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行政書士・赤川理惠の徒然日誌(2006年分)

(第10回) 自立した老後と家族のあり方〜成年後見制度とは〜  (06年1月第33号)

【息子たちと同居したいのだが…】

 Oさんのかかえている問題は、長崎県で一人暮らしをする母親の生活です。昨年末に体調をくずして入院。幸い大事に至らず2日ほどで退院しましたが、年々体力は衰え、一人暮らしの淋しさを訴えることもしばしばでした。母親は病院の勧めもあって、介護サービス付きの高齢者用賃貸住宅への入居を決めました。いずれはケアハウス(有料老人ホーム)にと考えていたので、本人自らの選択にホッとしていたOさんでしたが、同県に住む弟がいざ引越しの作業を手伝い始めると、「行きたくない。息子(Oさんの弟)一家のそばに一戸建てを買って住みたい」と言い始め、高齢者用賃貸住宅の契約を解消し、建売住宅の売買契約を結びそうになったのです。もともと息子たちと同居したいという気持ちがあったのでしょう。

【冷静な判断力を失い…】

 Oさんの母親は預貯金や遺族年金で経済的には充分な生活ができるのですが、以前に脳梗塞を患ったこともあり、他人と継続的にうまくつきあうことができません。時には物やお金を自分がしまったことも忘れて、「泥棒が入った」と近所中で大騒ぎになったことも。思い込んだら冷静な判断力を失ってしまいますから、いま問題になっている悪徳商法等で財産を失うことにもなりかねません。

 今回は、「お母さんの行動に頭ごなしに反対するのでなく、よくお母さんの気持ちを理解し、そのうえで息子さんの考えをお母さんが納得できるように誠実に話し合われることが大切ですよ」とアドバイスしました。そして、急遽Oさん自身が帰省し、母親と話合い、当初予定通りに高齢者用住宅に移ることができました。

【成年後見制度の活用を】

 地方でも都会でも、高齢者の不安や高齢者をかかえる家族の悩みは増えています。H12年4月に「成年後見制度」がスタート。判断能力の不十分な高齢者や知的障害者・精神障害者などの生命や財産等を守るための制度で、「法定後見」と「任意後見」があります。

 「法定後見」は、医師の診断書を添えて家庭裁判所に申立ます。判断能力の程度により「後見」「保佐」「補助」の3段階で同意権・代理権などがそれぞれ後見人・保佐人・補助人に与えられます。

 「任意後見」は、本人が元気で判断能力も十分なうちに、将来の後見人を決め、委任事項を公正証書として作成し、判断能力を喪失もしくは不十分になった時に家庭裁判所に「任意後見監督人」選任の申立をし、選任された時から任意後見契約がスタートします。

 新聞などでも少しずつ話題にはなってきているものの、制度の活用はまだ不十分で、行政書士会としても今年の課題にしています。高齢者の生活を支える仕事は、私が行政書士を志す原点のひとつであり、今後の仕事の中心にしていきたいと考えています。

(第11回) 遺産分割協議のやりなおし  (06年2月第34号)

【「相続登記を変更したい」】

 Zさんの父親は昨年8月に他界されました。父母が住んでいた父母名義の都内の土地建物は、母親とZさんを含む3人の子どもたちで遺産分割協議を行い、弟さんの単独名義にしました。ところが事情が変わったので、土地建物の相続登記を長女であるZさんに変えたいということで相談に見えました。

 当初、90歳を超える母親の面倒は、埼玉の妹さん夫婦が自宅に引き取ることになっていました。しかし母親は、妹さん夫婦との暮らしに馴染めず、「もとの生活がしたい、どうしてももとの家に戻りたい」と言い始めたのです。また体調も、予想していた以上に元気になってきました。それならば都内で一番近くに住んでいて、いろいろな条件から、長女であるZさんが通いながら、母親の面倒をみてあげたほうがよいだろうということになったのです。名義を得ていた弟さんも異論はなく、冒頭のご相談となったのです。

【気を付けたい贈与税のリスク】

 さて、一度遺産分割協議の上でした相続登記を他の相続人の名義に変えるとなると、税務上贈与とみなされ、多額の贈与税を支払わなければならない可能性が高いのです。そのリスクを避けるためには、弟さんから直接Zさんへ名義を変えるのではなく、母親の名義にした方がいいのです。というのは、母親はもともとその土地建物の所有者の一人としてそこに住んでおり、今後も住み続けることになりますから、不動産所有過程の実態にも沿うことになり、税務上贈与ともみなされにくくなるからです。そして母親が万が一の時に備えて、母親からZさんに相続されるように公正証書遺言を作成しておいてもらえば、母親の介護費用やZさんの労も報われ、後の手続もスムーズにおこなうことができます。

 Zさんをはじめみなさんが納得し、あらためて遺産分割のやりなおしと遺言書作成の手続を終えました。

(第12回) 個人事業から株式会社設立へ  (06年3月第35号)

 確定申告も終え、個人事業主の方は一息ついておられるかと思います。

 私も何人か個人事業主さんの確定申告の相談にのりました。消費税免税点が売上高1000万円までに下がり、損益は赤字でも商売を続けるためには借りてでも支払わざるを得ない実態があります。また年金生活の方が、老年者控除の廃止で税負担の増加に「でるのはため息ばかりね」とつぶやかれ、私自身も今の社会のあり方に疑問と憤りを感じたりもしました。

【起業後3年間で赤字から大幅黒字へ】

 さて、一方で脱サラ後、友人とお互いの能力を生かし、3人でハウスクリーニングの個人事業をはじめ3年間で売上を順調に伸ばしたAさんもいます。Aさんは、「お客様へのサービスとは何か」「事業主としてまず経営を安定させるためにはどうしたらよいか」をいつも考えながら仕事をしてきたこと、計画と実行と話合いを重視して、自分たちの技術の向上や到達点や認識を一致させていく中で、3人がより信頼を深め、営業に自信がついてきたことが売上増に大きな効果があったと言います。今年の申告では過去2年の赤字を返上し、大幅黒字で税金を払えるようになった事業の成長を喜んでいます。税務申告を終えて、さらに売上増をめざし、現在は5月に施行予定の会社法を使って、一番乗りで株式会社設立の準備を進めています。最低資本金の規制がなくなり、設立しやすくなったため、個人事業者は会社として組織整備をはからなければ取引に影響が出てくる可能性が高まると思われます。

【法人化のメリット・デメリット】

 メリットとして、@節税効果、A社会的信用のアップ、B融資、助成金などが受けやすい、C社会保険に加入できる、D赤字を7年間繰り越せることなどがあり、一方デメリットは、@赤字でも法人住民税の最低額の負担がある、A経理、決算の事務負担と費用がかかることなどがあげられます。個人の所得で400万円程度を目安に法人化の検討をおすすめします。利用しやすくなった制度を最大限に生かして、経営の発展のためにお役に立てればと思っています。

(第13回) 離婚は成立したものの…その後の手続きあれこれ  (06年4月第36号)

【世帯分離の届出】

 以前離婚のことで相談にこられたIさんが久しぶりに事務所にみえました。家庭を顧みないで、金銭を持ち出すばかりの元夫と協議離婚が成立し、ほっとしていたのです。ところが戸籍の上では離婚できたものの、現在の居所がわからない元夫の住民票がIさんの住所に残されたままでした。戸籍の手続きと住民基本台帳の手続きは連動しておらず、元夫は依然としてIさんとの住民票上の世帯主のままだったのです。そのためTさんに支払義務はありませんが、元夫の国民健康保険料の請求がIさん宅に届きます。区役所へ「世帯分離の届出」手続きをとるようにすすめました。世帯分離の手続きの際に元夫の現状を報告しておきますと、職員が調査の上請求を止めることが可能なのです。

【氏の変更】

 次に、Iさんと一緒に暮らしている次男が元夫の戸籍上に残されたままだったことです。既に成人されておりましたので、離婚に際して親権者を決める必要がなく、そのままにされていたのです。しかし、幼少時にかかった脳の病気の後遺症で軽い障害を持っていたので、今後も面倒をみていくIさんと同じ戸籍に入れるためにはどうすればよいかということです。Iさんは「離婚の際に称していた氏を称する届出」を出しており次男と見かけ上の氏は変わりません。しかし次男がIさんの戸籍に移るためには、父の氏から母の氏へと「氏変更の許可の家事審判」の申し立てをしなければなりません。父母それぞれの離婚後の戸籍謄本を添えて家庭裁判所に申し立てると、事情を聞いた上で、ほぼその日のうちに迅速に処理されます。

【離婚時の年金分割】

 ところで、近時熟年離婚が増加しています。従来離婚時の財産分割の対象に年金は含まれていませんでした。そのため、離婚後の女性の年金額が低額になってしまう場合が多かったのです。そこで、国は離婚による厚生年金の分割ができるように改定しました。

 2段階の改定です。平成19年4月以降に離婚した場合、合意または裁判所の決定により、妻は夫婦であった期間に対応する夫の厚生年金の2分の1を上限に、自分名義の年金として受け取れるようになります。平成20年4月以降は、離婚の有無にかかわらず、妻が専業主婦(第3号被保険者期間)となる期間は、請求すれば夫の厚生年金の2分の1を自動的に受け取れるというものです。基礎年金は分割されませんので、ご注意ください。

 離婚をお勧めしているわけではありませんが、男女それぞれの生き方を尊重しようという時代の流れの中で、選択の幅が広がっています。

(第14回) お墓の承継をめぐる問題  (06年5月第37号)

 人によりさまざまな事情がある相続の話。Nさんの相談はお墓の承継という問題でした。

 民法897条には「系譜、祭具及び墳墓の所有権は、慣習に従って祖先の祭祀を主宰する者がこれを承継する。但し、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者がこれを承継する」と規定されています。大方の場合、喪主を務めた配偶者か子どもが承継することになりますが、墓の名義人が亡くなられたときには、速やかに承継手続きをしておかないと後で大変面倒になります。

【父親の墓に入れない?】

 Nさんの場合は、先日亡くなられたご主人が東京都の霊園使用許可証を持っていたものの、霊園使用者の名義はご主人ではなく、ご主人より前に亡くなられたご主人の父親名義のままだったのです。東京都の霊園管理課に問い合わせたところ、まず、この霊園使用者の名義をNさんに変えなければ、ご主人の納骨もできないということでした。Nさんと義父とでは血縁関係がありません。そのため義父の第1順位の相続人(ご主人の兄弟姉妹)の了承を得る必要があるとのことでした。Nさんとしては、了承が得られるものであればこの墓を承継し、異議を唱える方がおられればあえて争わず、墓の承継は相続人に譲って、ご主人のために新たな墓を建てるつもりでした。

 複雑な相続関係でしたが、戸籍をたどって相続人を確定し、ご意向を私の方から伺ってみました。義父が亡くなられてすでに18年も経過しており、この墓の承継問題のほか争いになるような相続財産など何もなかったこと、Nさんご夫婦が義父母の生前の面倒をみてこられ、死後の供養もされてきたことが報われて、異議もなく無事霊園使用者をNさんにすることができ、ご主人も両親と同じお墓に入ることとなりました。

【相続人がいない場合、お墓はどうなる?】

 相続人以外の方でも親しい友人や縁者を墓の承継者として指定することができます。その場合は生前に遺言で指定し、墓を管理する寺院や公共の管理者に事前に了承を得ておくと安心です。指定者もいない時は永代供養(管理、供養は寺院や管理者によって行うもの)の手続きをとるとよいでしょう。また、市町村などで管理している合同墓に入る方法もあります。

(第15回) 著作権の豆知識  (06年6月第38号)

 ホームページ制作を業とする会社から、請負契約書に著作権の譲渡について記載する場合どのようなことに注意したらよいかという質問を受けました。

 確かに他人の著作物を無許可でサイトにアップしてインターネットなどで送信すると著作権の侵害にあたります。ホームページのデザインなどは、発注者側と制作した側のどちらに著作権があるのか?その著作権を譲渡した場合はどうなるのでしょうか。

【著作権とは】

 著作権法の第2条にいう著作物とは、「思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」としており、実際に言葉、文字、色彩、音などによって表現されたものをいい、アイデアや着想自体は著作権の保護対象とはなりません。著作権の主な内容は、@複製権、A公衆送信権、B翻訳及び翻案権(脚色、加工する権利)、C頒布権、D上演、演奏、展示などの権利、E譲渡権、F貸与権などがあります。著作権の保護期間は法により、公表された著作物に限り著作者の死後50年、映画の著作物は公表後70年と定められています。

 最近、映画「ローマの休日」(1953年公開)の著作権をめぐり、著作権者がDVDの販売差し止めを求める仮処分申請したことが報道されていますが、これも映画の著作権の保護期間が50年から70年に延長された(2004年改正)ことに伴うトラブルです。

【著作権の譲渡と著作者人格権】

 イラストや写真、文書などの著作物の著作権が、譲渡契約により制作者から発注した会社に譲渡された場合、著作権者は発注した会社となり、譲渡以降の複製、公衆送信、頒布、第三者への使用許諾などは譲渡を受けた会社の方で自由にできることになります。
 ただし、著作権の一部を構成する著作者人格権は、真の作者を守るための権利として、他人に譲渡することはもとより、永久に消滅することも、放棄することもできません。著作者人格権の内容は、@公表権(どのような方法で公表するか選択できる権利)、A氏名表示権(名前を出すか出さないかを決める権利)、B同一性保持権(トリミング、圧縮、保存形式の変更は侵害にはならないが、それ以外の加工は侵害にあたる)C名誉・声望保持権(創作意図を損なわれない権利)などです。

 以上簡略ですが、他人の著作物を利用することを目的に、著作権譲渡契約を結ぶ場合にご注意ください。

(第16回) 韓国から帰化された方の相続  (06年7月第39号)

 昨年の12月、Tさんから奥さん(故人)の相続について依頼をお受けしました。亡くなられた奥さんは、今から約50年前に韓国から日本に帰化された方でした。日本国内の相続手続でも、戸籍を遡って相続人を確定する作業は戸籍法の改正や転籍、古くは家督相続等もあり、時間がかかるケースが多々あります。まして、Tさんの奥さんの場合は帰化当時の年齢が28歳でした(つまり、子を産むことが可能な年齢に達していた)ので、韓国の戸籍までたどらなければなりませんでした。ご主人も奥さんの韓国の本籍地まではわかりません。韓国領事館に出向いても「(自分で)本籍地を調べてください」の一点張り。区役所から法務省をまわり、弁護士会の照会手続でようやく当時の「帰化申請書」に記載されている本籍地がわかりました。そして再度韓国領事館で取寄せ方と韓国の役所の住所を調べ、知人に訳文を頼んで韓国での戸籍を取寄せることができ、相続の手続を終えました。私にとってもはじめての国境を越えた相続事件の経験で、大変勉強になりました。

 それにしても12月に照会請求を申請し、その後何度も催促してようやく4月に回答がきたのです。何故こんなに時間がかかるのか、一個人の私的な案件など後回しにされてしまうのでしょうか。また、弁護士に頼むか情報公開請求でなければ、たとえ相続人の請求であっても教えられないという行政の機械的対応のあまりのひどさに憤りを感じました。国際化社会の流れの一方で、この国の行政姿勢がもう少しなんとかならないものだろうかと考えました。

(第17回) インターネットでの個人情報の公開や中傷にどう対応する?
〜プロバイダ責任制限法〜
  (06年10月第42号)

 IT関連の会社の方から、制作したホームページの掲示板に他人を傷つけるような書き込みがされたり、故意に営業を妨害するようなデマを流されたとき、どのように対応したらよいのかという相談がありました。確かにインターネットは様々な情報が簡単に入手できるという便利さの反面、個人情報流出やプライバシーの侵害、著作権を侵害する違法コピーに利用されたり、未成年者の売買春などの犯罪行為に利用されたりする危険もあります。こうした問題に対応するために2005年5月にプロバイダ責任制限法が施行されました。

【損害賠償責任の範囲】

 インターネット上で個人情報を公開された被害者から書き込みを削除するよう求められた場合に、プロバイダが情報の削除を行ったときは、損害賠償責任を免れるというものです。

 ただし、プロバイダが権利侵害の事実を知りながら流していた場合は別です。判例は次のようになっています。

 「ペット大好き掲示板」で、ある動物病院を名指しで「詐欺、ヤブ医者」などと書き込まれ、動物病院側が削除を求めたのに対し、プロバイダはわずかな削除を行ったのみで大半の情報はそのまま残した。動物病院側がプロバイダに対し500万円の損害賠償を求め訴えを起こしました。プロバイダ側は情報の公共性、真実性が不明な段階では、他人の権利を侵害する違法情報かどうかわからないので、削除義務はないとの反論を行った。第1審判決は、動物病院側の主張を認め、プロバイダに対し400万円の支払いと発言の削除を命じました(第2審は控訴棄却となった)。

 では、発信者側は送信を防止されたことを理由に損害賠償請求ができるでしょうか。法律は、プロバイダ側に @他人の権利が不当に侵害されていると信じるに足りる相当の理由があったとき A発信者に対し侵害情報を示して送信防止の同意照会をし、7日を経過しても同意しない旨の申し出がなかったときは、賠償の責めを免れるとなっています。

【発信者情報の開示請求】

 被害者はプロバイダに対し、誹謗中傷の発信者に関する情報(氏名、住所、メールアドレス、送信された年月日、時刻等)の開示を請求することができます。

 開示請求を受けた場合、プロバイダは発信者の意見を聞かなければなりません。プロバイダが情報開示請求に応じなかったことにより、被害者に生じた損害については、プロバイダに故意または重大な過失がある場合でなければ、賠償責任を負いま
せん。また、発信者情報の開示を受けられたとしても、被害者はそれを利用して発信者の名誉または生活の平穏を害する行為をしてはなりません。


(第18回) 入国警備官の立ち入り調査に応じる義務はあるのか
  (07年3月第47号)

 Pさんは新宿で奥さんと2人、韓国料理店を経営してもうすぐ10年になります。Pさんと奥さんはともに韓国籍で大久保のアパートに住んでいます。Pさんの話では、「朝突然警察の人が来て、『住まいの中に入り調査をしたい』と言われた。断っても、『とにかく中に入らせてくれ』としつこかった」とのこと。その日は帰っていきましたが、「何もやましいことなどないのに、いきなり来て住まいに入れろというのはないんじゃないか?」と相手の強硬な態度に憤慨します。

【警察と紛らわしい入国警備官】

 「警察の人が来た」とPさんは言いましたが、よく話を聞いてみると、どうも入国警備官による違反調査のようです。入国警備官の違反調査とは、「外国人の入国、上陸又は在留に関する違反事件の調査」で、退去強制事由に該当する疑いのある容疑者本人に対する直接的な取調べ、証人や関係者に対する取調べのほか捜索や押収も行います。また、容疑者が退去強制事由のいずれかに該当すると疑うに足りる相当な理由があると判断されると、主任審査官の発付する収容令書により容疑者の身柄が収容され、逃亡のおそれがある場合は収容令書を待たずに収容される場合もあります。

【強制捜査か、任意捜査か】

 この違反調査に伴う処分はいずれも「行政処分」として行われ、税務署が行う税務調査、公正取引法の違反調査、税関調査などと同様、刑法上の捜査とは違います。
 そもそも刑事手続においてさえ、強制捜査と任意捜査の2つがあります。強制捜査とは、逮捕・勾留、物証確保のための捜索・差押・検証などで、基本的には裁判所の令状が必要です。これに対して任意捜査は、任意処分による捜査を言い、強制捜査以外のものをさします。捜査は任意捜査を原則とし、捜査機関は被疑者その他の関係人の名誉を害しないように注意すべきであり、その程度および方法について「必要な」限度を超えてはならないこと(刑事訴訟法196条、197条)となっています。
 ですから、Pさんが受けた違反調査は、本人の任意の承諾を得て行われるべきものであり、当然Pさんには断る権利もあります。また高圧的に脅しをかけるような警備官には抗議をし、何の目的で訪問し、調査する必要があるのかしっかり聞いたうえで、調査に応じるか否かの判断をするとよいでしょう。判断がつかないときは弁護士や行政書士に相談してください。

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