への対応を】

 実は当事務所で扱った労災申請に化学物質過敏症の事例があります。昨年3月の被災時点では労働者も会社も何が起きたかわからず、6ヶ月後に労災申請したものの、医学的に疾病と認定されていないため長期間にわたる検討、交渉を要しました。通常は原因物質が特定されなければ労災認定されないケースでしたが、この7月、「複数の労働者に同一症状があらわれた」ことから原因物質が特定されないまま認定を得ました。いまでも被災労働者は、電車内での化粧の匂いや建設現場のシンナーの匂いなどあらゆる化学物質に反応し、就労不能の状態です。

 化学物質や金属類のうち毒性がはっきりしているのは2割程度で、残りはリスクを抱えながら使われているといいます。労災行政も含め行政の作為、不作為責任は問われ続けます。第二、第三のアスベスト禍はもはや許されないのです。

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忍び寄る「静かな石油危機」(2005年9月)

 原油価格の高騰が止まりません。8月末に一時1バレル70ドルを突破、今年1月から約6割もの上昇で、歴史的な高値を更新し続けています。

【出始めた経済・生活への影響】

 原油高は、日本経済にも国民生活にもその影響は深刻です。ガソリンが1g130円を超えたのをはじめ、航空運賃の値上げ、5o短くなった竹輪…、食品や農水産物を含むほとんど全産業で価格引き上げが始まっています。また一方で、店舗過剰・低価格競争が常態化しているクリーニング業界のように、原油高を価格に転嫁できず、深刻な経営危機に陥っている業界も少なくありません。

【グローバリゼーションが生み出した危機】

 過去の“石油危機”は、中東地域での戦争等が引き金となりましたが、今回の原油高騰は、背景にかなり大きな違いがあります。たしかに投機資金の市場かく乱や米南部を直撃したハリケーンの影響もありますが、もっと根本的な問題が潜んでいます。
 第一に、世界的な石油需要が大きく伸びていること。その主な要因が、世界の原油の4分の1を消費する米経済が好調を維持していることと、中国やインドなど新興経済国の石油消費の増加です。とくに、グローバリゼーションの進行でいまや“世界の工場”の観がある中国では、過去10年で石油消費量が倍以上に増加し、ついに日本を抜いて世界第2の石油消費国となっています。世界のコールセンターが集中するインドでもこの10年で約8割増です。グローバリゼーションの進行が、これらの国々における石油の国内消費を増大させ、さらに、世界的規模での物流の展開が、石油需要に拍車をかけているのです。
 第二に、産油国側にかつてのような供給余力が乏しくなっていること。世界の原油生産は、数年で頭打ちとなり、減産に転じるという「ピークオイル」説が、話題になっています。

【「静かな石油危機」にどう対応するか】

 石油をめぐる需要と供給のバランスが大きく崩れ始めているのです。エネルギーをはじめ、石油に依存する経済や人間生活のあり方を見直し、石油の需要を抑制する努力を世界的規模で真剣に行なう以外に根本的な解決の道はありません。
 暖房用燃料としてこれから冬に向けていっそう需要が高まるもとで、“80ドル突破”の見方も出されています。原油価格が10ドル上昇すると、日本のGDP(国内総生産)は0.4%程度低下するとされています。“踊り場を脱した”といわれる日本経済は、「静かな石油危機」ともいわれているこの原油高騰をどのように乗り越えていくのか、根本的な問いを投げかけられています。

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マクドナルドの誤算(2005年10月)

 日本マクドナルドは、2005年12月期連結業績の当期利益の予想を35億4,900万円から5,000万円に下方修正しました。原因は2つです。

【低価格戦略の失敗】

 1つは、来客数は伸びたものの、客単価の低下が続き、売上高を当初予想より30億近く下方修正せざるを得なくなったためです。

 マクドナルドは、デフレ経済のもと、低価格戦略による市場シェアの拡大を目指してきました。顧客1人の「質」よりも顧客の「量」を優先した結果、客層も大きく変わり、来店客のかなりの部分を中高生が占め、日本のハンバーガー文化の草分け的存在として親しんできた従来のマック愛好者は離れてしまったのです。

 企業のブランドイメージも大きく変わりました。長年築かれてきた“ハンバーガーといえばマック”というイメージは崩れ、いまやマックといえば100円チーズバーガー(ちょっと前は60円バーガー)に代表される“安物バーガー屋”との感もあります。雪印や三菱自動車の例を引くまでもなく、顧客のロイヤルティ(企業や製品に対する忠誠心)を失うことは企業にとって致命傷です。

 低価格戦略の打ち切りを発表し、「I’m lovin’ it」をスローガンにブランド価値を見直す戦略へシフトしたようですが、行方が注目されます。

【未払い賃金22億円の特別損失】

 もう1つの原因は、2年間の未払い賃金(のべ10万人分、22億円)を支払うことになったことです。アルバイト従業員の賃金や社員の超過勤務手当を30分単位で丸めて計算していたことがわかり、労働基準監督署から是正指導をうけたのです。この8月以降は1分単位で算定することに(労働時間の計算方法については、今号ニュースの3面「Q&A」を参照ください)。

 この残業代支払いをめぐって、追い討ちをかけたのがある直営店の店長。「店長が残業代支払いの対象となっていないのはおかしい。店長には出退勤やアルバイト人事についての自由裁量はなく、管理監督者ではない」と主張し、提訴したのです。

 「ファーストフード界の雄」といわれる日本マクドナルド。雄は雄らしく、横綱相撲を取ってもらいたいものです。

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風雲急、政府系金融機関の統廃合問題(2005年11月)

 政府系金融機関の統廃合への動きが急です。
 竹中平蔵総務大臣・郵政民営化担当大臣(前経済財政政策担当大臣)をはじめとする関係閣僚からは、“融資量圧縮・半減”などの発言が繰り返され、11月中に政府・与党案が策定される予定です。

【“融資量圧縮・半減”は中小企業の死活問題】

 そもそも政府系金融機関(とくに中小企業金融=中小企業金融公庫、国民生活金融公庫、商工組合中央金庫)は、資金の乏しい中小企業にとって、重要な資金供給先としての機能を担ってきました。とくにバブル後、民間金融機関に蔓延したいわゆる“貸し渋り・貸しはがし”の際には、これら政府系金融が果たした役割は、まさに中小企業の命綱といっても過言ではありませんでした。
 日銀の「金融経済統計月報」等でも、上記3公庫が占める中小企業向け貸付残高は約11%(中小公庫7.6兆円、国民公庫10兆円、商工中金9.6兆円)であり、中小企業向け金融の重要な一翼を担っています。
 “融資量圧縮・半減”されたなら、その圧縮分は民間金融機関が最近急速に普及を進めている、金利10%前後のビジネス・ローンなどの市場となりかねません。中小企業は、従来の4〜5倍の金利負担を強いられるか、その負担ができなければ経営の継続そのものを断念するか、二者択一が迫られることになります。

【法律との矛盾をどうする】

 1999年に大幅改定された中小企業基本法は、中小企業を「新たな産業を創出し、就業の機会を増大させ、市場における競争を促進し、地域における経済の活性化を促進する等我が国経済の活力の維持及び強化に果たすべき重要な使命を有する」(第3条)と位置づけました。そして、そのための金融政策として、「中小企業に対する資金の供給の円滑化を図るため、政府関係金融機関の機能の強化、信用補完事業の充実」(第23条)を謳ったのです。
 今日の政府系金融機関の縮小・統廃合の動きは、政府自身が自ら定めた理念や規定とも大きく矛盾するのではないでしょうか。
 中小企業向け金融をめぐっては、すでに信用保証制度の縮小(部分補償)も具体化され、導入が狙われています。景気を下支えするのが、国民の消費と中小企業のはず。「景気回復を実感しない」という人がなお多い所以です。

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悪魔に魂を売った男たち(2005年12月)

 「もしかしたら」の心配が、数日後には「ついに」、そして「やっぱり」。当事務所のすぐ目の前のビジネスホテル=京王プレッソインが営業停止になりました。
 社会を欺く事件が後を立ちません。今度は耐震強度偽装事件。一級建築士が、震度5程度の地震で崩壊しかねないとわかっていながら、偽りの構造計算書を作成し、それに民間の検査機関が“メクラ判”を押していた…。呆れる限りです。

【競争至上主義、利益第一主義の果てに】

 国会質疑やマスコミ調査等によって、だんだん“ぐるみ”の構造が明らかになってきました。コンサルタント会社、建設会社、設計事務所、検査機関などが結託して耐震強度の偽装が行なわれていたとの疑惑です。
 彼らを悪の道に突き動かしたものは何か。興味深いのは、「競争社会だから」という一級建築士のインタビューへの回答。その後、国会質疑でも同様の発言が検査機関の代表などからも繰り返されました。「他社より安く」「他社より早く」「他社より甘く」…、安全や安心の思想はどこにもありません。競争至上主義、利益第一主義の行き着いた果ては、人命軽視のマンション・ホテル建設でした。
 同時に、地方自治体等「官」が行なった検査でも、構造計算書のウソを見落としてきたずさんさが次々と露呈し、「官」の事なかれ主義・機能不全もあらためて明らかになりました。

【欠落する「公」の価値観】

 今回の事件は、「官」の官僚主義を「民」の市場原理で是正するという、流行の「官から民へ」の路線の偽りと同時に、その逆ももちろん真ではないこと、つまり「公」の価値が欠落しているもとでは同じ結果となることを証明したのです。「官」か「民」かの単純な価値観から脱却して、社会全体に「公」の価値を根付かせるための議論と努力が必要です。
 また、市場原理を大前提とする「民」ができる事業、「民」に任せつつも厳しい「公」のチェックが必要な事業、絶対に「民」に任せてはいけない事業、これらを峻別すべきことも教訓です。

 先日、建設業者の集まりに招かれたとき、やはり話題の中心は偽装問題。ある社長さんが「われわれにとって設計図は憲法なんだ。良い悪い抜きに、そのとおり仕事をしなくちゃいけないんだ。それなのにその憲法がでたらめだったなんて…」と絶句しました。
 社会を欺いた者が支払う代償は、それで得た「報酬」よりもはるかに大きく、会社の存立すら許さないほど深刻です。規模の大小を問わず、経営者の教訓にしなければなりません。

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